第111回薬剤師国家試験

◆ 問153

筋弛緩薬に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • ロクロニウムは、電位依存性 Na チャネルに結合して、終板の脱分極を抑制す る。
  • スキサメトニウムの筋弛緩作用は、スガマデクスの併用により減弱される。
  • ダントロレンは、骨格筋のリアノジン受容体に作用して、筋小胞体からの Ca 2+ 遊離を抑制する。
  • バクロフェンは、γ-アミノ酪酸 GABAA 受容体を刺激して、γ 運動ニューロン の活動を抑制する。
  • チザニジンは、アドレナリン α2 受容体を刺激して、脊髄の多シナプス反射を 抑制する。

◆ 問153

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題の核心は、筋弛緩薬が「どこで作用するか」を3つのグループ(末梢の神経筋接合部、骨格筋のリアノジン受容体、脊髄の中枢神経系)に整理できているか、そして末梢作用薬において「脱分極性か非脱分極性か」を区別できているかにあります [1]。

「ロクロニウム → 電位依存性Na+チャネルに結合」は、誤りです。
ロクロニウムは、神経筋接合部(NMJ)に存在するニコチン性アセチルコリン受容体(NM受容体)の競合的拮抗薬(非脱分極性筋弛緩薬)です [1]。ロクロニウムのステロイド骨格がNM受容体に嵌まることで、アセチルコリンの結合を阻害します [1]。なお、電位依存性Na+チャネルは局所麻酔薬(リドカインなど)の標的です [1]。

「スキサメトニウムの作用はスガマデクスで減弱される」は、誤りです。
スガマデクスが包接(取り込んで中和)できるのは、ステロイド骨格を持つ非脱分極性筋弛緩薬(ロクロニウムやベクロニウム)のみです [1]。スキサメトニウムは脱分極性筋弛緩薬であり、ステロイド骨格を持たないため、スガマデクスは無効です [1]。

「ダントロレン → リアノジン受容体阻害 → 筋小胞体からのCa2+遊離抑制」は、正しい記述です。
ダントロレンは、吸入麻酔薬やスキサメトニウムによって誘発される悪性高熱症の唯一の治療薬です。悪性高熱症は、リアノジン受容体(RYR1)の異常によって筋小胞体からCa2+が過剰に放出され、全身の筋拘縮や高体温を引き起こす致死的な疾患ですが、ダントロレンはこの異常なCa2+放出を直接ブロックします。

「バクロフェン → GABAA受容体を刺激」は、誤りです。
バクロフェンは、GABAB受容体のアゴニスト(刺激薬)です。GABAA受容体はCl-チャネル内蔵型でベンゾジアゼピン系薬などが作用する受容体ですが、GABAB受容体はGi共役型受容体であり、シナプス前での神経伝達物質の遊離抑制や、シナプス後での過分極を引き起こすことで筋緊張を緩和します。

「チザニジン → α2受容体刺激 → 脊髄多シナプス反射抑制」は、正しい記述です。
チザニジンは中枢作用型筋弛緩薬です。脊髄において「ブレーキ」の役割を果たすα2受容体を刺激することで、興奮性伝達物質であるノルアドレナリンの遊離を抑制し、多シナプス反射を抑えて筋緊張を低下させます。

【覚え方のコツ:スガマデクスとパックマン】
スガマデクスは「ステロイドだけを食べるパックマン」とイメージしましょう [2]。ステロイド骨格を持つロクロニウムなどは食べられてしまいますが、骨格の異なるスキサメトニウムには見向きもしないため、拮抗作用を示しません。