第111回薬剤師国家試験
◆問212-213
34歳男性。運送業でトラックを運転している。毎年、春先になると鼻の調子が悪くなっていたが、特に薬は使用していなかった。今年も2月末から症状が出始めたが、3月に入ると悪化してきたため、一般用医薬品を求めて薬局を訪れた。以下は、男性と対応した薬剤師との会話である。
男性 :1週間前からくしゃみと透明な鼻水が出て、数日前から鼻がつまっています。車の運転に支障が出ないように、眠くならない薬を使いたいのですが、どの薬がお勧めですか。
薬剤師:点鼻薬がありますが、いかがですか。
男性 :点鼻薬は苦手なので、飲み薬はありませんか。
薬剤師:飲み薬でしたらこちらのロラタジン錠又は「 ア 」はいかがですか。
◆ 問212
◆ 問213
薬剤師の提案を受け、男性は服用回数が少なく、運転に影響が少ないロラタジン錠を購入することとした。ロラタジンは、シトクロムP450(CYP)による酸化を受けて薬効を示すAに変換される。
この代謝反応において生成する化合物Bとして、適切なのはどれか。1つ選べ。

◆ 問212
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3
この問題の核心は、患者さんの職業が「トラック運転手」であることを踏まえ、眠気や集中力の低下といった副作用が極めて少ない薬剤を適切に選択できるかにあります。アレルギー性鼻炎の治療において、安全な業務遂行をサポートするための実践的な知識が求められます。
正解:3(フェキソフェナジン塩酸塩)
運転業務に従事する患者さんの場合、眠気や注意力の低下(インペアード・パフォーマンス)を引き起こしにくい第2世代抗ヒスタミン薬の選択が必須となります。フェキソフェナジン塩酸塩は、脳内への移行性が非常に低く、添付文書上も「自動車の運転等」に関する制限(禁止や注意喚起)の記載がない数少ない薬剤の一つです。したがって、この症例において最も適切な選択となります。
誤り:1・2・4・5
他の選択肢に含まれる抗ヒスタミン薬は、第2世代であっても、添付文書上で「自動車の運転等に注意すること」あるいは「従事させないこと」といった注意喚起や制限がなされています。特にプロのドライバーであるトラック運転手に対しては、リスク回避の観点からこれらの薬剤を第一選択とすることは不適切です。
【試験対策・実務のポイント:運転者への薬剤選択】
アレルギー性鼻炎の患者さんが「運転をする」と申し出た場合、以下の2つの薬剤がベストチョイスとなります。
アレルギー性鼻炎の患者さんが「運転をする」と申し出た場合、以下の2つの薬剤がベストチョイスとなります。
- フェキソフェナジン塩酸塩: 脳内ヒスタミン受容体占有率が極めて低く、運転制限の記載がありません。
- ロラタジン: フェキソフェナジンと同様に、運転に関する制限が添付文書に記載されていません。
◆ 問213
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:5
この問題の核心は、ロラタジンのエトキシカルボニル基が薬物代謝酵素(CYP)によってどのように代謝(脱アルキル化)され、活性体であるデスロラタジンに変化するのか、その化学的なプロセスを順を追って理解することにあります。
ロラタジンの構造のうち、置換基の部分を一般化して R−NH−COOCH2CH3(N-エトキシカルボニル基)として考えると、以下のような3段階の反応が進みます。
正解:5(アセトアルデヒド)
副生成物 B として生成されるのは、アセトアルデヒドです。反応の詳細は以下の通りです。
1. α位の水酸化(CYPによる反応)
まず、CYPによってエトキシ基の酸素(O)に隣接する炭素(α位のCH2)が水酸化されます。これにより、不安定なヘミアセタール様の中間体が生じます。
R−NH−COO−CH2CH3 → R−NH−COO−CH(OH)CH3
2. 中間体の崩壊(O-脱アルキル化)
この中間体は非常に不安定なため、C−O結合が切断されます。このとき、アセトアルデヒド(CH3CHO)が副生成物 B として脱離し、カルバミン酸(R−NH−COOH)が生成されます。
R−NH−COO−CH(OH)CH3 → R−NH−COOH + CH3CHO
3. 脱炭酸反応
生成したカルバミン酸は自然に二酸化炭素(CO2)を放出して、アミンへと変化します。これが活性体 A であるデスロラタジン(R−NH2)に相当します。
R−NH−COOH → R−NH2 + CO2
誤り:1・2・3・4まず、CYPによってエトキシ基の酸素(O)に隣接する炭素(α位のCH2)が水酸化されます。これにより、不安定なヘミアセタール様の中間体が生じます。
R−NH−COO−CH2CH3 → R−NH−COO−CH(OH)CH3
2. 中間体の崩壊(O-脱アルキル化)
この中間体は非常に不安定なため、C−O結合が切断されます。このとき、アセトアルデヒド(CH3CHO)が副生成物 B として脱離し、カルバミン酸(R−NH−COOH)が生成されます。
R−NH−COO−CH(OH)CH3 → R−NH−COOH + CH3CHO
3. 脱炭酸反応
生成したカルバミン酸は自然に二酸化炭素(CO2)を放出して、アミンへと変化します。これが活性体 A であるデスロラタジン(R−NH2)に相当します。
R−NH−COOH → R−NH2 + CO2
これらの選択肢に挙げられている「ギ酸エチル」「ジメチルカーボネート」「カルバミン酸エチル」「エタノール」などは、この代謝経路において副生成物として生じることはありません。特にエタノールと混同しやすいですが、α位が酸化(水酸化)されるプロセスを経るため、アルコールではなくアルデヒドが生成するのが一般的です。
【試験対策のポイント:脱アルキル化の基本パターン】
薬物の代謝において、窒素(N)や酸素(O)に結合したアルキル基が外れる際、「α位が水酸化される → 不安定な中間体ができる → アルデヒドが脱離する」という流れは非常に頻出のパターンです。
薬物の代謝において、窒素(N)や酸素(O)に結合したアルキル基が外れる際、「α位が水酸化される → 不安定な中間体ができる → アルデヒドが脱離する」という流れは非常に頻出のパターンです。
- メチル基(−CH3)が外れる場合:ホルムアルデヒド(HCHO)が生成。
- エチル基(−CH2CH3)が外れる場合:アセトアルデヒド(CH3CHO)が生成。
