第111回薬剤師国家試験

◆問200-201

73 歳男性。脳梗塞後片麻痺の後遺症がある。最近、動悸や息切れを感じて近医を受診し、急性冠症候群の疑いで総合病院を紹介された。トレッドミル、自転車エルゴメータは困難であったことから、精査目的で、塩化タリウム(201Tl)注射液(1回 74 MBq)及びアデノシン注射液を使用した心筋血流シンチグラフィを行うこととなった。

◆ 問200

アデノシンの作用に影響を及ぼすため、この心筋血流シンチグラフィ実施前日の夕方から服用を避けるべき薬物はどれか。2つ選べ。
  • ワルファリン
  • チザニジン
  • テオフィリン
  • プレガバリン
  • ジピリダモール

◆ 問201


◆ 問200

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題の核心は、心筋血流シンチグラフィで「薬剤負荷」として用いられるアデノシンの生理作用(冠血管拡張)に対し、阻害的に働く薬剤と増強的に働く薬剤を正確に区別することにあります。検査の正確性と患者さんの安全を守るために必須の知識です。

誤り:1・2・4
(これらの選択肢の薬剤は、アデノシン受容体やその代謝プロセスに直接的な影響を及ぼさないため、検査結果を著しく歪める要因とはなりません。)

正解:3
「テオフィリン」は、アデノシン受容体の拮抗薬として働くため、正解です。
テオフィリンは、アデノシンが結合する受容体をブロックしてしまいます。そのため、検査のためにアデノシンを投与しても、本来期待される冠血管の拡張作用が十分に現れず(減弱し)、虚血の診断が正しく行えなくなる「偽陰性」の原因となります。検査前には一定期間の休薬が必要です。

正解:5
「ジピリダモール」は、アデノシンの血中濃度を上昇させる作用があるため、正解です。
ジピリダモールは、アデノシンが細胞内へ取り込まれるのを阻害する働きがあります。これにより、投与したアデノシンの血中濃度が過度に高まってしまい、強力すぎる血管拡張による著しい血圧低下や副作用のリスクが高まります。アデノシン投与前の併用は避けるべき薬剤です。

【試験対策のポイント:アデノシン負荷の阻害と増強】
アデノシン負荷試験における相互作用は、以下の2点をセットで覚えましょう。
  • テオフィリン・カフェイン等(メチルキサンチン類): 受容体拮抗により、アデノシンの効き目を「弱める」
  • ジピリダモール: 取り込み阻害により、アデノシンの効き目を「強めすぎる」
特にテオフィリンによる「検査の空振り(血管が広がらない)」は、臨床現場での疑義照会でも非常に重要なポイントとなります。

◆ 問201

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題の核心は、心筋シンチグラフィなどで頻用される放射性タリウム(201Tl)が、生体内でどのようなイオンとして振る舞うか、またその壊変様式(軌道電子捕獲)に付随する物理現象を正しく理解しているかにあります。

誤り:1
「血中で 201Tl+ は Na+ と似た挙動を示す」は、誤りです。
タリウムイオン(201Tl+)は、イオン半径がカリウムイオン(K+)に近いため、生体内では K+ と類似した挙動を示します。心筋細胞の細胞膜にある Na+, K+-ATPase によって、K+ と同様に細胞内に取り込まれる性質を利用して、心筋血流の評価に用いられます。

誤り:2
「壊変により原子番号が1増える」は、誤りです。
201Tl は軌道電子捕獲(EC:Electron Capture)という様式で壊変します。これは原子核が自身の軌道電子を取り込み、陽子が中性子に変化する反応です。陽子の数が1つ減るため、原子番号は1減少します。

正解:3
「シングルフォトン放出核種である」は、正しい記述です。
201Tl は、EC壊変に伴ってガンマ線を放出します。PET(陽電子放出断層撮影)で用いられるポジトロン核種(消滅放射線として2本の光子を出す)とは異なり、1本の光子(シングルフォトン)を出すため、SPECT(単一光子放射断層撮影)用の核種として利用されます。

誤り:4
「74 MBq は 1 分間に 74 個の原子核が壊変することを表す」は、誤りです。
ベクレル(Bq)の定義は「1 間に 1 個の原子核が壊変すること」です。したがって 74 MBq は、1 秒間に 74 × 106(7400万)個の原子核が壊変している状態を指します。単位の定義(秒か分か)を混同しないようにしましょう。

正解:5
「半減期が 3 日であるとき、6 日後の放射能は 18.5 MBq である」は、正しい記述です。
半減期が 3 日の場合、6 日後は 2 半減期が経過したことになります。放射能は 1 半減期ごとに半分になるため、2 半減期後には以下のようになります。
74 MBq × (1/2)2 = 74 × 1/4 = 18.5 MBq

【試験対策のポイント:放射性核種の整理】
  • 201Tl : K+ 類似、EC壊変(原子番号 -1)、SPECT用。
  • 99mTc : 最も頻用されるSPECT用核種。半減期 6 時間。
  • 18F : ポジトロン核種(β+壊変)、PET用。
特に「Bq = 個/秒」という定義や、半減期の累乗計算は計算問題の基礎ですので、確実にマスターしておきましょう。