第111回薬剤師国家試験
◆問244-245
9月上旬に小学校の学校給食施設において、調理場の温湿度計が誤作動を起こし表示されなくなった。夏場は熱気や蒸気の発生で、高温・高湿になることが多かったため、現状を把握するために、学校薬剤師が室内の作業環境測定を行うことになった。◆ 問244
学校薬剤師が屋内の調理場の乾球温度、湿球温度、黒球温度を測定したところ、以下の値であった。暑さ指数(湿球黒球温度:WBGT)として最も近い値はどれか。1つ選べ。乾球温度:28.0 ℃
湿球温度:25.0 ℃
黒球温度:32.0 ℃
-
25
-
26
-
27
-
28
-
29
◆ 問245
◆ 問244
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3
この問題は、熱中症予防の指標となる「暑さ指数(WBGT)」を計算するものです。WBGTは、人間の熱バランスに大きな影響を与える「湿度」「輻射熱(日射など)」「気温」の3つを取り入れた指標ですが、屋内と屋外で計算式が異なる点に注意が必要です。
1. 屋内(または日射がない環境)の計算式を確認します
屋内や日射のない場所では、乾球温度(気温)の影響を除外し、「湿球温度」と「黒球温度」のみを用いて算出します。計算式は以下の通りです。
WBGT = 0.7 × Tw(自然湿球温度) + 0.3 × Tg(黒球温度)
2. 与えられた数値を代入して計算します問題文の測定値(自然湿球温度 Tw = 25.0 ℃、黒球温度 Tg = 32.0 ℃)を式に当てはめます。
WBGT = 0.7 × 25.0 + 0.3 × 32.0
WBGT = 17.5 + 9.6 = 27.1
算出した結果、約27となります。WBGT = 17.5 + 9.6 = 27.1
正解:3(27)
【試験対策のポイント:WBGT計算式の使い分け】
WBGTの計算問題では、まず「屋内」か「屋外(日射あり)」かを判断することが重要です。
WBGTの計算問題では、まず「屋内」か「屋外(日射あり)」かを判断することが重要です。
- 屋内(日射なし): WBGT = 0.7 × 湿球 + 0.3 × 黒球
※乾球温度(気温)は使用しません。 - 屋外(日射あり): WBGT = 0.7 × 湿球 + 0.2 × 黒球 + 0.1 × 乾球
※直射日光の影響を考慮し、乾球温度も計算に含めます。
◆ 問245
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、5
この問題は、熱中症の予防および発症時の対応について、正しい医学的知識に基づいた助言ができるかを問う内容です。特に経口補水液(ORS)の性質を正しく理解しておくことが重要です。
正解:3(めまい、大量の発汗、筋肉の硬直といった初期症状に注意するよう助言する)
これらは熱中症の分類における「I度(軽症)」の典型的な症状です。立ちくらみ(熱失神)や筋肉痛・こむら返り(熱けいれん)が含まれます。これらのサインを見逃さず、早期に涼しい場所へ移動し、水分・塩分補給を行うことが重症化を防ぐ鍵となります。
正解:5(経口補水液を過剰に摂取すると、ナトリウムの過剰摂取につながる恐れがあることを助言する)
経口補水液は、小腸での水分の吸収効率を高めるために、ナトリウムなどの電解質濃度が比較的高く設定されています(約0.3%の食塩水に相当します)。そのため、喉が渇いていない時に通常の飲料水がわりに大量に飲み過ぎると、塩分の摂り過ぎになる可能性があるため注意が必要です。
誤り:1(室温を28.5 ℃以下に保っていれば、熱中症になることはないと助言する)
熱中症の発症には、気温だけでなく、湿度や輻射熱、個人の体調(寝不足や下痢など)が大きく関与します。気温が低くても湿度が高い場合や、WBGT(暑さ指数)が高い場合には熱中症のリスクがあるため、「28.5 ℃以下なら絶対安全」と断言することは不適切です。
誤り:2(喉の渇きを感じるまでは、水分を補給する必要はないと助言する)
「喉が渇いた」と感じた時点では、すでに体内の脱水が始まっています。特に高齢者や、作業に集中している人は渇きを感じにくい傾向があるため、喉の渇きを感じる前から「時間を決めてこまめに」水分を補給することが予防の鉄則です。
誤り:4(経口補水液は、脱水症の予防を主な目的とした食品であることを助言する)
経口補水液は、軽度から中等度の脱水状態における「治療・回復(電解質と水分の速やかな補給)」を目的とした「特別用途食品(病者用食品)」です。日常的な「予防」としては、通常の水やスポーツドリンクが適しており、経口補水液は脱水症状が現れ始めた際の使用が推奨されます。
【試験対策のポイント:経口補水液とスポーツドリンクの違い】
患者様への説明の際にも役立つ、両者の違いを整理しましょう。
患者様への説明の際にも役立つ、両者の違いを整理しましょう。
- 経口補水液: 電解質(ナトリウム等)が多く、糖分が控えめ。脱水時の「治療・回復」に適しています。
- スポーツドリンク: 糖分が多く、電解質は比較的少なめ。運動時の「エネルギー補給・予防」に適していますが、脱水時にこればかり飲むと糖分の摂り過ぎや、電解質不足になることがあります。
