第111回薬剤師国家試験

◆ 問185

尿検査で、尿潜血を伴わないタンパク尿を呈しやすいのはどれか。2つ選べ。
  • 腎盂腎炎
  • 微小変化群
  • ループス腎炎
  • 半月体形成性糸球体腎炎
  • 糖尿病性腎症

◆ 問185

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


この問題の核心は、「尿潜血(血尿)を伴わない」という点にあります。糸球体に激しい炎症や物理的な破壊が起きている場合は赤血球が漏れ出しますが、炎症を伴わず、表面のマイナス電荷が失われるなどの「電荷バリア異常」がメインの場合は、血尿を伴わずにタンパク(主にアルブミン)だけが漏れ出します。このメカニズムの違いを理解しておきましょう。

「腎盂腎炎」は、誤りです。
腎盂腎炎は細菌感染による尿路感染症であり、主な所見は白血球尿や細菌尿です。タンパク尿が出ることもありますが、それは二次的なものであり、通常は発熱や背部痛などの全身症状を伴います。

「微小変化型ネフローゼ症候群」は、正しい選択です。
この疾患では、ポドサイト(足細胞)の足突起が癒合することで、糸球体基底膜の電荷バリア(ヘパラン硫酸などによるマイナス電荷)が障害されます。マイナスの電荷を持つアルブミンが反発されずに漏れ出しますが、糸球体自体に強い炎症や破壊はないため、赤血球は漏れず、尿潜血は陰性となります。小児のネフローゼの多くを占め、ステロイドが著効するのが特徴です。

「ループス腎炎」は、誤りです。
全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う腎炎であり、免疫複合体が糸球体に沈着して激しい炎症を引き起こします。糸球体の構造が物理的に破壊されるため、タンパク尿だけでなく、顕著な血尿(尿潜血陽性)を伴うのが一般的です。

「半月体形成性糸球体腎炎」は、誤りです。
急速進行性糸球体腎炎(RPGN)の代表的な病理像です。糸球体の中に「半月体」と呼ばれる組織が形成されるほど激しい破壊と炎症が起きており、高度な血尿とタンパク尿を認めます。放置すると短期間で腎不全に至る重篤な病態です。

「糖尿病性腎症」は、正しい選択です。
長期の血糖高値により、糸球体基底膜(GBM)の糖化や肥厚が進み、タンパク質の選択的な透過性が障害されます。初期には微量アルブミン尿、進行すると持続的なタンパク尿が出現しますが、これも炎症による破壊ではないため、通常は尿潜血を伴いません。現在は、eGFR(推算糸球体ろ過量)とUACR(尿中アルブミン/クレアチニン比)を組み合わせて重症度を分類しています。

【試験対策のポイント:血尿の有無で分ける】
  • 血尿(−) + タンパク尿(+): 微小変化群、糖尿病性腎症(電荷バリアや膜の変質が主)
  • 血尿(+) + タンパク尿(+): IgA腎症、ループス腎炎、急速進行性糸球体腎炎(炎症による構造破壊が主)
特に糖尿病性腎症において、SGLT2阻害薬やフィネレノンといった新しい薬剤が腎保護目的で使われるようになっている点も、実務と関連して重要です。