第111回薬剤師国家試験
◆問157-158
18 歳女性。アレルギー性鼻炎と診断され、治療中である。その他の既往歴及び常用薬はない。◆ 問157
◆ 問158
アレルギー性鼻炎の治療に用いられる薬物の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
ビラスチンは、ヒスタミン H1 受容体を遮断することで、くしゃみや鼻汁分泌 を軽減する。
-
クロモグリク酸は、アドレナリンα受容体を刺激することで、鼻粘膜の血管平滑筋を収縮させ、鼻閉を改善する。
-
トラニラストは、ロイコトリエン CysLT1受容体を遮断することで、鼻粘膜の過敏性を改善する。
-
プランルカストは、IgE 抗体を中和することで、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑制する。
-
ラマトロバンは、プロスタノイド TP 受容体及びプロスタノイド DP2受容体 (CRTH2 受容体)を遮断することで、鼻粘膜の炎症を軽減する。
◆ 問157
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、3
この問題の核心は、①原因による「季節性(花粉など)」と「通年性(ダニなど)」の区別、②標準的な治療薬である「鼻噴霧用ステロイド」の特性、③最新の治療選択肢(抗IgE抗体や免疫療法)の正確な理解にあります。
「通年性アレルギー性鼻炎の主因はスギ花粉である」は、誤りです。
スギ花粉は特定の時期にのみ飛散するため、季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の原因となります。これに対し、通年性アレルギー性鼻炎の主な原因は、一年を通して存在するダニやハウスダスト(室内塵)、ペットの毛などです。季節と通年の原因物質を混同しないようにしましょう。
「季節性アレルギー性鼻炎では、アレルギー性結膜炎を合併しやすい」は、正しい記述です。
花粉は空中を漂っているため、鼻の粘膜だけでなく目の粘膜にも付着します。そのため、花粉症患者さんの50〜70%程度は、目のかゆみや充血を伴うアレルギー性結膜炎を併発すると報告されています。患者さんが「目もかゆい」と訴える場合は、点眼薬の併用も考慮する必要があります。
「鼻噴霧用副腎皮質ステロイド薬は、くしゃみ・鼻漏型、鼻閉型の両方に有効である」は、正しい記述です。
鼻噴霧用ステロイドは、現在のアレルギー性鼻炎治療における第一選択薬です。局所投与のため全身性の副作用が少なく、アレルギー反応のあらゆる段階に作用するため、くしゃみ、鼻水(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)のすべての症状に対して高い効果を発揮します。ただし、効果を実感するまでに数日から1週間ほど継続して使用する必要があるため、花粉飛散前から使用を開始する「初期療法」が推奨されます。
「既存治療で十分な効果が得られない重症例(難治例)には、エタネルセプトを用いる」は、誤りです。
エタネルセプトはTNFα(腫瘍壊死因子α)を阻害する製剤であり、主に関節リウマチや乾癬に使用されます。アレルギー性鼻炎の重症例に対して、2020年に適応が追加されたのはオマリズマブ(抗IgE抗体)です。アレルギー反応の元となるIgEを中和することで、劇的な症状改善が期待されます。
「特異的アレルゲン免疫療法(減感作療法)は、通常2〜3週間で終了する」は、誤りです。
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法や皮下免疫療法)は、アレルギーの原因物質を微量ずつ体内に取り入れ、体質を根本から改善することを目指す治療法です。効果を定着させるためには、3〜5年という長期間にわたって毎日継続する必要があります。数週間で終わるような短期的な治療ではありませんので、患者さんのアドヒアランス(継続意志)を維持するための支援が重要です。
【試験対策のポイント】
アレルギー性鼻炎の問題では、まず「季節性か通年性か」で原因物質を振り分けましょう。また、ステロイド点鼻薬は「すべての症状に効く万能な第一選択薬」と覚えておくと、消去法でも有利になります。難治例への新薬「オマリズマブ」についても、今後の頻出テーマですので押さえておきましょう。
◆ 問158
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、5
この問題の核心は、アレルギー性鼻炎の薬を「H1受容体遮断薬」「ケミカルメディエーター遊離抑制薬」「ロイコトリエン受容体遮断薬」「抗IgE抗体」の4つのグループに正しく整理し、それぞれの薬物がどこに属するかを把握することにあります。
「ビラスチン → H1受容体遮断 → くしゃみ・鼻汁軽減」は、正しい記述です。
ビラスチンは第2世代抗ヒスタミン薬であり、脳内への移行が非常に少ないため、眠気が出にくいという特徴があります。ただし、P-gp(P糖タンパク質)の基質であり、フルーツジュース等でOATP2B1が阻害されると吸収が低下するため、空腹時に服用する必要があります。
「クロモグリク酸 → アドレナリンα受容体を刺激」は、誤りです。
クロモグリク酸は肥満細胞安定化薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬)です。アドレナリンα1受容体を刺激して血管を収縮させ、鼻づまりを改善するのはナファゾリンなどの血管収縮性点鼻薬です。
「トラニラスト → CysLT1受容体を遮断」は、誤りです。
トラニラストも、クロモグリク酸と同じカテゴリーのケミカルメディエーター遊離抑制薬です。CysLT1受容体(ロイコトリエン受容体)を遮断するのは、プランルカストやモンテルカストです。なお、トラニラストは肥厚性瘢痕やケロイドの治療にも用いられることがあります。
「プランルカスト → IgE抗体を中和」は、誤りです。
プランルカストはロイコトリエン(CysLT1)受容体遮断薬であり、特に鼻閉(鼻づまり)に対して高い効果を示します。IgE抗体を直接中和してアレルギー反応を根元から抑えるのは、抗体製剤であるオマリズマブです。
「ラマトロバン → TPおよびDP2(CRTH2)受容体遮断 → 鼻粘膜炎症軽減」は、正しい記述です。
ラマトロバンは、トロンボキサンA2(TXA2)が結合するTP受容体と、プロスタグランジンD2(PGD2)が結合するDP2(CRTH2)受容体の両方をブロックするユニークな薬です。これら2つの経路を同時に遮断することで、好酸球などによる鼻粘膜の炎症を鎮めます。
【アレルギー性鼻炎薬の帰属ポイント】
- 鼻閉(鼻づまり)に効く: ロイコトリエン受容体遮断薬(プランルカスト等)、ラマトロバン
- くしゃみ・鼻汁に効く: 抗ヒスタミン薬(ビラスチン等)
- 根本を抑える: 遊離抑制薬(トラニラスト等)、抗IgE抗体(オマリズマブ)
