第111回薬剤師国家試験
◆問167-168
65 歳男性。悪性リンパ腫に対する化学療法実施後3 日目に 38.7 ℃ の発熱と悪寒を認め、血液検査では好中球が 400/μL に低下していたため、発熱性好中球減少症と診断された。広域抗菌薬による治療が開始されたが発熱は持続し、新たに行った血液検査では血小板数が6 × 104/μL と急激な低下が認められたため、敗血症性播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断された。◆ 問167
この患者へ投与する薬物として適切なのはどれか。2つ選べ。-
アンチトロンビン ガンマ
-
ワルファリン
-
ヘパリン
-
ペグフィルグラスチム
-
アスピリン
◆ 問168
◆ 問167
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題の核心は、DIC(播種性血管内凝固症候群)治療の3本柱、すなわち「①原疾患(この場合は感染症)の治療」「②アンチトロンビンの補充」「③抗凝固療法(ヘパリン等)」を正確に理解できているかにあります。急性期の病態に対し、即効性のない薬や、出血リスクを助長する薬を排除する思考力が求められます。
「アンチトロンビン ガンマ」を用いるのは、正しい選択です。
敗血症性DICでは、炎症によって凝固系が異常に活性化され、それを抑えるためのアンチトロンビン(AT)が過剰に消費されて著しく低下します。AT活性が70%以下に低下している場合、AT製剤を補充することで過剰な凝固を制御し、多臓器不全への進行を抑えることが推奨されています。
「ワルファリン」を用いるのは、誤りです。
ワルファリンは経口薬であり、効果が発現するまでに数日かかるため、一刻を争う急性期のDIC治療には不向きです。また、治療初期には凝固抑制因子であるプロテインCが先に低下するため、一時的に凝固を助長し「ワルファリン誘発性皮膚壊死」を引き起こすリスクがある点からも、この局面では不適切です。
「ヘパリン」を用いるのは、正しい選択です。
抗凝固療法としてヘパリン(未分画ヘパリンや低分子ヘパリン)を使用し、微小血栓の形成を阻止することで、DICの進行を止めます。ただし、出血リスクが高い患者さんの場合は慎重な投与が必要であり、状況によってはより半減期の短いナファモスタットなどが選択されることもあります。
「ペグフィルグラスチム」を用いるのは、誤りです。
ペグフィルグラスチムは持続型のG-CSF製剤であり、主な用途は「がん化学療法に伴う好中球減少症」の予防です。DICそのものを治療する薬剤ではありません。また、持続型であるため、急性期の細かな調整には向きません。
「アスピリン」を用いるのは、誤りです。
症例では血小板数が 6×104/μL と、すでに基準値を下回る「消費性血小板減少」が起きています。この状態で抗血小板薬であるアスピリンを投与すると、さらに止血機能を奪い、出血リスクを致命的に高める恐れがあるため、極めて危険です。
【試験対策のポイント:消去法での判断】
DICの治療薬として「何が使えるか」を覚えるのと同時に、「何が使えないか」を整理しておきましょう。
- 即効性がないもの: ワルファリンなどの経口抗凝固薬
- 出血リスクをさらに高めるもの: アスピリンなどの抗血小板薬(すでに血小板が減少しているため)
- 用途が違うもの: G-CSF(好中球用)など
◆ 問168
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、4
この問題の核心は、代表的な抗菌薬が「細菌のどの部位を標的にして増殖を抑えているか」という機序の分類を正確に把握することにあります。特に、作用機序の入れ替えによる選択肢が多いため、それぞれの薬剤が属するカテゴリーを正しく整理しておきましょう。
「ピペラシリン → ジヒドロ葉酸還元酵素阻害」は、誤りです。
ピペラシリンはペニシリン系のβ-ラクタム薬であり、細菌の細胞壁合成に不可欠なPBP(ペニシリン結合タンパク)に結合して細胞壁の合成を阻害します。記述にあるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を阻害するのは、トリメトプリムなどの薬剤です。
「セフトリアキソン → D-Ala-D-Alaに結合」は、誤りです。
細胞壁の材料であるD-Ala-D-Ala(D-アラニル-D-アラニン)に結合して架橋を妨げるのは、バンコマイシンなどのグリコペプチド系抗菌薬です。セフトリアキソンはセフェム系抗菌薬であり、ピペラシリンと同様にPBPに結合して作用を発揮します。
「ゲンタマイシン → リボソーム30Sサブユニット結合 → タンパク質合成阻害」は、正しい記述です。
ゲンタマイシンはアミノグリコシド系抗菌薬であり、細菌の30Sリボソームに結合してmRNAの読み取りミス(ミスリーディング)を引き起こすことで、タンパク質の合成を強力に阻害します。アミノグリコシド系は「30Sに結合して殺菌的に働く」という点が特徴的です。
「メロペネム → PBP結合 → 細胞壁合成阻害」は、正しい記述です。
メロペネムはカルバペネム系抗菌薬です。β-ラクタム環を持ち、これがPBPを不活化することで細菌の細胞壁合成を阻害します。カルバペネム系は非常に広い抗菌スペクトラムを持つ重要な薬剤です。
「タゾバクタム → DNAジャイレース阻害」は、誤りです。
タゾバクタムは、抗菌薬を分解する酵素の働きを抑えるβ-ラクタマーゼ阻害薬です。自身の構造を犠牲にして酵素を無力化する「自殺的阻害」として機能します。DNAジャイレース(核酸合成に関わる酵素)を阻害して殺菌的に働くのは、レボフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗菌薬です。
【試験対策のポイント:ターゲットの覚え方】
- 細胞壁合成阻害: ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系(いずれもPBPが標的)
- タンパク質合成阻害: アミノグリコシド系(30S・殺菌的)、テトラサイクリン系(30S・静菌的)
- 核酸合成阻害: ニューキノロン系(DNAジャイレース阻害)
