第111回薬剤師国家試験

◆問238-239

65歳女性。3ケ月前から腰痛を自覚し、市販の痛み止めを服用しても改善しないため整形外科を受診した。腰椎骨密度がYAMの62%であり、X線像から骨粗しょう症と診断され、処方箋をもって来局した。調剤した後、硬度が特に高いミネラルウォーター(硬度300mg/L以上)で服用してはいけないことを含めて服薬指導を行った。
服薬指導後に、患者がカバンからミネラルウォーターを取り出し、「いつも飲んでいるこの水は大丈夫ですか。」と質問した。薬剤師は、ボトルのラベルを確認し、服薬時に使用可能かどうかを評価するために総硬度を計算した。

(処方)
リセドロン酸Na錠17.5mg  1回1錠 (1日1錠)
    毎週 日曜日 1日1回 起床時 4日分(投与実日数)

(ミネラルウォーター 100 mL の栄養成分)
111回問238-239画像1

◆ 問238

このミネラルウォーターの総硬度(mg/L)に最も近い値はどれか。1つ選べ。ただし、原子量は C 12.0、O 16.0、Na 23.0、Mg 24.3、K 39.0、Ca 40.1 とする。
  • 37
  • 63
  • 93
  • 370
  • 630
  • 930

◆ 問239


◆ 問238

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:6


この問題では、示されたラベルの成分値からミネラルウォーターの「総硬度」を計算し、ビスホスホネート系薬剤の服用に適しているかを判断する必要があります。硬度は、水に含まれるカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)の量を、炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算して算出します。

1. 単位を1 L(リットル)あたりに換算します
問題文のラベル表示は「100 mLあたり」となっているため、まず1,000 mL(1 L)あたりの含有量に直します。
  • カルシウム(Ca):21.6 mg × 10 = 216 mg/L
  • マグネシウム(Mg):9.5 mg × 10 = 95 mg/L
2. 炭酸カルシウム(CaCO3)換算での硬度を計算します
各ミネラルの原子量および分子量は以下の通りです。
Ca = 40.1、Mg = 24.3、CaCO3 = 100.1

① カルシウム硬度の算出
216 mg/L × (100.1 / 40.1) ≒ 216 × 2.50 = 540 mg/L
② マグネシウム硬度の算出
95 mg/L × (100.1 / 24.3) ≒ 95 × 4.12 = 391.4 mg/L
3. 総硬度を求めます
算出したカルシウム硬度とマグネシウム硬度を合計します。
540 + 391.4 = 931.4 mg/L(約930 mg/L)
正解:6(約930 mg/L)

【実務上のポイント:なぜ硬度が重要か】
このミネラルウォーターの総硬度は約930 mg/Lであり、WHOの基準では「硬水」(180 mg/L以上)に分類されます。リセドロン酸のようなビスホスホネート系薬剤は、水中のカルシウムやマグネシウムといった二価陽イオンとキレート(難溶性複合体)を形成する性質があります。そのため、このような硬水で服用すると、薬が腸から吸収されにくくなり、十分な治療効果が得られなくなってしまいます。服薬指導の際は、水道水などの「軟水」で服用するよう説明することが非常に重要です。

◆ 問239

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題のポイントは、ビスホスホネート系薬剤(リセドロン酸など)の極めて低い吸収率を下げない工夫と、強力な粘膜刺激性による副作用(食道炎など)を防ぐための適切な指導を理解しているかにあります。

正解:1(このミネラルウォーターではなく、水道水などの軟水で服用してください)
リセドロン酸などのビスホスホネート系薬剤は、水の中に含まれるカルシウム(Ca2+)やマグネシウム(Mg2+)などの二価陽イオンと結合し、難溶性の複合体(キレート)を形成してしまいます。これにより薬の吸収が著しく低下し、効果が十分に発揮されなくなります。問238で示されたミネラルウォーターは硬度が高いため、服用には水道水などの軟水が適しています。

正解:4(噛んだり舐めたりせずに服用してください)
この薬は粘膜を直接刺激する性質が非常に強く、口の中で留めたり噛み砕いたりすると、口内炎や潰瘍の原因となります。また、食道に引っかかると重篤な食道炎や食道潰瘍を引き起こすリスクがあるため、十分な量の水(約180 mL)で一気に飲み込むように指導します。

誤り:2(服用後すぐに朝食を摂ってもよい)
ビスホスホネート系薬剤は食事の影響を非常に受けやすく、わずかな食べ物でも吸収が妨げられます。そのため、服用後は少なくとも30分間は食事や水以外の飲料、他の薬の摂取を避ける必要があります。

誤り:3(代謝物で尿が橙赤色になることがある)
尿が橙赤色になる副作用で有名なのはリファンピシン(抗結核薬)などです。リセドロン酸の服用で尿の色が変化することは一般的ではありません。

誤り:5(朝食を摂った後は昼食前の空腹時に服用する)
この薬は「起床時(最初の食事を摂る前)」に服用するのが原則です。朝食後に服用すると吸収が期待できず、また食道障害を予防するための「服用後30分は横にならない」というルールも守りづらくなるため、不適切です。飲み忘れた場合はその日は服用せず、翌朝の起床時に服用するよう伝えます(同日に2回分を飲んではいけません)。

【患者様への服薬指導のまとめ】
ビスホスホネート系薬剤の適切な服用ルールを徹底して伝えましょう。
  • タイミング: 朝、起きてすぐ(最初の食事の前)に。
  • 飲み方: コップ1杯の水(軟水)で。噛まずに飲み込む。
  • 服用後: 少なくとも30分間は食事を摂らず、横にならない。