第111回薬剤師国家試験
◆ 問175
体内動態が線形 1-コンパートメントモデルに従う薬物において、A群に示すパラメータが2倍に変動したとき、B群のパラメータが2 倍になる組合せはどれか。2つ選べ。
◆ 問175
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、5
この問題の核心は、薬物動態の主要な公式を用いて「あるパラメータが2倍になったとき、他のパラメータがどう変化するか」を即座に判定することにあります。公式の中にどの変数が含まれており、どの変数が含まれていないかを見極めることが正解への近道です。
まず、判断の基準となる主要な公式を確認しましょう。
・AUC = (F × Dose) / CL
・Css = R0 / CL
・t1/2 = (0.693 × Vd) / CL
・Css, mean = (F × Dose) / (CL × τ)
「分布容積(Vd)が2倍になると、単回静脈内投与後の血中濃度時間曲線下面積(AUC)が2倍になる」は、誤りです。・Css = R0 / CL
・t1/2 = (0.693 × Vd) / CL
・Css, mean = (F × Dose) / (CL × τ)
AUCを求める公式(AUC = Dose / CL)には、分布容積(Vd)は含まれていません。分布容積が増えると投与直後の血中濃度(C0)は低下しますが、消失半減期が延長するため、最終的なAUCの値は変化しません。AUCに影響を与えるのは、投与量、バイオアベイラビリティ、クリアランスの3点のみです。
「全身クリアランス(CL)が2倍になると、定速静脈内投与時の定常状態血中濃度(Css)が2倍になる」は、誤りです。
公式(Css = R0 / CL)より、Cssはクリアランスに反比例します。したがって、クリアランスが2倍になると、薬物の消失能力が2倍になることを意味するため、定常状態の血中濃度は1/2に低下します。
「消失半減期(t1/2)が2倍になると、定速静脈内投与を開始してから定常状態の50%の血中濃度に到達するまでの時間が2倍になる」は、正しい記述です。
定常状態への到達時間は半減期(t1/2)に完全に比例します。50%到達には1 × t1/2、約95%到達には4〜5 × t1/2の時間がかかります。そのため、半減期が2倍に延びれば、その分だけ各段階に到達するまでの時間も2倍になります。
「吸収速度定数(ka)が2倍になると、単回経口投与後のAUCが2倍になる」は、誤りです。
AUCの公式(AUC = F × Dose / CL)に吸収速度定数(ka)は登場しません。kaが2倍になると、吸収が速くなるため最高血中濃度到達時間(Tmax)が短縮し、最高血中濃度(Cmax)は上昇しますが、吸収される「総量」を示すAUCには影響を与えません。
「バイオアベイラビリティ(F)が2倍になると、繰り返し経口投与時の定常状態における平均血中濃度(Css, mean)が2倍になる」は、正しい記述です。
公式(Css, mean = F × Dose / (CL × τ))において、Fは分子に位置しています。そのため、Fが2倍になれば、血中へ移行する薬物の量も2倍となり、平均血中濃度もこれに比例して2倍になります。
【試験対策の瞬殺テクニック】
「AUC(または平均血中濃度)に影響を与えるのは、投与量(Dose)、バイオアベイラビリティ(F)、クリアランス(CL)の3つだけ」と覚えておきましょう。これさえ知っていれば、選択肢1(Vd)と選択肢4(ka)がAUCに関係ないことを一瞬で見抜くことができます。
