第111回薬剤師国家試験

◆ 問151

下のグラフは、摘出回腸平滑筋を用いた受容体刺激薬Aによる収縮反応の濃度-反応曲線と、それに対する薬物X(10-7 mol/L)あるいは薬物Y(10-7 mol/L)の併用が及ぼす影響を示したものである。刺激薬Aは、一種類の受容体のみを刺激し、薬物Xと薬物Yに収縮作用はない。この結果に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
111回問151画像1
  • 刺激薬Aの pD2 値は、約7 である。
  • 薬物Xの pA2 値は、7 より小さいと推定できる。
  • 10 -5 mol/L の刺激薬Aによる収縮反応は、薬物X(10 -7 mol/L)の併用により 約 50%抑制される。
  • 薬物Yは、刺激薬Aに対する非競合的拮抗薬である。
  • 薬物Yの内活性は、0.5 である。

◆ 問151

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題の核心は、濃度-反応曲線の読み方にあります。「右方移動のみか」あるいは「Emax(最大反応)も下がっているか」という2点を確認することで、競合的拮抗薬と非競合的拮抗薬を区別することができます。

「刺激薬AのpD2値は約7」は、正しい記述です。
グラフから、刺激薬A単独でのEC50(50%の効果を示す濃度)は 10-7 mol/Lであることが読み取れます [1]。定義式に基づき算出すると以下のようになります。
pD2 = -log(EC50) = -log(10-7) = 7
(pD2は薬物の効力を数値化した指標であり、この値が大きいほど、より低い濃度で効果を発揮できる、つまり効力が強いことを意味します) 。

「薬物XのpA2値は7より小さい」は、誤りです。
薬物X(10-7 mol/L)を併用した際に濃度-反応曲線が大きく右方に移動しており、用量比(dose ratio, DR)が大きくなっていることがわかります。Schild(シルト)の式を用いると以下の通りです。
pA2 = -log[B] + log(DR - 1)
([B]は拮抗薬の濃度)
DRが2のときに pA2 = -log[B] となるため、DRがそれより大きい今回のケースでは、pA2 > 7 となります。

「10-5 mol/LのAによる収縮は薬物X併用で約50%抑制される」は、誤りです。
薬物Xは最大反応(Emax)を変化させていないため、競合的拮抗薬であると判断できます [2]。競合的拮抗の本質は「刺激薬が十分に高い濃度であれば、拮抗薬に競り勝ってほぼ100%の反応が得られる」という点にあります [2]。10-5 mol/Lは十分に高い濃度帯であるため、50%もの抑制を受けることはありません。

「薬物Yは非競合的拮抗薬」は、正しい記述です。
薬物Yを加えた際、曲線が右方に移動(EC50が増加)しているだけでなく、Emaxが50%に低下していることが決定打となります。
競合的拮抗薬を「椅子取りゲーム(最終的には全ての椅子が埋まる)」に例えるなら、非競合的拮抗薬は「椅子そのものを壊す」ようなものです [2]。どれだけ刺激薬を増やしても、反応できる椅子(受容体)が減っているため、最大反応は低下してしまいます。

「薬物Yの内活性は0.5」は、誤りです。
内活性(intrinsic activity, α)は、刺激薬の特性を示す指標(0〜1)です [3]。薬物Yはそれ自体で収縮作用を持たない「拮抗薬」であるため、内活性は0です。
Emaxが50%に低下しているのは、受容体の実効数が減少した結果であって、薬物Yが0.5の内活性を持っているわけではありません(内活性が0より大きく1より小さいのは、部分作動薬の特徴です)。

【試験対策のポイント】
濃度-反応曲線の問題では、まずEmaxを確認してください。「Emaxが変化していれば非競合的」、「Emaxが変化せず右方移動のみであれば競合的」、「そもそも単独での最大反応が低い場合は部分作動薬」という3パターンを意識することが重要です。