第111回薬剤師国家試験

◆問204-205

60歳女性。近医にて3年前から2型糖尿病、高血圧症、昨年から変形性左膝関節症と診断され、以下の処方1~3の薬剤で治療している。今年、脳ドックを受けたところ脳腫瘍の疑いを指摘された。通常のMRI検査を実施した後、さらに精査目的でガドテル酸メグルミン注射液を用いた造影MRI検査を総合病院に入院して行うこととなった。また、貧血予防でサプリメント(鉄)を2年間継続的に服用している。服薬アドヒアランスに問題ないことから、入院中は処方1~3とサプリメント(鉄)は自己管理となった。

(処方1)
アムロジピン錠5mg
1回1錠(1日1錠)
シタグリプチンリン酸塩錠50mg  1回1錠(1日1錠)
                1日1回 朝食後 28日分

(処方2)
メトホルミン塩酸塩錠250mg  1回1錠(1日2錠)
               1日2回 朝夕食後 28日分

(処方3)
ロキソプロフェンNaテープ50mg(7×10cm非温感) 4袋(7枚/袋)
                     1回1枚 左膝に貼付

(造影MRI検査前日の検査値)
血圧143/83 mmHg、AST 34 IU/L、ALT 34 IU/L、γ-GTP 43 IU/L、
eGFR 54 mL/min/1.73 m2、HbA1c7.0%

◆ 問204


◆ 問205

病棟薬剤師が造影 MRI 検査前日に患者に説明する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • アムロジピン錠を検査当日休薬してください。
  • サプリメント(鉄)は検査当日摂取しないでください。
  • メトホルミン塩酸塩錠は検査当日休薬してください。
  • シタグリプチンリン酸塩錠は前日から休薬してください
  • ロキソプロフェン Na テープは検査当日剥がす必要ありません。

◆ 問204

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題の核心は、MRI検査の基礎となる核磁気共鳴(NMR)の物理現象と、造影剤が画像コントラストを向上させるメカニズムを正確に理解することにあります。特に「放射性医薬品」との混同や、緩和時間の「延長・短縮」といった引っかけに注意が必要です。

正解:1
「プロトンは外部磁場で2つのエネルギー準位に分裂する」は、正しい記述です。
プロトン(水素原子核 1H)は「スピン」という磁気的な性質を持っています。外部から強い静磁場をかけると、スピンが磁場と同じ向き(低エネルギー状態)と逆の向き(高エネルギー状態)の2つに分かれます。これをゼーマン分裂(ゼーマン効果)と呼びます。

誤り:2
「ラーモア周波数より高い周波数のラジオ波を照射する」は、誤りです。
核磁気共鳴を起こすためには、外部から照射するラジオ波(電磁波)の周波数が、プロトンの回転速度であるラーモア周波数と全く同じである必要があります。この一致が「共鳴条件」であり、周波数が高すぎても低すぎてもエネルギーの吸収(励起)は起こりません。

誤り:3
「MRI用造影剤は放射性医薬品である」は、誤りです。
MRIは磁場と電波を利用する検査であり、放射線は使用しません。したがって、造影剤も放射線を出す物質ではなく、磁性に富む金属(ガドリニウムなど)が用いられます。放射性医薬品を用いるのは、PET検査やSPECT検査といった核医学検査です。

正解:4
「造影剤はGd3+のキレート化合物である」は、正しい記述です。
ガドリニウムイオン(Gd3+)は強い常磁性を持ちますが、そのままでは毒性が強いため、安全に使用できるようにガドテル酸メグルミン(Gd-DOTA)などのキレート化合物として製剤化されています。

誤り:5
「造影剤はプロトンの緩和時間を延長させる」は、誤りです。
MRI用造影剤の役割は、周囲にあるプロトンの緩和時間を短縮させることにあります。特にT1緩和時間を短縮させることで、目的部位の信号強度が強まり、画像上で白く光るような鮮明なコントラストが得られます。

【試験対策のポイント:MRIと造影剤のまとめ】
  • 共鳴: 照射するラジオ波の周波数 = ラーモア周波数
  • 造影剤の正体: 常磁性体(ガドリニウム等)であり、非放射性
  • 造影剤の作用: 緩和時間を短縮して画像を強調する
実務問題の問205でも触れられていますが、ヨード造影剤と異なり、糖尿病治療薬(メトホルミン)を原則休薬する必要がない点も合わせて押さえておきましょう。

◆ 問205

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、5


この問題の核心は、MRIで使用されるガドリニウム造影剤の特性を理解し、ヨード造影剤(CT用)の注意点と混同せずに、画像への影響や患者さんの安全(熱傷防止)を適切に管理できるかにあります。

誤り:1
「アムロジピンを検査当日休薬する」は、誤りです。
アムロジピンなどの降圧薬を、造影MRI検査のために休薬する必要はありません。通常通り服用を継続していただきます。

正解:2
「サプリメント(鉄)は当日摂取しないよう説明する」は、正しい記述です。
経口の鉄剤や鉄分を含むサプリメントは、磁性を持つためMRIの画像に「アーチファクト(画像上の乱れ・ノイズ)」を生じさせる可能性があります。検査部位や目的にもよりますが、正確な診断を妨げないよう、当日の摂取は控えていただくのが適切です。

誤り:3
「メトホルミンを検査当日に休薬するよう説明する」は、誤りです。
メトホルミンなどのビグアナイド系糖尿病薬の休薬が強く推奨されるのは、ヨード造影剤を使用する検査(CTなど)です。今回はガドリニウム造影剤を用いたMRI検査であり、メトホルミンをルーチンで休薬する根拠はありません。ヨード造影剤の注意点と混同しやすいため、注意が必要です。

誤り:4
「シタグリプチンを前日から休薬するよう説明する」は、誤りです。
DPP-4阻害薬であるシタグリプチンについても、検査のために休薬する必要はありません。

正解:5
「ロきそプロフェンNaテープは、剥がす必要がないと説明する」は、正しい記述です。
ロきそプロフェンNaテープは金属成分を含まないため、MRI検査時に貼ったままでも問題ありません。ただし、一部の貼付剤(ニコチンパッチ、一部の湿布薬、ニトログリセリン経皮吸収型製剤など)には、支持体にアルミニウムなどの導電性金属が含まれているものがあり、そのまま検査を受けると誘導起電力により熱傷を引き起こす危険があります。そのため、検査前には必ず製品ごとに金属が含まれていないかを確認することが重要です。

【試験対策のポイント:MRIとCTの注意点の違い】
  • ヨード造影剤(CT): メトホルミン併用による乳酸アシドーシスリスクに注意が必要(原則48時間の休薬)。
  • ガドリニウム造影剤(MRI): メトホルミンの休薬は通常不要。ただし、重度の腎障害がある場合は腎性全身性線維症(NSF)のリスクに注意。
【実務上の留意点:貼付剤の確認】
PMDAからも注意喚起が出されていますが、MRI室に持ち込む貼付剤の金属有無の確認は必須です。「金属を含まない」と判断されたもの以外は、熱傷防止の観点から原則として検査前に剥がしていただく運用が一般的です。