第111回薬剤師国家試験
◆問214-215
52歳男性。身長174cm、体重86kg。仕事の都合で夕食の時間が遅くなることが多い。積極的に散歩をしているが、最近お腹が出てきて、皮下脂肪が気になるようになってきた。テレビで肥満に効く漢方薬の宣伝を見て、防風通聖散(注)を求めて薬局を訪れた。(注)防風通聖散:キキョウ、カンゾウ、オウゴン、ビャクジュツ、セッコウ、ダイオウ、マオウ、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ケイガイ、ボウフウ、ショウキョウ、カッセキ、ボウショウを含む
◆ 問214
◆ 問215
購入して数日後、患者が再び来局し、この漢方薬を服用してから下痢が続くとの訴えがあった。その主な原因として、防風通聖散に配合される植物由来の生薬Aが考えられた。生薬Aに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
通例、根茎を利用する。
-
セリ科植物を基原とする。
-
主成分としてトロパン型アルカロイドを含有する。
-
同様の作用をもつ生薬としてボウショウがある。
-
大建中湯にも配合されている。
◆ 問214
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、3
この問題の核心は、防風通聖散の適応となる患者さんの特徴を「実証(体力充実)」「腹部肥満(皮下脂肪)」「便秘傾向」という3つのキーワードで理解しているか、また副作用のリスクから「避けるべき状態」を判断できるかにあります。
誤り:1
「胃腸が弱い」は、誤りです。
防風通聖散には、大黄(ダイオウ)や芒硝(ボウショウ)といった瀉下(下剤)成分が含まれています。胃腸が弱い方が服用すると、下痢や激しい腹痛を引き起こしやすい性質があるため、適応からは外れます。
正解:2
「体力が充実している」は、正しい記述です。
防風通聖散は、漢方でいう「実証(体力が充実しているタイプ)」の方に向けた処方です。体力があることは、この方剤を選択する重要な根拠の一つとなります。
正解:3
「便秘がちである」は、正しい記述です。
この処方は、体内の熱を逃がし、便通を改善することで肥満症などを治療するタイプです。便秘傾向があることは、適応として非常に合致しています。
誤り:4
「低血圧である」は、誤りです。
低血圧であることが、防風通聖散の使用を支持する理由にはなりません。むしろ、構成生薬に麻黄(マオウ)が含まれているため、循環器系に負担がかかる可能性があり、血圧の異常や心疾患がある場合には慎重な判断が求められます。
誤り:5
「発汗傾向である」は、誤りです。
発汗の有無は、防風通聖散を選択する際の決定的な決め手にはなりません。あくまで適応の核となるのは、前述の「実証・肥満・便秘」の組み合わせです。
【試験対策のポイント:防風通聖散のターゲット】
以下の3点が揃っている場合に最も推奨されます。
以下の3点が揃っている場合に最も推奨されます。
- 体力: 充実している(実証)。
- 体型: 腹部に皮下脂肪が多く、いわゆる「太鼓腹」の状態。
- 随伴症状: 便秘がちであること。
◆ 問215
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題の核心は、防風通聖散を服用した後に現れる「下痢」という症状から、原因生薬である大黄(ダイオウ)を特定し、その植物学的・化学的特徴を正しく理解しているかにあります。
防風通聖散には、排便を促す目的で「大黄」と「芒硝」が配合されていますが、設問では「植物由来の生薬A」と指定されているため、刺激性下剤成分を含む大黄についての記述を検討します。
正解:1
「通例、根茎を利用する」は、正しい記述です。
大黄の薬用部位は、タデ科植物の根茎、または根とされています。生薬学の試験においては、特に「根茎」が正解のポイントとなることが多いので覚えておきましょう。
誤り:2
「セリ科植物を基原とする」は、誤りです。
大黄はタデ科(Polygonaceae)の Rheum palmatum などを基原植物とする生薬です。セリ科には当帰(トウキ)や川きゅう(センキュウ)などがありますが、大黄は異なります。
誤り:3
「トロパン型アルカロイドを含有する」は、誤りです。
大黄の主要成分は、センノシドなどのアントラキノン系化合物です。これらが大腸で代謝され、腸管を刺激することで瀉下作用(下剤としての効果)を発揮します。トロパン型アルカロイドは、ベラドンナコンやロートコンなどに含まれる抗コリン成分です。
正解:4
「同様の作用をもつ生薬としてボウショウがある」は、正しい記述です。
芒硝(ボウショウ)は硫酸ナトリウムを主成分とする天然の鉱物由来生薬です。大黄とはメカニズムが異なりますが(芒硝は浸透圧性下剤)、どちらも「便を出しやすくする(下す)」という臨床的な作用が共通しており、防風通聖散ではこれらが併用されています。
誤り:5
「大建中湯にも配合されている」は、誤りです。
大建中湯は、山椒(サンショウ)、乾姜(カンキョウ)、人参(ニンジン)、膠飴(コウイ)から構成される方剤であり、大黄は含まれていません。大黄が含まれる代表的な方剤には、大黄甘草湯や乙字湯、そして本問の防風通聖散などがあります。
【試験対策のポイント:大黄のまとめ】
- 基原: タデ科(重要)。
- 部位: 根茎または根。
- 成分: アントラキノン誘導体(センノシドなど)。
- 作用: 大腸刺激性瀉下作用。
- 注意: 妊婦には慎重投与(骨盤内臓器の充血や子宮収縮を誘発する恐れがあるため)。
