第111回薬剤師国家試験
◆ 問159
骨粗しょう症治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
アレンドロン酸は、メバロン酸経路のファルネシルピロリン酸合成酵素を阻害 することで、破骨細胞による骨吸収を抑制する。
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カルシトリオールは、カルシトニン受容体を刺激することで、腸管からの Ca2+ 吸収を促進する。
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テリパラチドは、破骨細胞のビタミン D 受容体に結合することで、破骨細胞の アポトーシスを促進する。
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ラロキシフェンは、骨組織のエストロゲン受容体の活性化を介して、骨吸収を 抑制する。
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ロモソズマブは、スクレロスチンに結合し、古典的 Wnt シグナル伝達を抑制 して、骨形成を促進する。
◆ 問159
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題の核心は、骨粗しょう症治療薬を「骨吸収抑制」と「骨形成促進」の2つの軸で分類し、それぞれの薬物がどの分子を標的としているかを正確に区別することにあります 。特にロモソズマブなどの新薬については、作用の方向(抑制の抑制による活性化)を正しく理解しておく必要があります [1, 2]。
「アレンドロン酸は、ファルネシルピロリン酸(FPP)合成酵素を阻害する」は、正しい記述です 。
これは含窒素ビスホスホネート系薬に共通の機序です 。メバロン酸経路のFPP合成酵素を阻害することで、破骨細胞の接着や機能に不可欠なタンパク質の脂質修飾(ゲラニルゲラニル化)を妨げます 。その結果、破骨細胞をアポトーシス(細胞死)へと導き、骨吸収を強力に抑制します 。
「カルシトリオールは、カルシトニン受容体を刺激する」は、誤りです 。
カルシトリオールは活性型ビタミンD3であり、骨芽細胞や小腸にあるビタミンD受容体(VDR)に結合してカルシウムの吸収を促進します 。カルシトニン受容体に直接結合して骨吸収を抑制するのは、カルシトニン製剤(エルカトニンなど)です 。
「テリパラチドは、破骨細胞のビタミンD受容体に結合する」は、誤りです 。
テリパラチドは副甲状腺ホルモン(PTH)の活性断片であり、骨芽細胞のPTH1受容体を刺激します 。PTHを持続的に投与すると骨吸収が進んでしまいますが、テリパラチドを間欠投与(週1回または1日1回)することで、骨形成が骨吸収を上回る「アナボリック・ウィンドウ」期間を作り出し、骨形成を促進させます 。
「ラロキシフェンは、骨組織のエストロゲン受容体を活性化して、骨吸収を抑制する」は、正しい記述です 。
ラロキシフェンはSERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)と呼ばれます 。骨組織においてはエストロゲン様として働き、受容体を刺激して骨吸収を抑制しますが、乳腺や子宮に対してはエストロゲン拮抗薬として振る舞います 。このように組織によって「刺激」か「遮断」かが分かれるのが特徴です 。
「ロモソズマブは、Wntシグナルを『抑制』して骨形成を促進する」は、誤りです 。
記述の方向が逆になっています 。ロモソズマブは、Wntシグナルの抑制因子である「スクレロスチン」に対する抗体です 。抑制因子を中和(ブロック)するため、結果としてWntシグナルを「活性化」させ、骨芽細胞の分化を促して骨形成を促進します 。「抑制の抑制は活性化」という二重否定の機序として理解しましょう 。
【試験対策のポイント】
骨粗しょう症の問題では、各薬剤が「骨を作る側(形成)」か「壊すのを止める側(吸収抑制)」かを整理しましょう 。
- 骨吸収抑制: ビスホスホネート(アレンドロン酸)、SERM(ラロキシフェン)、デノスマブ(抗RANKL抗体)
- 骨形成促進: PTH製剤(テリパラチド)
- 両方の作用: ロモソズマブ(骨形成促進 + 骨吸収抑制)
