第111回薬剤師国家試験
◆ 問165
糖尿病治療薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
レパグリニドは、膵 β 細胞上のグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体を直 接刺激することで、インスリン分泌を促進する。
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ミグリトールは、AMP 依存性キナーゼ(AMPK)を阻害することで、肝臓に おける糖新生を抑制する。
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セマグルチドは、スルホニル尿素受容体に結合して ATP 感受性 K+ チャネルを遮断することで、膵β細胞の細胞膜を脱分極させる。
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シタグリプチンは、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)を阻害して血中インクレチン濃度を上昇させることで、インスリン分泌を促進する。
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ピオグリタゾンは、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体 γ(PPARγ)を刺激 して、インスリン抵抗性を改善する。
◆ 問165
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:4、5
この問題の核心は、各薬剤が「何を介してインスリン分泌を促すか」(SU受容体、GLP-1受容体、あるいはDPP-4阻害か)という入り口を正確に区別することにあります。特に、グリニド系薬とGLP-1受容体作動薬の標的を混同しないように注意しましょう。
「レパグリニド → GLP-1受容体を直接刺激」は、誤りです。
レパグリニドはグリニド系薬であり、スルホニル尿素受容体(SUR)に結合することで作用します。SURに結合すると、KATPチャネルが閉口し、膜が脱分極することでCa2+が流入し、インスリン分泌が促進されます。GLP-1受容体は介しません。また、速効・短時間型であるため、食直前に服用することが原則です。
「ミグリトール → AMPKを阻害して肝糖新生抑制」は、誤りです。
ここには2つの間違いがあります。まず、ミグリトールはα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)であり、小腸粘膜で二糖類の分解を阻害して糖の吸収を遅延させる薬です。次に、AMPKを「活性化」して肝糖新生を抑制するのはメトホルミン(ビグアナイド系)の機序です。ミグリトールはα-GIの中で唯一、小腸下部まで到達して吸収されるという特徴があります。
「セマグルチド → SU受容体に結合」は、誤りです。
セマグルチドはGLP-1受容体アゴニスト(作動薬)です。SU受容体(SUR)に結合するのは、スルホニル尿素薬(グリメピリドなど)やグリニド系薬です。なお、経口セマグルチド(リベルサス)は、吸収促進剤であるSNACを配合することで、本来は分解されやすいペプチド製剤の胃からの吸収を可能にした革新的な薬剤です。
「シタグリプチン → DPP-4阻害 → インクレチン濃度上昇 → インスリン分泌促進」は、正しい記述です。
DPP-4は、インスリン分泌を促すホルモンであるインクレチン(GLP-1やGIP)を分解する酵素です。シタグリプチンはこの酵素を阻害することで、体内のインクレチン濃度を高めます。インクレチンは血糖値が高いときにのみインスリン分泌を促す性質(血糖依存性)があるため、単独使用では低血糖のリスクが低いというメリットがあります。
「ピオグリタゾン → PPARγ刺激 → インスリン抵抗性改善」は、正しい記述です。
PPARγ(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ)は、脂肪細胞の分化などを制御する核内受容体です。これを刺激することで、善玉ホルモンであるアディポネクチンの産生を高めたり、遊離脂肪酸(FFA)の取り込みを改善したりして、末梢組織でのインスリンの効き目を良くします(抵抗性の改善)。副作用として浮腫や体重増加、心不全の悪化があるため、心不全の患者さんには禁忌です。
【試験対策のポイント:インスリン分泌促進の3ルート】
- ルートA:直接刺激(SUR経由) = SU薬、グリニド系(レパグリニド等)
- ルートB:GLP-1受容体直接刺激 = GLP-1受容体作動薬(セマグルチド等)
- ルートC:GLP-1の分解を止める = DPP-4阻害薬(シタグリプチン等)
