第111回薬剤師国家試験
◆問198-199
60歳女性。統合失調症にて入院中。ハロペリドールと以下の併用薬による治療を受けていたが、手の震えなどの訴えが患者からあった。医師、薬剤師はアカシジアを疑った。医師との合同カンファレンスでハロペリドールをパリペリドン経口徐放錠(PAL)に切り替える方針となった。合同カンファレンス後、医師からPAL6mg、1日1回就寝前の処方を検討しているとの連絡があった。(併用薬)
酸化マグネシウム錠330mg 1回1錠(1日2錠)
1日2回 朝夕食後
ビペリデン塩酸塩錠1mg 1回1錠
むずむず、流涎あるとき 1日3回まで
(合同カンファレンス直前検査値)
AST 16 IU/L、ALT 13 IU/L、血清クレアチニン0.66mg/dL、
空腹時血糖 115 mg/dL、HbA1c 6.2%、CCr 72mL/min
(PALの添付文書に記載された情報)
注)本剤は、浸透圧を利用した放出制御システム(OROS)を応用した、パリペリドンの放出制御型の徐放錠である。規格は3mg、6mg、9mg。
◆ 問198
◆ 問199
OROSは半透膜でコートされており、浸透圧による水の流入に伴うプッシュ層の膨潤を利用した徐放性薬物放出システムである。浸透圧によるプッシュ層への水の流入量を計算するモデルとして、大気圧(1.0×105Pa)下、27℃でNa2SO4水溶液と純水を半透膜で仕切られたU字管に同量ずつ入れた。その後、図1のように平衡に達したときの界面の差がh cm、Na2SO4水溶液の濃度が0.010mol/Lとなった。0.010mol/LNa2SO4水溶液と純水の密度は、ともに27℃で1.0g/mLとする。また、同条件下では水銀柱の高さが図2のように76cmであった。なお、界面の差h cmを水銀柱の高さx cmに換算するには
で求められることがわかっている。h cm の値に最も近いのはどれか。1つ選べ。
なお、気体定数は 8.3 J/K・mol とする。

-
0.10 cm
-
0.80 cm
-
2.4 cm
-
5.3 cm
-
8.0 cm
◆ 問198
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題の核心は、リスペリドンの活性代謝物であるパリペリドン(徐放錠)へ切り替える際に、製剤特有の服用タイミングや、患者さんの腎機能(CCr)に基づいた初期用量を正しく判断できるかにあります。
正解:1
「服用は朝食後とする」は、正しい記述です。
パリペリドン経口徐放錠の添付文書では、1日1回朝食後に服用することが定められています。これは食事の影響により血中濃度が変動することを避けるためであり、一貫した条件下で服用することが重要です。
誤り:2
「統合失調症の悪化に備えリスペリドンを追加する」は、誤りです。
パリペリドンは、リスペリドンの主要な活性代謝物そのものです。そのため、両者を併用すると作用が重複し、過量投与による副作用のリスクが高まる恐れがあります。添付文書上でも、リスペリドン含有製剤との併用は避けるよう記載されています。
正解:3
「切り替えは低用量の 3 mg から開始する」は、正しい記述です。
本症例の患者さんのクレアチニンクリアランス(CCr)は 72 mL/min であり、これは「軽度の腎機能障害(50 mL/min 以上 80 mL/min 未満)」に該当します。この区分におけるパリペリドンの開始用量は 3 mg とされているため、この提案は適切です。
誤り:4
「酸化マグネシウムは他剤に変更する」は、誤りです。
本設問において、酸化マグネシウムを優先して変更すべき明確な根拠はありません。まずは治療の主軸となる抗精神病薬の用法(朝食後)や、腎機能に見合った開始用量の適正化を最優先で提案すべきです。
誤り:5
「服用開始後2日目に1日用量の評価を行う」は、誤りです。
パリペリドンは反復投与を開始してから血中濃度が一定になる(定常状態に達する)まで、約5日間かかるとされています。そのため、効果の判定や増量の検討を行う場合は、少なくとも5日間以上の間隔を空ける必要があります。開始2日目での評価は時期尚早です。
【試験対策のポイント:パリペリドンの特徴】
- 代謝の関係: リスペリドンの活性代謝物。併用は「実質的な二重投与」となるため回避します。
