第111回薬剤師国家試験

◆ 問180

下図は、ある界面活性剤水溶液の濃度と表面張力及び難溶性薬物の可溶化量との関係を模式的に示したものである。この図に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
111回問180画像1
  • この界面活性剤は、負吸着を示す。
  • Aは可溶化量を、Bは表面張力を示している。
  • 濃度Xでは、界面活性剤は全てミセルとして存在している。
  • 濃度Xよりも高い濃度では、溶液表面への界面活性剤の吸着量が一定となる。
  • 濃度Yでは、疎水基を外側に、親水基を内側としたミセルが形成される。

◆ 問180

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


この問題の核心は、臨界ミセル濃度(CMC)を境にして、界面活性剤が「液面に吸着する段階」から「ミセルを形成する段階」へと変化することを理解しているかにあります。濃度X(CMC)の前後で表面張力や可溶化量がどのように変化するかをグラフから正確に読み取りましょう。

「界面活性剤は、気液界面において負吸着(negative adsorption)する」は、誤りです。
界面活性剤は、親水基と疎水基の両方を持つため、水と空気の境界(気液界面)に集まりやすい性質を持っています。このように界面に集まって表面張力を低下させる現象は「正吸着」と呼ばれます。逆に、無機塩(NaClなど)のように表面張力を上昇させる現象が「負吸着」です。

「グラフの曲線Aは可溶化量、曲線Bは表面張力を表している」は、正しい記述です。
曲線Aは濃度X(CMC)に達するまでゼロですが、Xを超えると直線的に上昇しています。これはミセルが形成され、その内部に疎水性物質が取り込まれる「可溶化」が始まったことを示しています。一方、曲線Bは濃度Xまで急激に低下し、X以降はほぼ一定となっています。これは界面活性剤の表面吸着が飽和に達したことを示しており、典型的な表面張力の変化パターンです。

「濃度Xにおいて、界面活性剤分子は全てミセルを形成している」は、誤りです。
濃度X(CMC)は、ミセルが形成され始める「境界点(臨界点)」です。この濃度では、水中にバラバラに存在する「単分子(モノマー)」と、新しく形成された「初期ミセル」が平衡状態で共存しています。全てがミセルになっているわけではありません。

「濃度X以上において、気液界面における界面活性剤の吸着量はほぼ一定である」は、正しい記述です。
CMCに達すると、液面への界面活性剤の吸着は飽和状態(ぎっしり詰まった状態)になります。そのため、濃度をさらに高くしても追加の分子はすべてミセル形成に回されるため、液面への吸着量はこれ以上増えず、一定となります。

「濃度X以上において形成されるミセルは、疎水基を外側、親水基を内側に向けている」は、誤りです。
水中(水溶液中)では、水に馴染まない疎水基が水を避けて内側に集まり、水に馴染む親水基が外側(水側)を向くことで、安定なミセルが形成されます。記述にある「疎水基が外側、親水基が内側」という構造は、有機溶媒中などで形成される「逆ミセル」の説明です。

【試験対策のポイント:CMC(濃度X)を境にした変化】
  • 濃度X未満(CMC以下): 表面への吸着が進むため、表面張力は低下します。ミセルがないので可溶化は起こりません。
  • 濃度X以上(CMC以上): ミセルが形成され、可溶化量がアップします。表面吸着は飽和しているため、表面張力はそれ以上変化しません(一定)。
この「低下→一定」と「ゼロ→上昇」という2つのカーブの組み合わせを、イメージとして定着させておきましょう。