第111回薬剤師国家試験

◆ 問176

体内からの薬物の消失がミカエリス・メンテン式に従うとき、経口投与後の定常状態における平均血中濃度が2 mg/L となる投与量と投与回数の組合せとして、最も適切なのはどれか。1つ選べ。ただし、この薬物のミカエリス定数は4mg/L、最大消失速度は720mg/day、バイオアベイラビリティは100%とする。
111回問176画像1

◆ 問176

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


この問題の核心は、フェニトインのような非線形(Michaelis-Menten)動態を示す薬物において、定常状態では「投与速度 = 消失速度」が成立するという原則を理解しているかにあります。目標とする定常状態血中濃度(Css)を維持するために必要な1日投与量を、消失速度の式から逆算して求めます。

順を追って計算を進めていきましょう。

ステップ1:消失速度(v)を求める公式を立てます
非線形動態の消失速度は以下のミカエリス・メンテン式で表されます。
v = (Vmax × Css) / (KmCss)

定常状態では、この消失速度(v)が「1日の体内への流入速度(R)」と等しくなります。
ステップ2:与えられた数値を代入します
問題文より、以下のパラメータが与えられています。
・最大消失速度(Vmax) = 720 mg/day
・ミカエリス定数(Km) = 4 mg/L
・目標定常状態血中濃度(Css) = 2 mg/L

これらを式に代入して、必要な1日投与量(R)を計算します。
R = (720 × 2) / (4 + 2)
R = 1440 / 6
R = 240 mg/day
ステップ3:選択肢に合う服用方法を選びます
バイオアベイラビリティ(F)は 1.0(100%)であるため、経口投与した 240 mg がそのまま体内に吸収されます。
1日の総投与量が 240 mg となる選択肢を探すと、
「80 mg × 1日3回 = 240 mg」 となり、選択肢5が合致することがわかります。

正解:5 (80 mg × 1日3回)
【実務・試験に役立つ知識:非線形動態の怖さ】
フェニトインは非常に「さじ加減」が難しい薬です。線形動態(通常の薬)であれば投与量を2倍にすれば血中濃度も2倍になりますが、フェニトインのような非線形動態では、消失能力が飽和に近いため、「投与量を少し増やしただけで血中濃度が急上昇する」という現象が起こります。
例えば、この症例で投与量を360 mg/day(1.5倍)に増やすと、血中濃度は計算上 4 mg/L(2倍)になります。このように予測が難しいため、必ずTDM(治療薬物モニタリング)を行って投与量を微調整する必要があります。