第111回薬剤師国家試験

◆ 問190

心房細動の治療に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 除細動及び洞調律維持を目的として、リドカインが用いられる。
  • 心拍数調節を目的として、アドレナリン β 受容体遮断薬が用いられる。
  • WPW(Wolff-Parkinson-White)症候群を併発している場合には、ジゴキシン による心拍数調節が推奨される。
  • 非薬物療法として、カテーテルアブレーションが再発予防に用いられる。
  • 脳塞栓症の合併予防には、主にアスピリンによる抗血小板療法が用いられる。

◆ 問190

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


この問題の核心は、心房細動治療の4本柱(レートコントロール、リズムコントロール、脳塞栓予防、アブレーション)の使い分けを理解しているかにあります。特に、合併症の有無によって使用してはいけない薬剤(禁忌)を判別できるかが重要なポイントです。

誤り:1
「リドカインを用いて除細動を行う」は、誤りです。
リドカインはVaughan Williams分類のⅠb群に属する抗不整脈薬ですが、主に心室性の不整脈(心室頻拍:VTや心室細動:Vf)に対して用いられます。心房筋への効果は乏しいため、心房細動の除細動や洞調律の維持には使用されません。心房細動のリズムコントロールには、Ⅰc群(フレカイニドなど)やⅢ群(アミオダロンなど)が用いられます。

正解:2
β遮断薬を用いて心拍数調節(レートコントロール)を行う」は、正しい記述です。
心房細動そのものを止めるのではなく、房室結節の伝導を抑制して心室に伝わる電気信号を減らし、心拍数を適切に管理する戦略をレートコントロールと呼びます。β遮断薬や非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)がその代表的な薬剤です。

誤り:3
「WPW症候群を合併している場合、ジゴキシンが第一選択となる」は、誤り(禁忌)です。
WPW症候群では正常な伝導路のほかに「副伝導路」が存在します。ここでジゴキシンやカルシウム拮抗薬(ベラパミルなど)を使用すると、房室結節の伝導がブロックされることで、電気信号が副伝導路を通りやすくなってしまいます。その結果、心室応答が爆発的に増加し、偽性心室頻拍から致死的な心室細動(Vf)へ移行する危険があるため、これらの薬剤は禁忌とされています。

正解:4
「カテーテルアブレーション(肺静脈隔離術)が再発予防に有効である」は、正しい記述です。
心房細動の多くは、肺静脈入口部からの異常な電気信号がトリガーとなって発生します。アブレーションによってこの部分を電気的に隔離することで、心房細動の発生を根本から抑えることができ、特に発作性心房細動の再発防止に高い効果を発揮します。

誤り:5
「脳塞栓症の予防にアスピリンを用いる」は、誤りです。
心房細動に伴う血栓は、心房内の血流が滞ることで形成されるため、抗血小板薬(アスピリンなど)ではなく、抗凝固薬による予防が必須です。現在はDOAC(直接経口抗凝固薬)が第一選択とされており、次いでワルファリンが検討されます。アスピリンは塞栓予防効果が不十分であるため、現在のガイドラインでは推奨されていません。

【試験対策のポイント:心房細動治療の整理】
  • レートコントロール: 心拍数を抑える(β遮断薬、非DHP系Ca拮抗薬、ジゴキシン)。
  • リズムコントロール: 洞調律に戻す・維持する(Ⅰc群、Ⅲ群、アブレーション)。
  • 脳塞栓予防: 血栓を防ぐ(DOAC > ワルファリン)。※CHADS2スコアなどで評価。
重要: WPW症候群合併時の「ジゴキシン・ベラパミル・β遮断薬」の投与は、副伝導路経由の伝導を促進させてしまうため非常に危険です。実務実習や国試でも頻出の禁忌事項ですので、必ず覚えておきましょう。