第111回薬剤師国家試験
◆ 問170
下図は、空腹時又は朝食後にリボフラビンを経口投与したときの投与量と累積尿中排泄量との関係を示している。リボフラビンの消化管吸収に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
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Aが朝食後、Bが空腹時に投与したときの曲線である。
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Aが空腹時、Bが朝食後に投与したときの曲線である。
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BがAより低値となるのは、リボフラビンの胃内容排出速度の低下が原因であ る。
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BがAより低値となるのは、リボフラビンの小腸上皮細胞から腸管腔への排出 トランスポーターの飽和が原因である。
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メトクロプラミドを前投与したときの曲線は、食事の有無によらずAよりBに 近い。
◆ 問170
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、5
この問題の核心は、リボフラビンの吸収がトランスポーターを介した「能動輸送」であるため、一定量を超えると吸収が頭打ちになる(飽和する)という性質を理解しているかにあります。食事の有無によって、薬物が小腸の吸収部位に到達する「スピード」が変わり、それが吸収効率にどう影響するかを読み解く必要があります。
「Aが朝食後、Bが空腹時のグラフである」は、正しい記述です。
空腹時(B)は胃の内容物を排出する速度が速いため、薬物が一気に小腸へ到達します。すると、吸収トランスポーターの処理能力を超えてしまい(飽和)、投与量を増やしても吸収量が頭打ちになります。一方、食後(A)は食事によって胃の排出がゆっくりになるため、薬物が少しずつ小腸へ運ばれます。その結果、トランスポーターが飽和しにくくなり、投与量に比例して見かけ上直線的に吸収量が増加します。
「飽和・非線形パターンを示すのはAである」は、誤りです。
グラフを見ると、投与量が増えても吸収量が伸び悩んでいる(非線形な挙動を示している)のは曲線Bの方です。曲線Aは投与量に応じて吸収量も増えているため、線形(直線的)な挙動を示しています。
「BがAより低値となるのは『胃内容排出速度の低下』が原因である」は、誤りです。
空腹時(B)において吸収量が低くなる本当の原因は、胃内容排出速度が「速すぎる」ことにあります。排出が速いために吸収部位である小腸上部へ薬物が短時間に集中し、トランスポーターが飽和してしまうためです。速度の「低下」ではなく「増大」が飽和を招くきっかけとなっています。
「BがAより低値となるのは、小腸上皮細胞から腸管腔への『排出トランスポーター』の飽和が原因である」は、誤りです。
リボフラビンの吸収に関わっているのは、腸管腔から細胞内へ取り込む「吸収トランスポーター(RFVT:リボフラビン輸送体)」です。もし仮に、細胞から外へ出す「排出トランスポーター」が飽和したとすると、薬物が腸管に戻されにくくなるため、むしろ吸収量は増えるはずです。Bの挙動(吸収量の減少)とは矛盾します。
「メトクロプラミドを前投与したときの曲線は、食事の有無によらずAよりBに近い」は、正しい記述です。
メトクロプラミドは、ドパミンD2受容体遮断作用や5-HT4受容体刺激作用により、胃腸運動を促進する(胃排出を速める)お薬です。これを投与すると、食後であっても空腹時のように薬物が一気に小腸へ送り込まれるため、トランスポーターの飽和が起きやすくなります。したがって、その挙動は空腹時のパターンであるBに近づきます。
【試験対策のポイント:食後の方が吸収が良い薬】
「食事で吸収が上がる薬」には主に2つのパターンがあります。
- 脂溶性が高い薬: 胆汁分泌や食事の脂肪分によって溶解性が高まるため(例:グリセオフルビン)。
- トランスポーター飽和型の薬: 食事により小腸への到達がゆっくりになり、飽和を回避できるため(例:本問のリボフラビン)。
