第111回薬剤師国家試験

◆ 問163

抗凝固薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • ワルファリンは、ビタミン K エポキシド還元酵素を阻害することで、ビタミン K 依存性凝固因子の生成を阻害する。
  • ヘパリンは、プラスミノーゲンからプラスミンへの変換を促進することによ り、線溶系を活性化する。
  • ナファモスタットは、アンチトロンビンと結合し、トロンビン活性を選択的に 阻害する。
  • ダビガトランエテキシラートは、体内で活性代謝物となり、第 Xa 因子の活性 を選択的に阻害する。
  • トロンボモデュリン アルファは、トロンビンに結合し、プロテイン C を活性 化することで、第 Va 因子及び第 VIIIa 因子を不活性化する。

◆ 問163

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


この問題の核心は、凝固カスケードの「どの段階を止めるか」によって薬を正確に分類できているかにあります。特に「ヘパリンは線溶系ではなく抗凝固系であること」や、「各DOAC(直接経口抗凝固薬)がトロンビンを止めるのか、Xa因子を止めるのか」という違いを見抜くことが重要です。

「ワルファリン → ビタミンKエポキシド還元酵素(VKORC1)阻害 → ビタミンK依存性凝固因子生成阻害」は、正しい記述です。
ビタミンKは、凝固因子が活性化するために必要な「γ-カルボキシル化」というプロセスに不可欠です。ワルファリンはこのビタミンKの再利用を断つことで、凝固因子(IIVIIIXX)および凝固抑制因子(プロテインC・S)の合成を妨げます。既存の凝固因子が消費されるまで時間がかかるため、効果発現には数日を要します。最初に半減期の短いVII因子が低下するため、検査ではPT(プロトロンビン時間)の延長として現れます。

「ヘパリン → プラスミノーゲンをプラスミンへ変換促進(線溶系活性化)」は、誤りです。
ヘパリンは、血液中のアンチトロンビン(AT)の活性を1,000倍以上に強めることで、トロンビンやXa因子を阻害する「抗凝固薬」です。記述にあるプラスミノーゲンの活性化(線溶系の促進)は、ウロキナーゼやt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)といった「血栓溶解薬」の機序であり、全く別の系統です。

「ナファモスタット → アンチトロンビンと結合」は、誤りです。
ナファモスタットは、セリンプロテアーゼを直接阻害するタンパク分解酵素阻害薬です。ヘパリンとは異なり、アンチトロンビン(AT)を介さずに作用を発揮するため、AT活性が著しく低下しているDIC(播種性血管内凝固症候群)の患者さんにも効果が期待できます。半減期が非常に短いため、透析回路内の凝固防止などにも用いられます。

「ダビガトランエテキシラート → 第Xa因子阻害」は、誤りです。
ダビガトランは、直接トロンビン(第IIa因子)を阻害する薬です。名前に「Xa」を含まないことで区別しましょう。一方で、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなどは、名前に「Xa」を含んでおり、これらが第Xa因子を直接阻害する薬(Xa阻害薬)に分類されます。

「トロンボモデュリン アルファ → トロンビン結合 → プロテインC活性化 → Va因子・VIIIa因子不活化」は、正しい記述です。
これは天然のトロンボモデュリンと同じ働きを持つ遺伝子組換え製剤です。本来は凝固を促進する「トロンビン」を自らに結合させることで、その働きを「プロテインCの活性化」へと変えてしまいます。活性化されたプロテインCが凝固を促進する補助因子(VaVIIIa)を壊すことで、過剰な凝固を制御します。DICの治療において非常に巧みな戦略をとる薬剤です。

【覚え方のコツ:ダビガトランとXa阻害薬】
  • ダビガトラン: 「ダビ」=「二(IIa)」と覚えて、トロンビン(第IIa因子)阻害と結びつけましょう。
  • Xa阻害薬: 語尾が「〜キサバン(-xaban)」となっているものは、その名の通りXa因子を阻害します。
また、それぞれの拮抗薬(ダビガトランにはイダルシズマブ、Xa阻害薬にはアンデキサネット アルファ)もセットで押さえておくと実戦的です。