第111回薬剤師国家試験

◆ 問181

 懸濁性医薬品に含まれる懸濁粒子の質量基準による積算粒度分布を測定したところ、図1が得られた。
111回問181画像1

 この医薬品懸濁液を細長い容器に移し、均一分散した後に静置し、水面から一定の深さにおける懸濁粒子濃度(懸濁液 10 mL 中の粒子量 mg)を経時的に測定した(図2)。懸濁粒子濃度の経時的変化、すなわち懸濁粒子の沈降挙動を表したグラフとして、最も適当なのはどれか。1つ選べ。
ただし、懸濁粒子は凝集せず、ストークス式(1)に従って沈降するものとする。
111回問181画像2

 また、懸濁粒子濃度は、最大径の粒子が測定面を通過し終わる沈降時間(TS =1時間)で、初期値 12 mg/10 mL から減少し始め、時間の経過とともにグラフ中の黒点を通り、沈降時間 TE でゼロになるものとする。

111回問181画像3
111回問181画像4

◆ 問181

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


この問題の核心は、ストークスの式から導かれる「沈降速度(v)は粒子径(d)の2乗に比例する」という関係を利用して、特定の粒子が沈降し終える時間や、ある時点での残存濃度を正確に計算することにあります。

順を追って解析していきましょう。

ステップ1:粒子径と沈降時間の関係を整理します
ストークスの式より、沈降速度 vvd2 です。一定の距離を沈降するのにかかる時間 t は速度に反比例するため、以下の関係が成り立ちます。
t ∝ 1 / d2

図1より、累積50%径(d50)は 30 μm です。この粒子が沈降するのに 4時間 かかると与えられています。
ステップ2:全粒子が沈降し終える時間(TE)を求めます
最も小さい粒子(最小粒子径)が沈降し終えたとき、液中の濃度はゼロになります。図1より最小粒子径は約 15 μm です。
粒子径が 30 μm から 15 μm へと 1/2 になると、沈降時間は (2)2 = 4倍 かかります。
TE = 4時間 × 4 = 16時間
これにより、グラフの横軸が 16時間 でゼロに到達するものに絞られます。
ステップ3:4時間時点での残存濃度(黒点座標)を求めます
4時間経過したとき、粒子径 30 μm 以上の粒子はすべて沈降し終えています。液中に残っているのは 30 μm 未満の粒子のみです。
図1の累積分布より、30 μm 未満の粒子は全体の 50% 存在します。
初期濃度が 12 mg/10 mL なので、残存濃度 C は以下の通りです。
C = 12 × 0.50 = 6 mg/10 mL
したがって、グラフは (4時間, 6 mg/10 mL) という点を通るはずです。
ステップ4:グラフの形状を判定します
図1を見ると、粒子は 25〜40 μm の範囲に密集しています。
・初期(大きな粒子が沈降する間):大きな粒子は数が少ないため、濃度の減少は緩やかです。
・中期(30 μm 前後の密集帯が沈降する間):多数の粒子が一気に沈降するため、濃度が急激に減少します。
・後期(小さな粒子のみが残る間):再び減少が緩やかになり、ゼロへ近づきます。

この「最初は緩やか、途中で急落、最後は緩やか」という 上凸のS字カーブ を描くのは グラフ5 のみです。
正解:5

【試験対策のポイント】
この種の問題は、以下の3点を確認するだけで確実に正解できます。
  1. TE(終着点)の計算: 最小粒子径が沈降する時間を t ∝ 1/d2 で算出する。
  2. 黒点(中間点)の計算: 指定された時間の粒子径を読み取り、累積分布から残存量を出す。
  3. 密集帯の確認: 粒子の数が多いサイズが沈降する時間帯で、グラフの傾きが最も急になる。
計算結果が選択肢のグラフ上の点と完全に一致するか確認する習慣をつけましょう。