第111回薬剤師国家試験
◆問248-249
58歳女性。40歳頃より肌荒れが気になり、ビタミンC及びビタミンB6含有サプリメントを服用している。5年前に友人より「女性は鉄分が不足がちなので鉄分含有サプリメントの服用が良い」と勧められ服用している。2年前に歩行時につまずくことが増え、かかりつけ医から紹介されて市民病院を受診したところ、初期のパーキンソン病と診断され、処方1による治療が開始された。しかし、最近手指の安静時のふるえや動作のぎこちなさが目立つようになり、処方2が追加された。処方1、処方2とも、同病院の薬剤部で調剤された。
(処方1)
プラミペキソール塩酸塩錠0.5mg 1回2錠(1日6錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
(処方2)
レボドパ100mg・カルビドパ配合錠 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 14日分
◆ 問248
処方1及び2の薬剤について病院薬剤師がこの患者に対して説明する内容として、適切なのはどれか。2つ選べ。-
処方2 の薬剤の作用を減弱させるため、ビタミン C 含有サプリメントの服用を 避ける。
-
処方2 の薬剤の作用を増強させるため、ビタミン B6 含有サプリメントの服用 を避ける。
-
処方2 の薬剤の吸収を低下させるため、鉄分含有サプリメントの同時服用を避 ける。
-
処方2 に含まれる薬物の血中濃度を測定するため、来院当日は絶食する。
-
処方1 と処方2 の薬剤の併用により突然眠気が出ることがあるため、危険を伴 う機械の操作は避ける。
◆ 問249
◆ 問248
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、5
この問題は、パーキンソン病の標準的な治療薬であるレボドパ配合剤(レボドパ・カルビドパ)と、ドパミン受容体作動薬(プラミペキソール)を服用している患者様に対し、薬剤師が適切に服薬指導を行えるかを問う内容です。薬の吸収を妨げる要因や、生活上の注意点を正しく理解しておく必要があります。
正解:3(鉄分サプリメントとの同時服用を避けるよう指導する)
レボドパは、鉄剤や鉄分を含むサプリメントと一緒に服用すると、胃腸の中で鉄イオン(Fe2+ や Fe3+)と結合して「キレート」と呼ばれる難溶性の複合体を形成します。これによりレボドパの吸収が著しく低下し、効果が十分に得られなくなってしまいます。鉄剤を併用する場合は、服用時間を少なくとも2時間以上ずらすように指導するのが適切です。
正解:5(突然眠気が出ることがあるため、自動車の運転や危険な作業を避けるよう指導する)
プラミペキソールなどのドパミン受容体作動薬には、前兆のない「突発的睡眠」や「傾眠」を引き起こす重大な副作用があります。これは自覚症状がないまま突然眠り込んでしまうものであり、重大な事故につながる恐れがあります。そのため、自動車の運転、高所での作業、危険な機械の操作などは避けるよう、非常に強く説明する必要があります。
誤り:1(ビタミンCサプリメントを避けるよう指導する)
ビタミンCがレボドパの吸収や作用を低下させるという明確な臨床的根拠はありません。むしろ抗酸化作用によるメリットが示唆される場合もあり、「避けるべき」と指導する必要性はありません。
誤り:2(ビタミンB6サプリメントは、作用増強のため避けるよう指導する)
ビタミンB6(ピリドキシン)はレボドパの末梢での脱炭酸を促進し、脳へ届く量を減らしてしまいます。しかし、本剤(メネシットなど)には末梢での脱炭酸を抑えるカルビドパが配合されているため、ビタミンB6の影響は大幅に軽減されています。また、選択肢にある「作用増強のため避ける」という説明は作用の方向性が逆であり、不適切です。
誤り:4(血中濃度測定のため、来院当日は絶食するよう指導する)
レボドパやプラミペキソールの治療において、血中濃度測定のために絶食を求めることは一般的ではありません。むしろ絶食などの特別な条件下での測定は、普段の生活における薬の効果判定とズレが生じてしまうため、日常の条件下で評価を行うのが望ましいです。
【服薬指導の鍵:キレートと突発的睡眠】
パーキンソン病の患者様をサポートする上で、以下の2点は特に重要です。
パーキンソン病の患者様をサポートする上で、以下の2点は特に重要です。
- キレート形成: 鉄剤だけでなく、多価陽イオンを含む胃腸薬(マグネシウム等)や一部のサプリメントとの飲み合わせに注意し、時間をずらす工夫を提案しましょう。
- 安全管理: 突発的睡眠はドパミン作動薬全般で起こり得るため、ご家族にもそのリスクを共有し、日中の様子に変化がないか確認してもらうことも有効です。
◆ 問249
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、5
この問題のポイントは、パーキンソン病の進行に伴って現れる「Wearing-off現象」の背景と、それを打破するための薬剤の標的を正しく識別できるかにあります。
Wearing-off(ウェアリング・オフ)現象とは:
レボドパ治療を続けるうちに、薬の効果が次の服用時間まで持たず、途中で切れてしまう状態を指します。病期の進行によりドパミン神経のバッファ機能(ドパミンを貯蔵・調節する能力)が低下し、薬の血中濃度の変動が直接症状に現れやすくなることが主な原因です。
正解:2(アデノシンA2A受容体を遮断)
これはイストラデフィリン(ノウリアスト)の作用機序です。線条体にあるA2A受容体は、ドパミンD2受容体の働きを間接的に抑制する「ブレーキ」のような役割を果たしています。このブレーキを遮断(オフ)することで、ドパミン作動系のアクセルが踏みやすくなり、Wearing-off現象を改善します。
正解:5(COMT(カテコール-O-メチル基転移酵素)を阻害)
これはエンタカポンやオピカポンなどの作用機序です。COMTは末梢においてレボドパを分解(代謝)してしまう酵素です。この酵素を阻害することで、レボドパの血中半減期が延び、脳へ届くドパミンの量が安定して増えるため、Wearing-off現象に対して非常に有効な手段となります。
誤り:1(ドパミンD2受容体を遮断)
D2受容体の遮断はドパミンの働きを抑制する方向(抗精神病薬の機序)です。パーキンソン病の症状を悪化させてしまうため、不適切です。
誤り:3, 4
- 選択肢3(セロトニン5-HT1受容体を刺激): 5-HT1A作動薬などは非運動症状などへの関連が研究されていますが、Wearing-off現象の直接的な改善薬として確立された機序ではありません。
- 選択肢4(セロトニントランスポーター(SERT)を阻害): いわゆるSSRI(抗うつ薬)の機序です。セロトニン系の調節であり、Wearing-off現象の改善とは直接関係しません。
【試験対策のポイント:Wearing-offへの対策薬】
「薬が切れてきた」という状況に対して、どうアプローチするかを整理しましょう。
「薬が切れてきた」という状況に対して、どうアプローチするかを整理しましょう。
- レボドパを長持ちさせる: COMT阻害薬、MAO-B阻害薬(セレギリン、ラサギリン、サフィナミド)。
- ドパミンの代わりに受容体を叩く: ドパミン受容体作動薬(プラミペキソール、ロピニロール等)。
- ブレーキを外す(別経路): アデノシンA2A受容体拮抗薬(イストラデフィリン)。
