第111回薬剤師国家試験
◆ 問156
片頭痛治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
エレトリプタンは、セロトニン 5-HT1B 受容体を刺激して、脳血管を収縮させ る。
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ゾルミトリプタンは、セロトニン 5-HT1F 受容体を選択的に刺激して、ニュー ロペプチドの放出を抑制する。
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エレヌマブは、電位依存性 Ca2+ チャネルに結合して、ニューロペプチドの放 出を抑制する。
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ガルカネズマブは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に結合して、 神経原性炎症を抑制する。
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ロメリジンは、プロスタグランジン E2 の産生を抑制して、痛覚閾値を上昇さ せる。
◆ 問156
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題の核心は、片頭痛治療を「急性期(トリプタン、ラスミジタン)」と「予防(抗CGRP抗体、Ca2+拮抗薬)」の2軸で整理できているか、という点にあります。さらに、最新の抗CGRP関連薬については「リガンド(物質そのもの)に結合するのか」それとも「受容体に結合するのか」というターゲットの違いを正確に区別することが求められています。
「エレトリプタン → 5-HT1B受容体刺激 → 脳血管収縮」は、正しい記述です。
トリプタン系薬は、血管平滑筋の5-HT1B受容体を刺激して「脳血管を収縮」させると同時に、三叉神経終末の5-HT1D受容体を刺激して「CGRPの遊離を抑制」するという、二重の効果を持っています。ただし、血管を収縮させる作用があるため、冠攣縮性狭心症やコントロール不良の高血圧症の患者さんには禁忌となります。
「ゾルミトリプタン → 5-HT1F受容体を『選択的に』刺激」は、誤りです。
ゾルミトリプタンはトリプタン系であり、主に5-HT1Bおよび5-HT1D受容体に作用します。5-HT1F受容体に対して「選択的に」作用するのは、新しいクラスの薬であるラスミジタン(ジタン系)の特徴です。ラスミジタンは血管収縮作用を持たないため、心血管リスクのある患者さんにも使いやすいというメリットがありますが、中枢神経系への移行性が高く、眠気などの副作用に注意が必要です。
「エレヌマブ → 電位依存性Ca2+チャネルに結合」は、誤りです。
エレヌマブは、CGRP受容体に直接結合して、その働きをブロックする抗体薬です。電位依存性Ca2+チャネルを標的としているわけではありません。
「ガルカネズマブ → CGRP(リガンド)に結合 → 神経原性炎症抑制」は、正しい記述です。
ガルカネズマブは、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という物質そのものに結合して中和する抗体薬です。CGRPは、三叉神経から放出されて血管拡張や神経原性炎症を引き起こす「片頭痛の主役」とも言える物質です。これを直接抑え込むことで、発作の頻度を減少させます。
「ロメリジン → PGE2産生抑制」は、誤りです。
ロメリジンは、脳血管選択性が高いCa2+拮抗薬であり、血管の過度な収縮を抑えることで片頭痛を予防します。PGE2(プロスタグランジンE2)の産生を抑制するのは、COX(シクロオキシゲナーゼ)を阻害するNSAIDs(アスピリンやロキソプロフェンなど)の機序です。また、ロメリジンはあくまで「予防薬」であり、すでに起きてしまった発作を止める効果はない点にも注意してください。
【覚え方のコツ:抗CGRP関連薬のターゲット】
最新の抗体薬は名前で区別しましょう。
- ガルカネズマブ・フレマネズマブ:リガンド(CGRPそのもの)を捕まえる
- エレヌマブ:受容体(R)を「エレガントに」ブロックする
