第111回薬剤師国家試験

◆ 問164

消化性潰瘍治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • ボノプラザンは、K と競合して壁細胞の H,K-ATPase を可逆的に阻害することで、胃酸分泌を抑制する。
  • ピレンゼピンは、アセチルコリンM2 受容体を刺激してアセチルコリンの遊離を抑制することで、胃酸分泌を抑制する。
  • レバミピドは、プロスタノイド EP 受容体に結合して活性化することで、胃粘 膜血流を増大させる。
  • ニザチジンは、ヒスタミンH2 受容体を遮断することで、胃酸分泌を抑制する。
  • ミソプロストールは、ドパミンD2 受容体を遮断することで、胃粘液分泌を促進する。

◆ 問164

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題の核心は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)とカリウム競合型アシッドブロッカー(P-CAB)の違い、および胃粘膜保護薬が「プロスタグランジン(PG)を作らせるもの」か「PGそのものとして働くもの」かという細かな機序の使い分けにあります。

「ボノプラザン → K+競合型 → H+,K+-ATPase可逆的阻害」は、正しい記述です。
ボノプラザンはP-CABと呼ばれる新しいタイプの胃酸分泌抑制薬です。従来のPPIが酸による活性化を必要とし、ポンプに不可逆的に結合するのに対し、ボノプラザンは活性化を必要とせず、K+と競合する形でプロトンポンプ(H+,K+-ATPase)を可逆的に阻害します。効果発現が速く、酸に強いため、ピロリ菌除菌の第一選択薬としても広く利用されています。

「ピレンゼピン → M2受容体を刺激してアセチルコリン遊離抑制」は、誤りです。
ピレンゼピンは、M1受容体選択的遮断薬です。胃の副交感神経節にあるM1受容体を遮断することで、結果として胃酸分泌を抑制します。「刺激」ではなく「遮断」であり、標的もM2ではなくM1ですので注意してください。

「レバミピド → プロスタノイドEP受容体に結合して活性化」は、誤りです。
レバミピドの主な機序は、胃粘膜における内因性プロスタグランジン(PG)の産生を促進することです。EP受容体を直接刺激するのではなく、自分の体でPGを作る力を高めるという働きをします。

「ニザチジン → H2受容体遮断 → 胃酸分泌抑制」は、正しい記述です。
H2ブロッカーの基本機序であり、壁細胞のH2受容体を遮断してcAMP産生を抑え、胃酸分泌を抑制します。さらに、ニザチジンはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用も併せ持っており、消化管運動を促進するという、他のH2ブロッカーにはない臨床的なメリットも持っています。

「ミソプロストール → ドパミンD2受容体遮断で胃粘液分泌促進」は、誤りです。
ミソプロストールはPGE1誘導体であり、直接プロスタノイドEP受容体を刺激することで、胃粘液の分泌を促し、胃酸分泌を抑制します。D2受容体は関与しません。また、この薬は副作用として子宮収縮を引き起こす可能性があるため、妊婦の方には禁忌である点も非常に重要です。

【試験対策のポイント:PG関連薬の区別】
防御因子増強薬の中で、PGに関する機序は特によく狙われます。
  • レバミピド: PGを「作らせる」(産生促進)
  • ミソプロストール: PGの「代わりをする」(PGE1誘導体、受容体直接刺激)
この「自前で作るか、外から補うか」という違いを明確にしておきましょう。