第111回薬剤師国家試験

◆ 問187

アルコール依存症の治療に関する記述として、正しいのはどれか。1つ選べ。
  • 飲酒欲求を直接的に抑制するために、シアナミドを投与する。
  • 飲酒時に不快症状を誘発するために、アカンプロサートを投与する。
  • アルコール依存症の症状を緩和するために、メタノールを投与する。
  • 断酒の維持を補助するために、ナルメフェンを投与する。
  • アルコール離脱症状を改善するために、ロラゼパムを投与する。

◆ 問187

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:5


この問題の核心は、アルコール依存症の治療プロセス(離脱期の管理から、断酒・節酒の維持まで)において、各薬剤がどの段階で、どのような目的で使用されるかを正確に区別することにあります。

「シアナミド → 飲酒欲求を直接抑制」は、誤りです。
シアナミドは、アルデヒド脱水素酵素を阻害することで、飲酒時に不快な症状(顔面紅潮、動悸、吐き気など)を引き起こさせる嫌悪療法(抗酒薬)に用いられます。お酒を飲んだら苦しくなるようにする薬であり、飲酒欲求そのものを直接抑える効果はありません。

「アカンプロサートカルシウム → 飲酒時に不快症状を誘発」は、誤りです。
アカンプロサートは、脳内のグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の機能を調節することで、飲酒への強い渇望を抑える断酒維持補助薬です。この薬自体が飲酒時の不快症状を誘発するわけではありません。不快症状を誘発するのは、選択肢1のシアナミドやジスルフィラムです。

「離脱症状の緩和にメタノール」は、絶対禁忌です。
メタノールは体内で代謝されると毒性の強いホルムアルデヒドやギ酸になり、失明や死亡に至る危険がある猛毒です。治療に用いられることは絶対にありません。

「断酒の維持にナルメフェン塩酸塩水和物」は、誤りです。
ナルメフェンは、飲酒による多幸感を抑えることで飲酒量を減らすことを目的とした節酒(飲酒量低減)補助薬です。「お酒を完全にやめる(断酒)」ためではなく、「飲む量を減らす」ためのサポートとして使用されます。

「離脱症状(振戦、幻覚、自律神経亢進)の緩和にロラゼパム」は、正しい記述です。
ロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤は、アルコールと共通の受容体(GABAA受容体)を介して作用するため、アルコール離脱時のけいれん、震え、幻覚、不安などの症状を和らげるのに有効です。特にロラゼパムは、肝臓での代謝が単純なグルクロン酸抱合であるため、肝機能が低下していることが多い依存症患者さんにおいても比較的安全に使用しやすいという特徴があります。

【試験対策のポイント:アルコール治療薬の整理】
以下の4つの役割をセットで覚えましょう。
  • 嫌悪療法(抗酒薬): シアナミド、ジスルフィラム(飲んだら苦しくなる)
  • 断酒維持: アカンプロサート(飲みたい気持ちを抑える)
  • 節酒補助: ナルメフェン(飲む量を減らす)
  • 離脱症状治療: ロラゼパム、ジアゼパム(離脱時のパニックや震えを抑える)