第111回薬剤師国家試験

◆ 問177

肝抽出率が 0.8、血中タンパク結合率が 0.9 の薬物の肝クリアランスに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、この薬物の肝臓での消失は、well-stirred model に基づくものとし、肝血流量は 100 L/h とする。
  • 肝クリアランスは肝血流量の変動の影響を顕著に受ける。
  • 肝クリアランスは肝固有クリアランスの変動の影響を顕著に受ける。
  • 肝クリアランスは血中タンパク結合率の変動の影響を顕著に受ける。
  • 肝クリアランスは 80 L/h である。
  • 肝固有クリアランスは8 L/h である。

◆ 問177

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題の核心は、肝抽出率(EH)が高い薬物は、肝血流量の変化がそのままクリアランスに影響する「血流依存型(flow-limited)」であることを理解しているかにあります。また、well-stirred modelの公式を用いて、肝固有クリアランス(CLint)を正確に算出する計算力も求められます。

まず、与えられた数値から肝クリアランス(CLh)を求め、次にモデル式を用いて肝固有クリアランスを導き出します。

1. 肝クリアランス(CLh)の計算
公式:CLh = Qh × EH
CLh = 100 L/h × 0.8 = 80 L/h

2. 肝固有クリアランス(CLint)の計算
well-stirred modelの式に各数値を代入します。
公式:EH = (fu × CLint) / (Qh + fu × CLint)

0.8 = (0.1 × CLint) / (100 + 0.1 × CLint)
0.8 × (100 + 0.1 × CLint) = 0.1 × CLint
80 + 0.08 × CLint = 0.1 × CLint
0.02 × CLint = 80
CLint = 4,000 L/h
「この薬物の肝クリアランスは、肝血流量の影響を顕著に受ける」は、正しい記述です。
肝抽出率(EH)が 0.8 と非常に高いため、この薬物は「血流依存型」に分類されます。このタイプでは、肝臓が薬物を処理する能力(CLint)が血流による供給を上回っているため、肝クリアランスの値はほぼ肝血流量(Qh)に依存して決まります。

「この薬物の肝クリアランスは、肝固有クリアランスの影響を顕著に受ける」は、誤りです。
肝固有クリアランス(CLint = 4,000 L/h)は肝血流量に対して十分に大きいため、多少の変動があっても肝クリアランス(CLh)への影響は限定的です。固有クリアランスの影響を強く受けるのは、EH が低い「能力依存型」の薬物です。

「この薬物の肝クリアランスは 20 L/h である」は、誤りです。
計算により、CLh = 100 × 0.8 = 80 L/h と求められます。

「この薬物の肝クリアランスは 80 L/h である」は、正しい記述です。
上記の計算通り、肝血流量と肝抽出率の積から 80 L/h と算出されます。

「この薬物の肝固有クリアランスは 8 L/h である」は、誤りです。
計算により、CLint = 4,000 L/h と求められます。選択肢の 8 L/h は、計算過程での数値の取り違えと考えられます。

【試験対策のポイント:肝抽出率による分類】
  • EH が高い(目安 0.7 以上): 血流依存型(flow-limited)。代表例はプロプラノロールやリドカインです。心不全などで肝血流量が減ると、クリアランスも低下し、血中濃度が上昇しやすくなります。
  • EH が低い(目安 0.3 以下): 能力依存型(capacity-limited)。肝臓の代謝酵素活性(CLint)やタンパク結合率の変化に影響を受けやすいタイプです。