第109回薬剤師国家試験

◆ 問341

 38歳男性。体重80kg。数年前より動悸及び息切れを自覚し、最近では歯茎からの出血や不意の鼻血などで不安になったため近医を受診した。引き続き近医より紹介された大学病院にて骨髄穿刺を受けた。病理検査の結果、骨髄異形成症候群と診断され、全身放射線照射に引き続き無菌病室で骨髄幹細胞移植治療を受けた。移植後の移植片対宿主病及び真菌感染症の予防目的で以下の薬物が投与開始された。なお、タクロリムスの血中濃度は15ng/mLを目標とされた。
109回問341画像1
投与開始後2週間目にタクロリムス、ボリコナゾールは経口投与に変更となった。

 骨髄幹細胞移植を実施した後の病棟担当薬剤師によるアセスメントとして適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 投与開始直後の発熱に備えて頓用のイブプロフェンを準備する。
  • タクロリムス水和物注射液は1mL/hの速度で投与する。
  • ボリコナゾールは血中濃度を参考に用量を調節する。
  • 移植片対宿主病を疑う所見が現れた場合はシクロスポリン注射液の追加を考慮する。
  • 移植片対宿主病の発症を認めなくてもタクロリムスの投与は生涯必要である。

◆ 問341

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、3


選択肢2と3が正解である理由は以下の通りです。
[タクロリムス水和物注射液は1mL/hの速度で投与する。]
正解です。タクロリムスは免疫抑制薬で、移植片対宿主病(GVHD)の予防に使用されます。この薬物はシリンジポンプを用いて24時間持続的に投与され、その速度は1mL/hとなります。

[ボリコナゾールは血中濃度を参考に用量を調節する。
]
正解です。ボリコナゾールは真菌感染症の予防に使用されます。この薬物の投与量は、患者の血中濃度を参考に調節されます。


一方、選択肢1、4、5が誤りである理由は以下の通りです。
[投与開始直後の発熱に備えて頓用のイブプロフェンを準備する。
]
誤りです。発熱は移植後の合併症や感染症の可能性を示す重要なサインであり、その原因を特定し適切な治療を行うことが必要です。そのため、発熱を単に抑えるためのイブプロフェンの準備は適切ではありません。

[移植片対宿主病を疑う所見が現れた場合はシクロスポリン注射液の追加を考慮する。
]
誤りです。既にタクロリムスが投与されている場合、シクロスポリンの追加は一般的には行われません。これらの薬物は同じ免疫抑制作用を持つため、併用は副作用のリスクを増加させる可能性があります。

[移植片対宿主病の発症を認めなくてもタクロリムスの投与は生涯必要である。]
誤りです。タクロリムスの投与は、GVHDの予防や治療が必要な期間に限定されます。GVHDのリスクが低下した場合、タクロリムスの投与は徐々に減量され、最終的には中止されることが一般的です。