- 腎排泄型: 腎機能(CCr)によって開始用量や維持量が細かく規定されています。
- 徐放性製剤: オロス(OROS)という技術を用いた製剤であり、殻が便中にそのまま出てくる(ゴーストピル)ことがありますが、成分は放出済みであるため問題ありません。
◆ 問199
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、2、3、4、5
この問題の核心は、電解質溶液の浸透圧 π を求める際に、粒子数(van't Hoff 因子 i)を考慮し、かつ得られたエネルギー単位(J/L)を圧力単位(Pa)へ正しく変換できるかにあります。
順を追って計算式を確認していきましょう。
ステップ1:van't Hoff 因子(i)を確認します
溶質の硫酸ナトリウム(Na2SO4)は、水溶液中で以下のように電離します。
Na2SO4 → 2Na+ + SO42-
1分子から3個の粒子が生じるため、van't Hoff 因子は i = 3 となります。
溶質の硫酸ナトリウム(Na2SO4)は、水溶液中で以下のように電離します。
Na2SO4 → 2Na+ + SO42-
1分子から3個の粒子が生じるため、van't Hoff 因子は i = 3 となります。
ステップ2:浸透圧(π)を算出します
公式 π = iCRT に数値を代入します。
(C = 0.010 mol/L, R = 8.3 J/(K⋅mol), T = 300 K)
π = 3 × 0.010 × 8.3 × 300 = 74.7 J/L
公式 π = iCRT に数値を代入します。
(C = 0.010 mol/L, R = 8.3 J/(K⋅mol), T = 300 K)
π = 3 × 0.010 × 8.3 × 300 = 74.7 J/L
ステップ3:単位を Pa(パスカル)に変換します
ここで非常に重要なのが単位変換です。1 J/L = 1000 Pa であるため、以下のようになります。
π = 74.7 × 1000 = 7.47 × 104 Pa
ここで非常に重要なのが単位変換です。1 J/L = 1000 Pa であるため、以下のようになります。
π = 74.7 × 1000 = 7.47 × 104 Pa
ステップ4:水柱の高さ(h)を求めます
問題文の条件(1.0 × 105 Pa ≈ 76 cmHg)を用いて、まず水銀柱の高さ(x)を求めます。
x = 76 × (7.47 × 104 / 1.0 × 105) = 56.8 cm
次に、水銀と水の密度比(x = h/14)から水柱の高さ h を算出します。
h = 14 × 56.8 = 795 cm ≈ 8.0 m
問題文の条件(1.0 × 105 Pa ≈ 76 cmHg)を用いて、まず水銀柱の高さ(x)を求めます。
x = 76 × (7.47 × 104 / 1.0 × 105) = 56.8 cm
次に、水銀と水の密度比(x = h/14)から水柱の高さ h を算出します。
h = 14 × 56.8 = 795 cm ≈ 8.0 m
【重要:この問題の特異点について】
正しく計算すると結果は 約 8.0 m(800 cm) となります。しかし、選択肢の最大値は 8.0 cm であり、単位が2桁異なっています。これは出題側が「J/L = 1000 Pa」の換算(1000倍)を失念したためのミスである可能性が高いと指摘されています。そのため、現時点では「正解なし(廃問)」または「全員正解」として扱われるべき議論のある問題です。
正しく計算すると結果は 約 8.0 m(800 cm) となります。しかし、選択肢の最大値は 8.0 cm であり、単位が2桁異なっています。これは出題側が「J/L = 1000 Pa」の換算(1000倍)を失念したためのミスである可能性が高いと指摘されています。そのため、現時点では「正解なし(廃問)」または「全員正解」として扱われるべき議論のある問題です。
【試験対策のポイント:浸透圧計算の鉄則】
- 電解質に注意: Na2SO4 のように電離する物質は、必ず粒子数 i を掛けてください。
- 単位変換の罠: R = 8.3 J/(K⋅mol) を使う場合、算出される π の単位は J/L です。これを 1000倍 して Pa に直すプロセスが、合否を分けるポイントになります。
