第111回薬剤師国家試験

◆ 問152

副交感神経系に作用する薬物の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • ピロカルピンは、アセチルコリン M3 受容体を刺激して、毛様体筋を収縮させ る。
  • アトロピンは、アセチルコリン M2 受容体を遮断して、洞房結節の活動電位の 発生頻度を増加させる。
  • ジスチグミンは、コリンエステラーゼを非可逆的に阻害して、膀胱排尿筋の収 縮を増強する。
  • ベタネコールは、アセチルコリン M1 受容体を遮断して、腸管平滑筋を弛緩さ せる。
  • トロピカミドは、アセチルコリン M3 受容体を刺激して、気管支平滑筋を収縮 させる。

◆ 問152

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


この問題の核心は、ムスカリン受容体のサブタイプ(M1〜M3)と、それらが分布する臓器の対応を正確に把握しているか、そして各薬物が「刺激」と「遮断」のどちらの方向に働くかを理解しているかにあります。

「ピロカルピン → M3刺激 → 毛様体筋収縮」は、正しい記述です。
ピロカルピンはM3受容体刺激薬であり、緑内障の点眼薬として用いられます。M3受容体を刺激することで毛様体筋が収縮し、それに連動して線維柱帯が引っ張られてSchlemm(シュレム)管が開口します。その結果、眼房水の排出が促進され、眼圧が低下します。ただし、同時に瞳孔括約筋も収縮して縮瞳が起こるため、暗所での視力低下には注意が必要です。

「アトロピン → M2遮断 → 洞房結節の発火頻度(自動能)上昇 → 心拍数上昇(頻脈)」は、正しい記述です。
アトロピンはムスカリン受容体遮断薬です。心臓の洞房結節にあるM2受容体(Gi共役型)は、通常、迷走神経からの指令を受けて心拍数を下げる「ブレーキ」の役割を担っています。アトロピンがこのM2受容体をブロックすることでブレーキが外れ、心拍数が増加します。臨床では、徐脈性不整脈の緊急時などに使用されます。

「ジスチグミン → コリンエステラーゼを『非可逆的』に阻害」は、誤りです。
ジスチグミンはカルバメート系化合物であり、コリンエステラーゼを可逆的に阻害します。非可逆的に阻害するのは、有機リン系化合物(パラチオンなどの農薬やサリンなどの神経ガス)のみです。カルバメート系による阻害は、加水分解によって自然に回復する性質を持っています。

「ベタネコール → M1受容体を『遮断』」は、誤りです。
ベタネコールはコリン作動薬、つまり受容体刺激薬です。主にM3受容体を刺激することで、消化管や膀胱の平滑筋を収縮させ、排尿を促すなどの目的で使用されます。アセチルコリンの誘導体ですが、コリンエステラーゼによって分解されにくいという特徴があります。

「トロピカミド → M3受容体を『刺激』」は、誤りです。
トロピカミドは眼科検査で用いられる散瞳薬であり、M受容体遮断薬です。瞳孔括約筋のM3受容体を遮断して筋肉を弛緩させることで、瞳孔を散大(散瞳)させます。アトロピンと比較して作用持続時間が短いため、日常的な眼底検査に適しています。

【覚え方のコツ:臨床効果から逆算する】
「刺激か遮断か」で迷ったときは、薬の目的から考えましょう。
  • トロピカミド:瞳孔を開く(筋肉を緩める) = 副交感神経を止める = 遮断
  • ベタネコール:膀胱を縮める(筋肉を動かす) = 副交感神経を動かす = 刺激
このように、実際の体の反応をイメージすると間違いを防げます。