第111回薬剤師国家試験

◆問250-251

33歳女性。身長158cm、体重52kg。夫と2人暮らし。1年半前より朝の関節のこわばりや痛みを自覚し、1年前に関節の腫脹・疼痛が出現した。近医でリウマトイド因子陽性の関節リウマチと診断され、治療が開始された。処方1~3で治療継続中であったが、疾患活動性の上昇により7日前に入院した。病棟カンファレンスで処方3が処方4へ変更されることになった。

(処方1)
メトトレキサートカプセル2mg  1回2カプセル(1日4カプセル)
    毎週 土曜日1日2回 朝夕食後 1日分(投与実日数)
メトトレキサートカプセル2mg  1回1カプセル(1日1カプセル)
    毎週 日曜日1日1回 朝食後 1日分(投与実日数)

(処方2)
葉酸錠5mg  1回1錠(1日1錠)
    毎週 月曜日1日1回 朝食後 1日分(投与実日数)

(処方3)
アダリムマブ(遺伝子組換え)皮下注(40mg/1キット) 1キット
    1回40mg
    2週間に1回 皮下注射(自己注射)

(処方4)
トファシチニブクエン酸塩錠5mg 1回1錠(1日2錠)
    1日2回 朝夕食後 7日分

◆ 問250


◆ 問251

処方1~4 のいずれかの薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • IL-6 受容体に結合することで、IL-6 により誘導される炎症反応を抑制する。
  • 抗原提示細胞表面の CD80/CD86 に結合することで、CD28 を介した共刺激シグナルを抑制する。
  • ヤヌスキナーゼ(JAK)を阻害することで、リンパ球の活性化を阻害する。
  • カルシニューリンを阻害することで、ヘルパー T 細胞における IL-2 産生を抑制する。
  • ジヒドロ葉酸還元酵素を阻害することで、チミジル酸の合成を抑制する。

◆ 問250

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2


この問題は、関節リウマチの標準治療薬であるメトトレキサート(MTX)と、JAK阻害薬であるトファシチニブの副作用や注意点を正しく理解し、医療チーム内で共有すべき情報を適切に判断できるかを問う内容です。「適切でないもの」を選ぶ点に注意しましょう。

正解:2(トファシチニブ服用により出血傾向になる)
これが「適切でない(不適切)」な情報共有となります。トファシチニブ(ゼルヤンツ®)の重大な副作用として警戒すべきは、感染症(特に帯状疱疹)、血栓塞栓症、心血管系事象、および血球減少などです。ワーファリンやDOAC(直接経口抗凝固薬)のように「出血傾向」が主要な注意点として前面に来る薬剤ではないため、カンファレンスでこの内容を強調することは誤解(ミスリード)を招く恐れがあります。

誤り:1, 3, 4, 5(これらはすべて適切な情報共有です)
  • 選択肢1(メトトレキサートの感染リスク): MTXは免疫抑制作用を持つため、重篤な感染症に注意が必要です。発熱、呼吸器症状、強い倦怠感などの初期症状をチームで監視することは非常に重要です。
  • 選択肢3(トファシチニブと帯状疱疹): トファシチニブを含むJAK阻害薬では、重大な副作用として帯状疱疹が高い頻度で報告されています。発疹や神経痛のような痛みの出現に注意を払う必要があります。
  • 選択肢4(トファシチニブ服用中の避妊): 胎児への影響(催奇形性)の可能性があるため、生殖可能年齢の女性に対しては、投与中および投与終了後も少なくとも1月経周期は適切な避妊を行うよう指導し、情報を共有することが必須です。
  • 選択肢5(トファシチニブの代謝と相互作用): 本剤は主にCYP3A4(一部CYP2C19)で代謝されます。強力な阻害薬や誘導薬との併用によって血中濃度が大きく変動するため、併用薬のチェックはチームで欠かせない業務です。
【実務のポイント:JAK阻害薬の3大チェック項目】
トファシチニブなどのJAK阻害薬を服用する患者様については、以下の3点を重点的に共有・確認しましょう。
  • 感染症: 特に帯状疱疹の既往や出現に注意。
  • リスク評価: 血栓症や心疾患の既往がないか。
  • 避妊指導: 適切な期間の継続的な避妊が必要。

◆ 問251

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、5


この問題は、本症例の処方に含まれる主要な薬剤が、細胞内のどのプロセスに働きかけて炎症や免疫反応を抑えているのかを問うています。特にJAK阻害薬と代謝拮抗薬の正確な標的を理解することが重要です。

正解:3(JAKを阻害し、リンパ球の活性化を阻害する)
これはトファシチニブ(ゼルヤンツ)の作用機序です。JAK(ヤヌスキナーゼ)は、細胞表面のサイトカイン受容体に情報が届いた際、その刺激を核へと伝える役割を担う細胞内キナーゼです。JAKを阻害することで、複数のサイトカイン(IL-6やインターフェロンなど)によるシグナル伝達を一括して遮断し、リンパ球の増殖や活性化を強力に抑制します。

正解:5(ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)を阻害し、チミジル酸の合成を抑制する)
これはメトトレキサート(MTX)の作用機序です。活性型葉酸(テトラヒドロ葉酸)を作るのに必要な酵素であるDHFRを阻害します。活性型葉酸が不足すると、DNAの材料となるチミジル酸が作れなくなるため、DNA合成が止まります。この作用は、細胞増殖が速い免疫細胞(リンパ球など)に対して選択的に発揮され、リウマチの進行を抑えます。

誤り:1, 2, 4
  • 選択肢1(IL-6受容体に結合): トシリズマブ(アクテムラ)の機序です。今回の処方には含まれていません。
  • 選択肢2(CD80/CD86に結合): アバタセプト(オレンシア)の機序です。T細胞が活性化される際の「補助刺激(共刺激)」をブロックする薬剤ですが、今回の処方にはありません。
  • 選択肢4(カルシニューリンを阻害): シクロスポリンやタクロリムスの機序です。これらはIL-2の産生を抑えることで免疫を抑制しますが、今回の治療内容とは異なります。
【試験対策のポイント:標的の違いを整理】
リウマチ薬は「どこを止めるか」のバリエーションが豊富です。
  • トファシチニブ: 細胞内の「伝言役(JAK)」を止める。
  • メトトレキサート: 細胞の「設計図の材料(DNA合成)」を止める。
  • 生物学的製剤: 細胞の外にある「メッセージ物質(サイトカイン)」そのものを捕まえる。