第111回薬剤師国家試験

◆ 問172

代謝過程における薬物相互作用により血中濃度が変動する薬物と併用薬及び相互作用メカニズムの組合せとして、正しいのはどれか。2つ選べ。
111回問172画像1

◆ 問172

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題の核心は、相互作用が「阻害」なのか「誘導」なのかという方向性と、関与するCYP(シトクロムP450)の分子種を正確に一致させられるかにあります。特に「併用禁忌」に該当する組み合わせは、実務上も極めて重要です。

「アザチオプリン + クラリスロマイシン → キサンチン酸化酵素阻害」は、誤りです。
アザチオプリンの代謝に関わるキサンチン酸化酵素(XO)を阻害して血中濃度を上昇させる薬剤は、アロプリノールです。クラリスロマイシンは、主にCYP3A4を阻害する薬剤であり、アザチオプリンの代謝経路(XO)とは標的が異なります。

「フェニトイン + シプロフロキサシン → CYP2C9阻害」は、誤りです。
フェニトインがCYP2C9の基質である点は正しいですが、シプロフロキサシンは主にCYP1A2を阻害する薬剤です。CYP2C9を阻害してフェニトインやワルファリンの血中濃度を上昇させる代表的な薬剤は、フルコナゾールやミコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬です。

「シクロスポリン + リファンピシン → CYP3A4誘導」は、正しい記述です。
リファンピシンは、核内受容体PXRを介してCYP3A4を強力に誘導(産生量を増加)させる薬剤です。これにより、CYP3A4の基質であるシクロスポリンの代謝が加速され、血中濃度が著しく低下します。臓器移植後の患者さんでは拒絶反応のリスクが急上昇するため、臨床的に極めて重要な相互作用です。リファンピシンはCYP3A4以外にも、CYP2C9やP糖タンパク質なども誘導する「広域誘導薬」として知られています。

「チザニジン + フルボキサミン → CYP1A2を誘導」は、誤りです。
作用の方向が逆になっています。フルボキサミンはCYP1A2の強力な阻害薬です。チザニジン(CYP1A2の基質)の代謝が抑えられることで血中濃度が約12倍にも上昇した報告があり、急激な血圧低下や過鎮静を引き起こす恐れがあるため、この組み合わせは併用禁忌に指定されています。

「ノルトリプチリン + パロキセチン → CYP2D6阻害」は、正しい記述です。
SSRIであるパロキセチンは、CYP2D6を強力に阻害します。三環系抗うつ薬であるノルトリプチリンはCYP2D6の基質であるため、パロキセチンによって代謝が阻害され、血中濃度が上昇します。その結果、口渇、便秘、さらには心毒性(QT延長)といった三環系抗うつ薬特有の副作用が増強される危険があります。

【試験対策のポイント:CYP阻害薬の頻出リスト】
以下の組み合わせは、阻害薬とターゲット分子種のセットで必ず覚えましょう。
  • CYP1A2阻害: フルボキサミン、シプロフロキサシン
  • CYP2C9阻害: フルコナゾール、ミコナゾール
  • CYP2D6阻害: パロキセチン、キニジン
  • CYP3A4阻害: イトラコナゾール、クラリスロマイシン、グレープフルーツジュース
現場での注意: チザニジンとフルボキサミンの併用禁忌は、疑義照会で見逃すと致命的な事故につながるポイントです。「1A2阻害といえばフルボキサミン」と即座に結びつけられるようにしておきましょう。