第111回薬剤師国家試験

◆問260-261

59歳男性。1年前の勤務先の定期健康診断で眼圧高値を指摘され、専門医で精密検査を受けるよう勧められた。その後、市立病院眼科を受診したところ、原発性開放隅角緑内障と診断され、処方1の薬剤による治療を受けていた。しかし、眼圧低下効果が十分に得られないため、本日、新たに処方2が追加され来局した。

(処方1)
ラタノプロスト点眼液0.005%(2.5mL/本) 1本
      1日1回 夕 両目に点眼

(処方2)
ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%(5mL/本) 1本
      1日2回 朝夕 両目に点眼

◆ 問260


◆ 問261

その後、ブリモニジンの追加によっても十分な効果が得られないため、ラタノプロスト及びブリモニジンのどちらとも作用機序の異なる薬物を含む薬剤を追加することとなった。追加できる薬物の作用機序として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • プロスタノイド FP 受容体を刺激して、ぶどう膜強膜流出経路からの房水排出 を促進する。
  • アドレナリン β 及び α1 受容体を遮断して、毛様体上皮細胞による房水産生を 抑制するとともに、ぶどう膜強膜流出経路からの房水排出を促進する。
  • アドレナリン α2 受容体を刺激して、毛様体上皮細胞による房水産生を抑制す る。
  • Rho キナーゼを阻害して、線維柱帯細胞の細胞骨格を変化させることで、線維 柱帯-シュレム管流出経路からの房水排出を促進する。
  • BK チャネル(大コンダクタンス Ca 2+ 依存性 K チャネル)を遮断して、線維 柱帯-シュレム管流出経路からの房水排泄を促進する。

◆ 問260

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


この問題は、緑内障治療で用いられるプロスタノイド系点眼薬(ラタノプロスト)およびα2受容体作動薬(ブリモニジン)の特性を理解し、患者様に正しい点眼の手順や注意点を伝えられるかを問う内容です。

正解:1(ブリモニジンによりめまいや低血圧が起こることがある)
処方2のブリモニジン(商品名:アイファガン®)は、α2受容体作動薬です。点眼後、薬液の一部が鼻涙管を通じて全身に吸収されると、血管収縮の抑制などにより全身性の低血圧、めまい、口渇、疲労感といった症状が現れることがあります。特に成人でも、これらの全身作用への注意が必要であることを患者様に説明しておく必要があります。

正解:2(夕の点眼時に処方1と処方2を5分以上空けて点眼する)
2種類以上の点眼薬を併用する場合、続けて点眼すると先にさした薬が後からの点眼液によって流れ出てしまい、十分な効果が得られません。そのため、薬剤を確実に結膜嚢に留め、吸収を安定させるために5分以上の間隔を空けて点眼するよう指導するのが基本となります。

誤り:3(ブリモニジンにより目の周りの皮膚が黒っぽくなる)
「目の周りの皮膚が黒っぽくなる(皮膚色素沈着)」や「まつ毛が伸びる」といった副作用は、処方1のラタノプロストなどのプロスタノイド系点眼薬特有のものです。ブリモニジンの副作用ではありません。点眼後に溢れた薬液を拭き取る、あるいは洗顔することでこれらを予防できることを指導します。

誤り:4(1回に2滴点眼した方が効果的である)
目の中に溜めておける液体の量(結膜嚢の容量)は約7 µL程度ですが、点眼薬1滴の量は約30~50 µLあります。つまり、1滴でも容量を十分に超えているため、2滴以上入れても余分な液が溢れ出るだけで効果は変わりません。むしろ、鼻涙管から吸収される量が増えて全身性の副作用のリスクを高めてしまうため、不適切な指導となります。

誤り:5(点眼後すぐにまばたきを繰り返す)
点眼直後にまばたきを繰り返すと、ポンプ作用によって薬液が鼻涙管へと押し出され、目の中に留まる時間が短くなってしまいます。点眼後はそっと目を閉じて1~2分待つか、目頭(鼻側)を軽く押さえて、鼻涙管への流出を防ぐのが正しい方法です。

【実務のポイント:点眼指導の共通ルール】
点眼薬の種類に関わらず、以下の手順は現場での指導に欠かせません。
  • 点眼間隔: 2剤併用時は5分以上空ける。
  • 点眼回数: 1回1滴で十分。
  • 点眼後の動作: まばたきをせず、目を閉じるか目頭を押さえる。

◆ 問261

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:2、4


この問題は、現在使用している「ラタノプロスト(FP受容体作動薬)」と「ブリモニジン(α2受容体作動薬)」に加えて、どのようなメカニズムの薬を足せば効果的かを問う内容です。作用点が重ならない薬剤を選ぶことで、効率的に眼圧を下げることができます。

正解:2(アドレナリンβ及びα1受容体を遮断して、房水産生抑制とぶどう膜強膜流出の増加を促す)
これはカルテオロールなどの非選択性β遮断薬(一部の製剤にはα1遮断作用も含む)の作用機序です。β受容体を遮断することで房水の産生を抑え、α1受容体を遮断することで「ぶどう膜強膜流出路」からの排出を増やします。現在使用中の2剤とは異なるルートを攻めることができるため、適切な追加薬となります。

正解:4(Rhoキナーゼを阻害して線維柱帯細胞の細胞骨格を変化させ、線維柱帯-シュレム管流出を増加させる)
これはリパスジル(グラナテック®の作用機序です。Rhoキナーゼを阻害することで、房水の出口である「線維柱帯」の細胞を弛緩させ、シュレム管への流れをスムーズにします。ラタノプロストやブリモニジンとは全く異なる「主流路(線維柱帯流出路)」に働きかけるため、相加効果が期待できます。

誤り:1, 3
  • 選択肢1(FP受容体刺激): 現在使用中のラタノプロストと同じ機序です。同じ働きの薬を重ねても劇的な効果の上乗せは期待できず、副作用だけが強まる可能性があるため不適切です。
  • 選択肢3(α2受容体刺激): 現在使用中のブリモニジンと同じ機序です。これも同系統の過剰投与になるため、追加薬としては選びません。
誤り:5(BKチャネルを遮断する)
現在、緑内障治療薬として承認されている「BKチャネル遮断薬」は存在しません。医学的根拠がない選択肢です。

【試験対策のポイント:房水の「出口」と「蛇口」】
緑内障の薬を理解する際は、水の流れでイメージしましょう。
  • 蛇口を締める(産生抑制): β遮断薬、α2作動薬、炭酸脱水酵素阻害薬。
  • 裏口を広げる(ぶどう膜強膜流出促進): プロスタノイド系(ラタノプロスト等)。
  • 正面玄関を広げる(線維柱帯流出促進): Rhoキナーゼ阻害薬(リパスジル)。
今回の症例は「蛇口」と「裏口」にアプローチ済みなので、残る「正面玄関」への薬(リパスジル)や、別のルートを併せ持つ薬(β遮断薬など)を足すのが正解です。