第111回薬剤師国家試験
◆問222-223
51歳男性。身長173cm、体重81kg。仕事で自動車を運転することがあり、排尿回数が多いため水分を控えていた。1ケ月前から右季肋部に違和感があったが、特に痛みもなかったため、医療機関を受診していなかった。3日前に妻から顔が少し黄色っぽいと言われた。今朝、右季肋部に痛みが現れたため医療機関を受診した。血液検査で以下のような結果となり、さらにエコー検査、CT検査等を行い胆嚢結石と診断された。本人と医師が相談した結果、腹腔鏡下胆嚢摘出術を実施することになり、それまでの間、以下の処方1及び処方2で対応することとなり、処方箋を持って薬局を訪れた。(検査値)
AST 62 IU/L、ALT 68 IU/L、γ-GTP 163 IU/L、
アルカリホスファターゼ(ALP)525 IU/L、
直接ビリルビン3 mg/dL
(処方1)
フロプロピオン錠80mg 1回1錠 (1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
(処方2)
ブチルスコポラミン臭化物錠10mg 1回1錠疼痛時 5回分
◆ 問222
この患者に対する薬剤師の説明内容として適切なのはどれか。2つ選べ。-
処方1 の薬剤により、胆嚢の緊張が緩み、痛みの緩和が期待される。
-
処方1 の薬剤は、徐脈を起こすことがある。
-
処方2 の薬剤により、食欲の抑制が期待される。
-
処方2 の薬剤は、眼の調節障害を起こすことがある。
-
処方2 の薬剤は、唾液分泌量の増加を起こすことがある。
◆ 問223
◆ 問222
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題の核心は、胆石による痛みを緩和する薬剤のメカニズムと、日常生活(特に運転業務)に影響を及ぼす副作用を正しく把握し、適切な服薬指導ができるかにあります。
正解:1
「フロプロピオンは、胆道系の筋肉を緩めて痛みを和らげるために用いられる」は、正しい記述です。
フロプロピオンは、胆道や膵管などの平滑筋の痙攣(スパズム)を直接和らげる作用(鎮痙作用)を持っています。これにより、胆嚢や胆道の緊張を緩めて、胆石発作に伴う激しい痛み(疝痛)を軽減する目的で使用されます。
誤り:2
「フロプロピオンは、副作用として徐脈を起こすことがある」は、誤りです。
フロプロピオンによる徐脈(脈が遅くなること)は一般的ではありません。徐脈は主に副交感神経を直接刺激する薬剤などの副作用として見られる症状です。
誤り:3
「ブチルスコポラミン臭化物は、副作用として食欲を抑制する」は、誤りです。
ブチルスコポラミンは抗コリン薬であり、食欲を抑制する作用はありません。抗コリン作用による代表的な副作用には、口の渇き(口渇)、便秘、尿が出にくくなる(尿閉)などがあります。
正解:4
「ブチルスコポラミン臭化物は、副作用として目のかすみや、まぶしさを起こすことがある」は、正しい記述です。
抗コリン薬であるブチルスコポラミンは、瞳孔を広げる(散瞳)作用や、目のピントを合わせる毛様体筋を麻痺させる(調節麻痺)作用を持っています。そのため、視界がかすんだり、光を過度にまぶしく感じたりすることがあります。
誤り:5
「ブチルスコポラミン臭化物は、唾液の分泌を増加させる」は、誤りです。
抗コリン作用によって唾液の分泌は抑制されます。したがって、唾液が増えるのではなく、口の中が異常に乾く「口渇」の状態になります。
【試験対策のポイント:抗コリン薬の副作用】
- 分泌抑制: 口渇(唾液↓)、発汗抑制。
- 平滑筋弛緩: 便秘、尿閉(特に前立腺肥大症患者で注意)。
- 視覚影響: 散瞳、調節麻痺(目のかすみ、まぶしさ)。
