第111回薬剤師国家試験

◆問226-227

 院内の感染症対策委員会において、インフルエンザ流行への対応策を検討した結果、高齢者の死亡リスクがあるため、面会制限を実施するとともに、薬剤師が院内スタッフへ向けて感染予防の講義を行うことになった。
 委員会を見学していた実務実習生から、「高齢者の死亡リスクはどのようにして求めるのですか。」と質問があったため、指導薬剤師が高齢者の死亡リスクを求める模擬データを用いた課題を出した。

 (模擬データ)
 インフルエンザウイルス感染者数と 28 日以内の死亡者数
111回問226-227画像1

◆ 問226

模擬データにおいて、55~64歳と比較した80~94歳の年齢群の死亡リスクのオッズ比として最も近いのはどれか。1つ選べ。
  • 0.30
  • 1.5
  • 3.0
  • 15
  • 30

◆ 問227


◆ 問226

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:4


この問題の核心は、提示された疫学データ(年齢層ごとの感染者数と死亡者数)から、特定の比較対象群を適切に統合し、オッズ比(OR)を算出する手順を正しく理解しているかにあります。

まず、計算のために各年齢層のデータをまとめます。問題文では55歳〜64歳を「対照群」、80歳〜94歳を「曝露群(比較したい群)」として定義します。

1. データの集計
対照群(55〜64歳):
感染者合計 = 600 + 400 = 1,000人
死亡者合計 = 1 + 1 = 2人
生存者合計 = 1,000 − 2 = 998人

曝露群(80〜94歳):
感染者合計 = 400 + 300 + 300 = 1,000人
死亡者合計 = 5 + 10 + 15 = 30人
生存者合計 = 1,000 − 30 = 970人

2. オッズの算出とオッズ比の計算
「オッズ」とは、ある事象が起こる確率と起こらない確率の比(事象数 / 非事象数)のことです。

対照群のオッズ = 2 / 998
曝露群のオッズ = 30 / 970

これら二つのオッズの比が「オッズ比(OR)」となります。

OR = (30 / 970) / (2 / 998)
OR = (30 × 998) / (970 × 2)
OR = 29,940 / 1,940
OR ≈ 15.43

正解:4(約15)
計算結果は約15.43となるため、選択肢の中で最も近い選択肢4(15)が正解となります。これは、80歳〜94歳の層では、55歳〜64歳の層に比べて、インフルエンザ感染時の死亡リスク(オッズ)が約15倍高いことを意味しています。

【試験対策のポイント:オッズ比の性質】
  • 計算の基本: オッズ比 = (ad) / (bc) という「たすき掛け」の計算式で知られていますが、まずは「事象数 / 非事象数」というオッズの定義をしっかり押さえておきましょう。
  • リスク比との違い: 発生率が非常に低い場合、オッズ比はリスク比(相対リスク)の近似値として扱われますが、本質的には異なる指標です。
  • データの統合: 複数のセルに分かれたデータが提示された場合、まずは計算に必要な「死亡者」と「生存者」の総数をミスなく合算することが正答への第一歩です。

◆ 問227

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、3


この問題の核心は、病院内でのインフルエンザ流行を防ぐための基本的な予防策やワクチンの法的性質、および薬剤の適応について正確な情報をスタッフに提供できるかにあります。

誤り:1
「主な感染経路は空気感染である」は、誤りです。
インフルエンザの主な感染経路は、咳やくしゃみによる「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる「接触感染」です。結核や麻疹のような空気感染(飛沫核感染)が主体の疾患とは対策が異なることを強調する必要があります。

正解:2
「手指衛生の徹底を推奨する」は、正しい記述です。
接触感染を防ぐために、アルコール消毒液による手指消毒や石鹸による手洗いの徹底は、感染対策の最も基本的かつ重要な活動です。

正解:3
「ワクチン接種前に卵アレルギーの有無を確認する」は、正しい記述です。
現在国内で使われているインフルエンザワクチンは、鶏卵を用いて製造されています。そのため、卵アレルギーを持つ方(特にアナフィラキシー既往者)に対しては、慎重な検討や確認が必要となります。

誤り:4
「65歳以上への定期接種は努力義務である」は、誤りです。
予防接種法において、65歳以上の高齢者に対するインフルエンザワクチンは「B類疾病」に分類されています。B類疾病には本人への「努力義務」は規定されておらず、あくまで個人の希望に基づいて行われるものとされています。一方、麻疹や風疹などのA類疾病には努力義務があります。

誤り:5
「予防目的でペラミビルの投与が可能である」は、誤りです。
点滴薬であるペラミビル(製品名:ラピアクタ)は、インフルエンザの「治療」のみに適応があります。予防投与としての適応は認められていません。予防投与が認められているのは、オセルタミビルやザナミビルなどの一部の薬剤に限られます。

【試験対策のポイント:インフルエンザの知識整理】
  • 感染経路: 飛沫感染 + 接触感染。
  • ワクチン: B類疾病(個人の判断、努力義務なし)。卵由来の成分に注意。
  • 予防投与: 認可されている薬剤とそうでない薬剤(ペラミビルなど)の区別が重要。