第111回薬剤師国家試験

◆ 問162

高血圧症治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • アジルサルタンは、アンジオテンシンⅡAT1 受容体を遮断して、血管収縮及び アルドステロン分泌を抑制する。
  • シルニジピンは、電位依存性 N型 Ca2+チャネルを遮断して、交感神経終末からのノルアドレナリン遊離を抑制する。
  • ヒドロクロロチアジドは、Na-K-2Cl 共輸送体を阻害して、遠位尿細管におけるNa の再吸収を抑制する。
  • ウラピジルは、アドレナリン α1 受容体を遮断して、交感神経終末からのノル アドレナリン遊離を抑制する。
  • イミダプリルは、レニンを阻害して、アンジオテンシノーゲンからアンジオテ ンシンⅠへの変換を抑制する。

◆ 問162

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


この問題の核心は、各降圧薬がどの分子(受容体、チャネル、共輸送体、酵素)を標的にしているかを正確に区別することにあります 。特に、利尿薬における「チアジド系(NCC阻害)とループ利尿薬(NKCC2阻害)」の違いや、レニン・アンギオテンシン系における「ACE阻害とレニン阻害」の取り違えに注意が必要です。

「アジルサルタン → AT1受容体遮断 → 血管収縮・アルドステロン分泌抑制」は、正しい記述です 。
アジルサルタンはARB(アンギオテンシンII受容体遮断薬)の基本機序を持っています 。アンギオテンシンIIがAT1受容体に作用するのを妨げることで、末梢血管の収縮を抑え、さらにアルドステロンの分泌を低下させてナトリウムの貯留を防ぐことで血圧を下げます 。また、ARBを使用することでAT2受容体が相対的に活性化され、一酸化窒素(NO)産生を介した血管拡張にも寄与すると考えられています 。

「シルニジピン → N型Ca2+チャネル遮断 → 交感神経終末からのノルアドレナリン(NA)遊離抑制」は、正しい記述です 。
シルニジピンは、血管平滑筋のL型Ca2+チャネルだけでなく、交感神経終末に存在するN型Ca2+チャネルも遮断するユニークな特徴を持っています 。N型チャネルを遮断することでノルアドレナリンの放出を抑えるため、他のジヒドロピリジン系薬に比べて反射性の頻脈(心拍数上昇)が起こりにくいという利点があります 。また、腎臓の輸出細動脈のN型チャネルも遮断するため、糸球体内圧を下げて腎保護効果を発揮することも期待されます 。

「ヒドロクロロチアジド → Na+-K+-2Cl-共輸送体を阻害」は、誤りです 。
ヒドロクロロチアジドなどのチアジド系利尿薬が阻害するのは、遠位尿細管にあるNCC(Na+-Cl-共輸送体)です 。記述にあるNa+-K+-2Cl-(NKCC2)を阻害するのは、フロセミドなどのループ利尿薬の機序(ヘンレ上行脚での作用)です 。共輸送体の名前に「2Cl-」が含まれるかどうかが、ループかチアジドかを見分けるポイントになります 。

「ウラピジル → α1遮断 → 交感神経終末からのNA遊離を抑制」は、誤りです 。
ウラピジルの主な降圧機序は、末梢のα1受容体を遮断することによる血管拡張です 。ノルアドレナリン(NA)の遊離そのものを抑制するのは、シナプス前膜にあるα2受容体の「刺激」による作用です 。なお、ウラピジルは中枢の5-HT1A受容体刺激作用も併せ持ち、中枢性の交感神経抑制効果を発揮するという特徴もあります 。

「イミダプリル → レニンを阻害」は、誤りです 。
イミダプリルはACE(アンギオテンシン変換酵素)阻害薬であり、アンギオテンシンIからアンギオテンシンIIへの変換を阻止することで作用します 。レニンを直接阻害する薬はアリスキレンです 。ACE阻害薬は、ブラジキニンの分解も抑制してしまうため、副作用として「空咳」が出やすいという特徴も覚えておきましょう 。

【利尿薬の作用部位とターゲットの覚え方】
  • ループ利尿薬: ヘンレ上行脚 = NKCC2(Na+-K+-2Cl-共輸送体)を阻害。
  • チアジド系利尿薬: 遠位尿細管 = NCC(Na+-Cl-共輸送体)を阻害。
「NKCC2の『2』は、ループ(Loop)の『oo』に似ている」など、文字の形で関連付けると間違いを防げます。