- 心臓: 心拍数増加(頻脈)。
【実務上の留意点:運転への影響】
本症例のように「車を運転することがある」患者さんの場合、ブチルスコポラミンによる目のかすみやまぶしさ、あるいは眠気などは重大な事故につながる恐れがあります。点眼薬だけでなく、経口の内服薬や注射薬であっても、服用後の運転や危険な作業には十分に注意し、異常を感じたらすぐに控えるよう指導することが大切です。
本症例のように「車を運転することがある」患者さんの場合、ブチルスコポラミンによる目のかすみやまぶしさ、あるいは眠気などは重大な事故につながる恐れがあります。点眼薬だけでなく、経口の内服薬や注射薬であっても、服用後の運転や危険な作業には十分に注意し、異常を感じたらすぐに控えるよう指導することが大切です。
◆ 問223
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、5
この問題の核心は、図に示されたビリルビンの生成・抱合プロセスの各段階(場所、結合対象、化学的変化)を理解し、胆嚢結石による「胆汁うっ滞」が起きた際に生じる血中・尿中の変化を理論的に説明できるかにあります。
まず、図の反応プロセスを整理します。
・反応P: ヘムが分解され、ビリベルジンを経て化合物A(非抱合型ビリルビン)が生成される過程です。
・化合物A: 間接ビリルビンとも呼ばれ、水に溶けにくいため血中では主にアルブミンと結合して運ばれます。
・反応Q: 肝臓において、化合物Aがグルクロン酸抱合を受け、化合物B(抱合型ビリルビン)に変化する過程です。酵素 UGT(UDP-グルクロン酸転移酵素)が関与します。
・化合物B: 直接ビリルビンとも呼ばれ、水溶性が高いのが特徴です。
本症例では、直接ビリルビン、ALP、γ-GTPの上昇から、胆嚢結石による「閉塞性黄疸(胆汁うっ滞)」が強く示唆されます。これを踏まえて各選択肢を検討します。
正解:1
「反応Pは主に脾臓などの細網内皮系で進行している」は、正しい記述です。
古くなった赤血球のヘモグロビン(ヘム)は、主に脾臓や肝臓、骨髄などの細網内皮系(RES)で分解され、ビリルビンへと作り変えられます。これは病態時でも進行している通常の代謝ルートです。
誤り:2
「反応Qは主に腎臓で行われる」は、誤りです。
ビリルビンのグルクロン酸抱合(反応Q)が行われる主要な臓器は肝臓です。腎臓ではありません。
誤り:3
「化合物Aは、血中で主にリポタンパク質と結合して存在する」は、誤りです。
非抱合型ビリルビンである化合物Aは、血中では主にアルブミンと強く結合して保持されます。
誤り:4
「この患者では、化合物Aの血中濃度が低い可能性が高い」は、誤りです。
閉塞性黄疸では直接ビリルビン(化合物B)の血中への逆流が主因となりますが、間接ビリルビン(化合物A)が低下するという根拠はありません。むしろ全体的なビリルビン代謝の停滞により、上昇または正常範囲にとどまるのが一般的です。
正解:5
「化合物Bの尿中への排出が増加している」は、正しい記述です。
胆道が結石で閉塞すると、肝臓で作られた抱合型ビリルビン(化合物B)が腸管へ排出できず、血中へと逆流します。化合物Bは水溶性であるため、血中濃度が高まると腎臓から尿中へと排出されるようになります。これが、症例で見られる「褐色尿」の原因です。
【試験対策のポイント:ビリルビンの種類と特徴】
- 非抱合型(間接)ビリルビン: 脂溶性、アルブミン結合、尿には出ない。
- 抱合型(直接)ビリルビン: 水溶性、肝臓でグルクロン酸抱合される、血中濃度が上がると尿に出る。
- 閉塞性黄疸(胆管閉塞): 直接ビリルビン↑、ALP↑、γ-GTP↑、尿ビリルビン(+)。
この患者で起こっている可能性が高いのはどれか。2つ選べ。
