第111回薬剤師国家試験

◆問242-243

学校薬剤師が教室の環境衛生検査を実施するために 12 月に小学校を訪問し、二酸化炭素濃度を測定した。各教室には冷暖房及び換気設備が設置されているが、暖房設備が故障し、一時的に石油ファンヒーターを使用している教室があったので、学校薬剤師は追加で検査することにした。

◆ 問242


◆ 問243

 児童20名がいるこの教室の床板面積は80 m2、床から天井までの高さは2.5 mである。また、使用している石油ファンヒーターから1時間当たり0.02 LのガスAが発生する。ガスAの濃度を学校環境衛生基準である0.06 ppmに保つのに必要な換気回数は1時間当たり何回か。1つ選べ。
 ただし、外気中のガスAの濃度は0.01 ppm、教室内において、これ以外にガスAの発生はないものとする。
  • 1 回
  • 2 回
  • 3 回
  • 4 回
  • 5 回

◆ 問242

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題は、教室で石油ファンヒーター(灯油の燃焼)を使用する際に、児童・生徒の健康を守るために追加で測定すべき空気環境の項目を正しく選択できるかを問う内容です。灯油が燃焼する過程では、酸素が消費されるだけでなく、不完全燃焼によるガスや、高温での反応による有害物質が発生するため、注意深い管理が求められます。

正解:3(一酸化炭素:CO)
石油ファンヒーターなどの燃焼器具を使用すると、換気が不十分な場合や器具の不具合によって不完全燃焼が起こり、一酸化炭素が発生するリスクがあります。一酸化炭素は無色・無臭ですが非常に毒性が強く、学校環境衛生基準では6 ppm以下であることが基準として定められています。そのため、燃焼器具使用時の追加検査項目として必須となります。

正解:5(二酸化窒素:NO2
灯油が燃焼する際の高温下では、空気中の窒素と酸素が反応して窒素酸化物(NOx)が発生します。その代表である二酸化窒素は呼吸器系に刺激を与え、健康被害を引き起こす可能性があるため、重要な検査項目です。基準値は0.06 ppm以下とされており、これが守られているかを確認することで、適切な換気が行われているかを判断します。

誤り:1, 2, 4
  • 選択肢1(ホルムアルデヒド): 主に建材、家具、接着剤などから放散される物質です。石油ファンヒーターの使用に特化した追加検査項目ではなく、通常の空気環境検査において別に基準(0.08 ppm以下)が設けられています。
  • 選択肢2(トルエン): 塗料や接着剤などの溶剤に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の一種です。燃焼ガスとして優先的に測定する項目ではありません。
  • 選択肢4(浮遊粉じん): 教室内での活動やチョークの粉、外気からの流入などが主な原因となります。燃焼によっても微粒子が発生することはありますが、環境衛生基準において燃焼器具使用時に「追加」すべき項目としては、COやNO2が優先されます。
【試験対策のポイント:燃焼器具と有害ガス】
学校環境衛生基準において、開放型の燃焼器具を使用する場合の重要ポイントを整理しましょう。
  • 一酸化炭素 (CO): 不完全燃焼の指標。基準値は 6 ppm 以下
  • 二酸化窒素 (NO2): 燃焼そのものに伴う有害ガスの指標。基準値は 0.06 ppm 以下
  • 二酸化炭素 (CO2): 通常の換気不足の指標。燃焼時は特に上昇しやすいため、1,500 ppm 以下の維持が重要です。

◆ 問243

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2


この問題では、石油ファンヒーターから発生するガスAの濃度を、学校環境衛生基準(目標濃度)以下に保つために必要な「換気回数」を求めます。定常状態における物質収支の考え方を用いて、論理的に計算を進めていきましょう。

1. 教室の容積(V)を算出します
まず、空気が入れ替わる対象となる空間の大きさを求めます。単位を L(リットル)に揃えておくと、後の計算がスムーズになります。
V = 80 m2(床面積) × 2.5 m(高さ) = 200 m3
1 m3 = 1,000 L ですので、
V = 200,000 L となります。
2. ガスの発生量(G)と濃度差(ΔC)を整理します
問題文より、以下の数値が与えられています。
  • ガスAの発生量(G):0.02 L/h
  • 目標とする室内濃度(Cin):0.06 ppm
  • 外気の濃度(Cout):0.01 ppm
濃度差(ΔC)を ppm から体積比に換算します(1 ppm = 10-6)。
ΔC = Cin - Cout = 0.06 - 0.01 = 0.05 ppm
体積比に直すと、 0.05 × 10-6 となります。
3. 必要換気量(Q)と換気回数(n)の関係式を立てます
定常状態では、「ガスの発生量」と「換気によって排出されるガスの量」が等しくなります。
換気量を Q [L/h]、換気回数を n [回/h] とすると、Q = nV という関係が成り立ちます。
物質収支の式は以下の通りです。
G = Q × ΔC = n × V × ΔC
4. 数値を代入して換気回数(n)を求めます
0.02 = n × 200,000 × (0.05 × 10-6)

右辺を整理すると、
200,000 × 0.05 × 10-6 = 2 × 105 × 5 × 10-8 = 10 × 10-3 = 0.01

したがって、
0.02 = n × 0.01
n = 2 [回/h]
正解:2(2回)

【試験対策のポイント:換気計算の基本】
換気計算問題のポイントは、単位の変換(特に m3 から Lppm から 10-6)を正確に行うことです。また、「換気回数 n」は「1時間あたりに部屋の容積分の空気が何回入れ替わるか」を示す指標であることを理解しておきましょう。この式(G = nVΔC)を覚えておけば、どのような数値設定でも対応が可能になります。