第111回薬剤師国家試験
◆ 問173
体重 60 kg の患者にアミノグリコシド系抗菌薬ゲンタマイシンを静脈内投与したところ、以下の薬物動態パラメータが得られた。(薬物動態パラメータ)
全身クリアランス(CLtot)75.0mL/min、糸球体ろ過速度(GFR)62.5 mL/min、
尿中未変化体排泄率(fe)0.92、血漿タンパク非結合率(fp)0.90
その後、急性腎障害を発症したため、CLtotが 40.0 mL/min に、GFR が27.8 mL/min に、feが 0.85 に低下した。本患者におけるゲンタマイシンのクリアランスに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、急性腎障害の前後でfpは変化しないものとする。
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腎障害前のゲンタマイシンの糸球体ろ過クリアランスは 62.5 mL/min である。
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腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンの腎排泄には尿細管分泌が関与する。
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腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンは尿細管から再吸収されやすい。
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ゲンタマイシンの腎クリアランスは腎障害によって変化しない。
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ゲンタマイシンの腎外クリアランスは腎障害の前後でほぼ一定である。
◆ 問173
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、5
この問題の核心は、腎クリアランス(CLR)と糸球体ろ過クリアランス(CLGF)を比較して、「尿細管分泌」と「再吸収」のどちらが優位かを判定することにあります。「糸球体ろ過量(GFR)にタンパク非結合率(fp)を掛けること」を忘れないのが、計算ミスを防ぐ最大のポイントです。
まず、腎障害前の各数値を整理してみましょう。
1. 糸球体ろ過クリアランス(CLGF)
CLGF = GFR × fp = 62.5 × 0.90 = 56.25 mL/min
2. 腎クリアランス(CLR)
CLR = CLtot × fe = 75.0 × 0.92 = 69.0 mL/min
3. 腎外クリアランス(CLnr)
CLnr = CLtot × (1 − fe) = 75.0 × 0.08 = 6.0 mL/min
CLR(69.0) > CLGF(56.25)となるため、差し引き 12.75 mL/min の分は「尿細管分泌」が関与していることがわかります。CLGF = GFR × fp = 62.5 × 0.90 = 56.25 mL/min
2. 腎クリアランス(CLR)
CLR = CLtot × fe = 75.0 × 0.92 = 69.0 mL/min
3. 腎外クリアランス(CLnr)
CLnr = CLtot × (1 − fe) = 75.0 × 0.08 = 6.0 mL/min
「腎障害前の糸球体ろ過クリアランスは 62.5 mL/min である」は、誤りです。
タンパク結合している薬物は糸球体を通過できないため、GFRの値(62.5)に非結合率 fp(0.90)を掛ける必要があります。正しくは 56.25 mL/min です。これは非常に間違いやすいポイントですので注意しましょう。
「この薬物は、腎障害の有無によらず尿細管分泌が関与する」は、正しい記述です。
腎障害後についても計算すると、CLR は 40.0 × 0.85 = 34.0 mL/min、CLGF は 27.8 × 0.90 = 25.0 mL/min となります。前後ともに CLR > CLGF という関係が維持されているため、一貫して尿細管分泌が関与していると言えます。
「この薬物は、尿細管から再吸収されやすい」は、誤りです。
CLR > CLGF となっている場合は「分泌」が優位であることを示します。もし再吸収が優位であれば、ろ過された量よりも尿中に出る量が減るため、CLR < CLGF になるはずです。
「この薬物の腎クリアランスは、腎障害によって変化しない」は、誤りです。
計算した通り、腎クリアランスは 69.0 mL/min から 34.0 mL/min へと、約半分に減少しています。腎機能の低下に伴い、排泄能力も低下しています。
「この薬物の腎外クリアランスは、腎障害の前後でほぼ一定である」は、正しい記述です。
腎外クリアランスを計算すると、障害前は 75.0 × 0.08 = 6.0 mL/min、障害後は 40.0 × 0.15 = 6.0 mL/min となり、数値が変わっていないことが確認できます。
【試験対策の判定ルール】
- CLR > GFR × fp : 尿細管分泌が関与
- CLR < GFR × fp : 尿細管再吸収が関与
