第111回薬剤師国家試験

◆ 問191

20 歳女性。3 ケ月前から動悸、発汗、手の振戦及び4 kg の体重減少を認めた。近医を受診したところ、体温は 37.2 ℃ であり、均一で弾力性に富む甲状腺腫大を指摘された。血液検査では、遊離チロキシン(FT4)2.8 ng/dL であり、抗チログロブリン抗体が陽性であった。本症例で認められることが多い他の血液検査所見として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • LDL コレステロール高値
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)高値
  • クレアチンキナーゼ(CK)高値
  • アルカリホスファターゼ(ALP)高値
  • 抗 TSH 受容体抗体陽性

◆ 問191

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4、5


この問題の核心は、バセドウ病において甲状腺ホルモン(FT4)が過剰になることで引き起こされる「ネガティブフィードバック」と、全身の「代謝亢進」による影響を理解しているかにあります。特に、甲状腺機能の「亢進」と「低下」で各検査値がどのように逆転するかを整理しておくことが重要です。

誤り:1
「LDLコレステロール高値」は、誤りです。
甲状腺機能亢進症では、全身の代謝が活発になることでLDLコレステロールの代謝(分解)も促進されます。その結果、血中のLDLコレステロール値は低値を示します。逆に、LDLコレステロールが高値になるのは「甲状腺機能低下症」の典型的な所見です。

誤り:2
「TSH高値」は、誤りです。
甲状腺から分泌されるホルモン(FT3やFT4)が過剰になると、脳の下垂体に「もうホルモンを出さなくて良い」という指令が伝わります(ネガティブフィードバック)。その結果、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌は抑制され、測定限界以下の低値となります。

誤り:3
「CK(クレアチンキナーゼ)高値」は、誤りです。
CKの上昇は、骨格筋のミオパチー(筋肉の障害)を伴う「甲状腺機能低下症」で見られる特徴的な所見です。亢進症においては、通常は低値から正常範囲内にとどまります。

正解:4
「ALP(アルカリホスファターゼ)高値」は、正しい記述です。
甲状腺ホルモンが過剰になると、骨の代謝回転(骨リモデリング)が異常に亢進します。これにより骨形成に関わる骨型ALPの分泌が増加するため、血液検査上のALP値が上昇します。高齢者では骨粗鬆症のリスクにもつながる病態です。

正解:5
「TRAb(TSH受容体抗体)陽性」は、正しい記述です。
TRAbは、下垂体から出るTSHの代わりに、甲状腺にあるTSH受容体を勝手に刺激し続ける自己抗体です。これが原因で甲状腺ホルモンが過剰に作られるのがバセドウ病の本態であり、TRAbはバセドウ病の確定診断に不可欠な特異的マーカーです。

【試験対策のまとめ:甲状腺機能と検査値の逆転ペア】
以下の対比表をイメージとして覚えておきましょう。
検査項目機能亢進症(バセドウ病)機能低下症(橋本病など)
TSH低下(フィードバック)上昇
FT4上昇低下
LDL-C低下(代謝促進)上昇(代謝遅延)
CK正常 〜 低下上昇(ミオパチー)
ALP上昇(骨代謝亢進)低下 〜 正常