第111回薬剤師国家試験

◆ 問184

 固体薬物を水不溶性コーティング剤で被覆することで、薬物放出を制御した徐放性製剤が設計できる。この製剤を水に接触させると、膜を通じて製剤内部に水が浸入し、溶解した薬物は、膜中を拡散しながら外液中に放出される(図)。
111回問184画像1

 このときの膜の単位面積あたりの薬物透過速度 Jは、(1)の式で表される。
111回問184画像2

 ここで、Q は放出される薬物量、S は薬物放出面積、K は溶液と膜間の分配係数、D は薬物の膜中拡散定数、Cin は薬物層中の溶解薬物濃度、Coutは放出液中の薬物濃度、h は膜厚である。
 本製剤に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
 ただし、放出試験中は、薬物層内には固体薬物が残存しており、Cout はCinと比較して十分低いものとする。
  • マトリックス型製剤である。
  • 薬物は0 次放出される。
  • Cin は経時的に減少する。
  • 薬物放出速度は放出制御膜の厚みに比例する。
  • 球形粒子の場合では、S は粒子半径の2 乗に比例する。

◆ 問184

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


この問題の核心は、リザーバー型製剤(膜制御型製剤)において、薬物がどのような条件下で一定の速度で放出されるか(0次放出)という理論的背景を理解することにあります。膜の内側と外側の濃度差、および膜の性質が放出速度に与える影響を整理しましょう。

まず、膜を透過する薬物のフラックス(単位面積あたりの放出速度) J を表す式は以下の通りです。
J = (1 / S) × (dQ / dt) = DK(Cin - Cout) / h

S:表面積、Q:放出量、t:時間、D:拡散係数、K:分配係数、h:膜の厚み、Cin:膜内側の濃度、Cout:膜外側の濃度)
「この放出機構の説明は、マトリックス型製剤に関するものである」は、誤りです。
図のように、薬物の核(リザーバー)を放出制御膜で包み込む構造はリザーバー型製剤の特徴です。マトリックス型製剤は、高分子などの基剤中に薬物が均一に分散または溶解しているものを指し、その放出挙動は一般にHiguchi(ヒグチ)式に従い、時間の平方根(√t)に比例して放出されます。

「この製剤では、一定時間の0次放出が期待できる」は、正しい記述です。
リザーバー内部に固体薬物が残っている間は、内部濃度(Cin)が飽和溶解度で一定に保たれます。また、放出された薬物が速やかに拡散・除去される環境(シンク条件:Cin >> Cout)であれば、膜内外の濃度差が一定となり、放出速度(dQ/dt)も一定となる「0次放出」が成立します。

「固体薬物が製剤内に残存している間、Cin は経時的に減少する」は、誤りです。
固体薬物が内部に存在し続けている限り、内部の溶液は常に飽和状態にあります。したがって、薬物の溶解度によって規定される Cin は、固体が消失するまで一定の値を示します。

「薬物放出速度は、膜の厚み h に比例する」は、誤りです。
上記の式からわかる通り、放出速度 J は膜の厚み h反比例します。つまり、放出を制御する壁(膜)が厚くなるほど、薬物は通り抜けにくくなり、放出速度は遅くなります。

「製剤が球形粒子の場合、表面積 S は粒子半径の2乗に比例する」は、正しい記述です。
幾何学的な公式より、球の表面積 S は 4πr2r は半径)で求められます。したがって、表面積 S は半径 r2乗に比例します。

【試験対策のポイント:放出制御の比較】
  • リザーバー型: 膜内外の濃度差が一定なら0次放出。膜厚 h に反比例する。
  • マトリックス型: 時間の平方根(t)に比例して放出速度が低下する。
特に「固体薬物が残っている限り内部濃度は一定」という前提が、0次放出を支える重要なポイントであることを押さえておきましょう。