第111回薬剤師国家試験
◆ 問166
ホルモン関連薬の作用機序に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
テトラコサクチドは、副腎皮質束状層の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)受容 体を刺激して、糖質コルチコイドの生成・分泌を促す。
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オシロドロスタットは、ソマトスタチン受容体を刺激して、成長ホルモンや消 化管ホルモンの分泌を持続的に抑制する。
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カベルゴリンは、下垂体前葉のドパミンD2受容体を遮断して、プロラクチン分泌を抑制する。
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フィナステリドは、5α-還元酵素を阻害して、テストステロンからジヒドロテ ストステロンへの変換を抑制する。
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メチラポンは、3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素を阻害して、アルドステ ロン生成を抑制する。
◆ 問166
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題の核心は、各薬剤が「刺激」と「阻害(遮断)」のどちらの方向に働くかを正確に把握しているかにあります。特にカベルゴリンのように「刺激することで分泌を抑える」といった、生理的なフィードバックや調節機構が絡むものは、作用の方向を混同しやすいため注意が必要です。
「テトラコサクチド → ACTH受容体刺激 → 糖質コルチコイド産生」は、正しい記述です。
テトラコサクチドは合成ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)誘導体です。副腎皮質を直接刺激してコルチゾール(糖質コルチコイド)の産生を促すため、副腎皮質機能の負荷試験に使用されます。この薬を投与してもコルチゾールが上昇しない場合は「副腎自体の機能不全」、上昇する場合は「下垂体側のACTH分泌不全」であると鑑別することができます。
「オシロドロスタット → ソマトスタチン受容体を刺激」は、誤りです。
オシロドロスタットは、コルチゾール合成の最終段階を担う11β-水酸化酵素(CYP11B1)を阻害する薬です。コルチゾールの過剰産生を抑えるため、クッシング症候群の治療に用いられます。なお、ソマトスタチン受容体を刺激して成長ホルモン(GH)などの分泌を抑える薬は、オクトレオチドなどです。
「カベルゴリン → D2受容体を遮断してプロラクチン分泌を抑制」は、誤りです。
カベルゴリンはD2受容体刺激薬(アゴニスト)です。下垂体前葉にあるドパミンD2受容体は、プロラクチンの分泌に対して「ブレーキ」の役割を果たしています。カベルゴリンがこの受容体を刺激することでブレーキが強くかかり、プロラクチンの分泌が抑制されます。逆にD2受容体を「遮断」してしまうと、ブレーキが外れてプロラクチン値が上昇(高プロラクチン血症)してしまうため、記述は正反対となります。
「フィナステリド → 5α-還元酵素阻害 → テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を抑制」は、正しい記述です。
テストステロンは、5α-還元酵素によってより強力な活性を持つDHTに変換されます。DHTは前立腺の肥大や男性型脱毛症(AGA)の原因となるため、フィナステリドでこの変換をブロックすることで治療効果を発揮します。フィナステリドはII型酵素を選択的に阻害しますが、デュタステリドはI型とII型の両方を阻害するという違いもあります。
「メチラポン → 3β-HSD阻害 → アルドステロン生成抑制」は、誤りです。
メチラポンは、オシロドロスタットと同じく11β-ヒドロキシラーゼ(CYP11B1)を阻害する薬剤です。主にコルチゾールの合成を阻害する目的で使用されます。3β-HSD(3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素)は、ステロイド合成のより上流段階に位置する別の酵素です。
【試験対策のポイント:作用の「方向」に注意】
ホルモン関連の問題では、以下の「逆転」パターンが頻出です。
- カベルゴリン: D2受容体を刺激してプロラクチンを下げる。
- メチラポン・オシロドロスタット: 11β位の代謝を止めてコルチゾールを下げる。
- フィナステリド: 5α還元酵素を止めてDHTを下げる。
