第111回薬剤師国家試験

◆ 問179

高分子溶液の性質に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 高分子を貧溶媒に溶解した場合、良溶媒に溶解した場合より溶液の粘度が高い。
  • 平均分子量が同等の場合、イオン性高分子の水溶液の粘度は、同濃度の非イオ ン性高分子の水溶液の粘度より高い。
  • イオン性高分子の水溶液に塩を添加すると、高分子の溶解性が向上する。
  • 両イオン性高分子溶液の粘度は、等電点付近で最大となる。
  • 良溶媒の高分子溶液に貧溶媒を添加していくと、コアセルベートを生じる。

◆ 問179

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


この問題の核心は、高分子鎖が「広がっているか、丸まっているか」という状態の変化が、溶液の粘度にどう直結するかを理解することにあります。電荷の反発や溶媒との親和性によって分子の「かさ(有効体積)」が変わり、それが粘度の大小を決定します。

「貧溶媒の方が良溶媒より粘度が高い」は、誤りです。
高分子は、親和性の高い「良溶媒」中では鎖を大きく広げますが、親和性の低い「貧溶媒」中では溶媒を避けるように分子鎖が内側に丸まり(収縮し)ます。分子が丸まってコンパクトになると、溶液中での抵抗が小さくなるため、粘度は低下します。

「イオン性高分子の粘度は非イオン性より高い」は、正しい記述です。
イオン性高分子は、分子鎖の中に同じ符号の電荷(プラス同士やマイナス同士)が並んでいます。これらが互いに電気的に反発し合うため、分子鎖がピンと引き伸ばされた「伸展状態」になります。その結果、分子が占める有効体積が増大し、粘度が高くなります。

「イオン性高分子に塩を添加すると溶解性が向上する」は、誤りです。
イオン性高分子の溶液に塩(電解質)を加えると、電荷が遮蔽(シールド)され、分子鎖同士の反発が弱まって収縮します。これにより粘度が低下するだけでなく、最終的には溶解性が下がり、沈殿を生じる「塩析」という現象が起こります。

「両イオン性高分子の粘度は等電点で最大となる」は、誤りです。
等電点(pI)では、分子内のプラス電荷とマイナス電荷がちょうど釣り合い、分子全体としての中和が起こります。すると、分子内の異なる電荷同士が引きつけ合うため、分子鎖は最も強く収縮し、占有体積が最小になります。したがって、等電点での粘度は最小となります。

「良溶媒の高分子溶液に貧溶媒を添加するとコアセルベートを生じる」は、正しい記述です。
これは相分離現象の一種です。良溶媒に溶けている高分子溶液に貧溶媒などを加えて溶解度を下げると、高分子が濃縮された層(液滴)と、高分子をほとんど含まない層に分かれます。この濃縮された液滴を「コアセルベート」と呼び、マイクロカプセルの製造(液中硬化法など)に応用されています。

【試験対策のポイント:粘度の大小を左右する要因】
粘度は、高分子がどれだけ「場所を取っているか(有効体積)」で決まると考えると分かりやすくなります。
  • 粘度が高くなる条件: 良溶媒(分子が広がる)、イオン性(電荷反発で広がる)。
  • 粘度が低くなる条件: 貧溶媒(分子が丸まる)、等電点(分子内中和で最も丸まる)、塩の添加(電荷遮蔽で丸まる)。
特に「等電点で粘度最小」は、物理薬剤学の頻出ポイントですので確実に押さえておきましょう。