第111回薬剤師国家試験
◆問258-259
47歳男性。飲酒歴なし。7ケ月前に左母趾の激痛と腫脹を認め、痛風発作と診断されナプロキセン錠が処方された。3ケ月前より以下の薬剤が処方された。検査値が併記された処方箋を持って患者が薬局を訪れた際、薬剤師に対して「痛みは和らいできたが、尿酸値が徐々に上がってきた。このまま服用を続けてよいのか。」と相談があった。(処方)
アロプリノール錠100mg 1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 28日分
(検査値)
血清尿酸 7.5 mg/dL、AST 92 IU/L、ALT 117 IU/L、γ-GTP 86 IU/L、eGFR 82 mL/min/1.73 m2、尿 pH 4.5、尿比重 1.020、尿糖(-)、尿中尿酸排泄量 0.406 mg/kg/時(正常値:0.483~0.509 mg/kg/時)
◆ 問258
この患者の今回受診時の検査結果を踏まえ、処方薬(アロプリノール)に代えて医師へ提案すべき薬物として最も適切なのはどれか。1つ選べ。-
コルヒチン
-
ベンズブロマロン
-
ドチヌラド
-
トピロキソスタット
-
フェブキソスタット
◆ 問259
◆ 問258
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3
この症例では、47歳男性の検査値において、AST 92 U/L、ALT 117 U/Lと明らかな肝機能障害が出現しています。また、尿中尿酸排泄量が低く、「排泄低下型」の高尿酸血症であると判断されます。現在服用中のアロプリノールに代わり、安全かつ効果的な薬剤を選択する必要があります。
正解:3(ドチヌラド)
ドチヌラド(商品名:ユリス®)は、選択的URAT1(尿酸トランスポーター1)阻害薬です。近位尿細管での尿酸の再吸収を抑えるため、本症例のような「排泄低下型」の高尿酸血症に対して非常に有効です。また、既存のXO阻害薬(アロプリノールなど)と比較して、肝機能障害がある患者様への投与においてリスクが低いと考えられており、本症例の状況に最も適合する提案となります。
誤り:1(コルヒチン)
コルヒチンは、痛風発作の予兆期に用いる「発作予防・治療薬」です。白血球の遊走を抑えて炎症を鎮めますが、血清尿酸値そのものを下げる作用はありません。根本的な尿酸管理を目的とする変更薬としては不適切です。
誤り:2(ベンズブロマロン)
ベンズブロマロンは尿酸排泄促進薬であり、排泄低下型には有効です。しかし、添付文書において「重篤な肝障害」の副作用リスクが警告されています。すでに肝機能数値が悪化している本症例において、あえてこの薬剤を選択することは推奨されません。
誤り:4(トピロキソスタット)
トピロキソスタットは、アロプリノールと同じキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害薬です。尿酸の産生を抑える機序ですが、副作用として肝機能障害のリスクが含まれています。アロプリノールで肝機能が悪化している可能性がある以上、同系統の薬剤への変更は避けるべきです。
誤り:5(フェブキソスタット)
フェブキソスタットも選択的XO阻害薬であり、アロプリノールと同系統です。やはり添付文書に肝機能障害に関する記載があり、現在の肝機能異常を考慮すると、積極的な変更先としては適切ではありません。
【実務の視点:薬剤選択の根拠を整理する】
医師への疑義照会や提案の際は、以下の2点を明確に伝えましょう。
医師への疑義照会や提案の際は、以下の2点を明確に伝えましょう。
- 病態への適合: 「排泄低下型」なので、尿酸の産生を抑える薬(XO阻害薬)よりも、排泄を促す薬(URAT1阻害薬など)が理にかなっています。
- 安全性の確保: すでに肝数値が上昇しているため、肝毒性リスクの報告が少ない新しい選択肢(ドチヌラド)を提案することで、安全な治療継続が可能になります。
◆ 問259
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、4
この問題は、選択的URAT1阻害薬であるドチヌラドが、腎臓においてどのように尿酸の排泄を促進するのかを問うています。高尿酸血症の「排泄低下型」に対する治療メカニズムを理解することが重要です。
正解:2(尿酸トランスポーターURAT1を阻害)
ドチヌラドの最も本質的な標的は、尿酸トランスポーターURAT1(SLC22A12)です。URAT1は腎臓の近位尿細管の管腔側(尿が流れる側)に存在し、一度ろ過された尿酸を再び細胞内へ取り込んで血液中に戻す「再吸収」の役割を担っています。ドチヌラドはこのトランスポーターを選択的に阻害することで、尿酸が血液中に戻るのを防ぎ、結果として尿中への排泄を増やします。
正解:4(近位尿細管における尿酸の再吸収を阻害)
これは選択肢2の機序を、解剖学的・生理学的な言葉で言い換えたものです。URAT1は近位尿細管に特異的に発現しているため、その阻害は「近位尿細管での再吸収阻害」を意味します。再吸収が阻害されることで、尿酸値が低下します。
誤り:1(キサンチンオキシダーゼを阻害して尿酸の産生を抑制)
これはアロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタットといった「尿酸産生抑制薬」の作用機序です。ドチヌラドは尿酸を作るプロセスを止めるのではなく、排泄を促す「尿酸排泄促進薬」であるため、この説明は不適切です。
誤り:3(微小管の形成を阻害して白血球の遊走を抑制)
これは痛風発作時の治療に用いられるコルヒチンの作用機序です。コルヒチンは関節での炎症を抑える働きはありますが、尿酸値を下げる作用(降尿酸作用)は持っていません。
誤り:5(遠位尿細管における尿酸の分泌を阻害)
遠位尿細管における尿酸の「分泌」を阻害してしまうと、血液中の尿酸を尿へ捨てる能力が低下してしまい、かえって高尿酸血症を悪化させる方向に働きます。ドチヌラドの薬理作用とは逆の方向であるため、誤りです。
【試験対策のポイント:尿酸の動きのイメージ】
尿酸の管理には「作るのを止めるか」「出すのを増やすか」の2つの戦略があります。
尿酸の管理には「作るのを止めるか」「出すのを増やすか」の2つの戦略があります。
- 産生抑制: 工場(キサンチンオキシダーゼ)での製造を止める。
- 排泄促進: 出口(近位尿細管)での回収(URAT1による再吸収)を阻止して、そのまま尿として捨てる。
