第111回薬剤師国家試験
◆問284-285
7歳男児。身長 124 cm、体重 25 kg。母親によると、患児は食後に「喉が熱い感じがする」と訴えることが多く、夜間に咳き込んだり、胸をさする仕草をみせたりすることがある。また、酸っぱいものを吐き戻すことがあり、体重減少はないが、食欲が少し落ちているとのこと。医師の診察により逆流性食道炎と診断され、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩の細粒剤(アルタット細粒 20%(注))が処方されることになった。本処方製剤には苦味のある有効成分が含まれている。患児及び母親への服薬指導を実施する際、処方された細粒剤とそのカプセル剤の製剤及び薬物動態を確認し、以下の情報を得た。
⑴ 生物学的同等性試験(健康成人男子へのクロスオーバー単回 75 mg 経口投与)※

※評価パラメーターである AUC 及び Cmax について統計解析を行った結果、AUC 及び Cmax は対数正規分布し、絶食時及び食後のいずれの場合も判定基準である log(0.80)~ log(1.25) の範囲内であった。
⑵ 有効成分の原末及びカプセル剤を経口投与した後の血漿中濃度及び薬物動態パラメーターの比較(健康成人5名)

注:アルタット細粒 20%の組成及び特性
・有効成分:ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩 200 mg/g
・添加物:結晶セルロース(粒)、ヒドロキシプロピルセルロース、
エチルセルロース、クエン酸トリエチル、タルク、
D-マンニトール、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物)、
アセスルファムカリウム、含水二酸化ケイ素、香料
・特性:日本薬局方一般試験法「製剤の粒度の試験法」により試験するとき、
18 号(850 μm)ふるい及び 30 号(500 μm)ふるいを全量通過した。
◆ 問284
処方された細粒剤に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
カプセル剤と生物学的に同等である。
-
カプセル剤と比較して食事の影響を受けやすいので注意が必要である。
-
速放性の製剤である。
-
コーティングと甘味剤によって苦味がマスキングされている。
-
飲みにくい場合は、微粉砕する必要がある。
◆ 問285
◆ 問284
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題は、小児の胃食道逆流症の治療に用いられるロキサチジン酢酸エステル細粒について、その剤形ならではの工夫(苦味マスキング、放出制御)や、カプセル剤との同等性を正しく理解しているかを問う内容です。
正解:1(カプセル剤と生物学的に同等である)
生物学的同等性試験において、AUCやCmaxといった主要なパラメータの対数値の差がΔ±0.25以内(log(0.80)∼log(1.25)の範囲、すなわち80∼125%の範囲)に収まることが確認されています。絶食時、食後ともにカプセル剤と同等であり、治療上の効果に差はないと認められています。
正解:4(コーティングと甘味剤によって苦味がマスキングされている)
この製剤は、有効成分の苦味を抑えるために、エチルセルロースによる膜コーティング(物理的な遮断)が施されています。さらに、アスパルテームやアセスルファムKといった甘味剤を配合することで、小児でも服用しやすいように苦味をマスキングする工夫がなされています。
誤り:2(カプセル剤と比較して食事の影響を受けやすい)
生物学的同等性試験の結果、絶食時・食後ともにカプセル剤と同等であることが示されています。したがって、細粒剤にしたからといって、カプセル剤より特に食事の影響を強く受けるようになるということはありません。
誤り:3(速放性の製剤である)
本剤はエチルセルロースを用いたコーティングによって、薬物の放出をコントロールしている「放出制御型(徐放性)製剤」です。投与後すぐに全ての薬物が放出される速放性製剤ではありません。
誤り:5(飲みにくい場合は微粉砕する必要がある)
これが指導上の最も重要な注意点です。この製剤を微粉砕してしまうと、施されている膜コーティングが破壊されてしまいます。その結果、本来の「放出制御(徐放性)」の機能が失われて急激に血中濃度が上がるリスクが生じるほか、隠されていた強い「苦味」が露出してしまい、お子様が飲めなくなる原因となります。そのため、微粉砕せずそのまま服用するよう指導が必要です。
【実務のポイント:コーティング剤の意味を考える】
細粒や顆粒にコーティングが施されている場合、そこには必ず「意味」があります。
細粒や顆粒にコーティングが施されている場合、そこには必ず「意味」があります。
- 苦味マスキング: 苦い薬を飲みやすくし、コンプライアンスを維持する。
- 放出制御(徐放性): 効果を持続させ、血中濃度の急激な変化(副作用)を抑える。
◆ 問285
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:4
この問題は、小児の体重から適切な有効成分量を算出し、それを製剤量(細粒の重さ)に換算できるかを問う実務的な計算問題です。以下の3つのステップで考えます。
【計算のステップ】
1. 体重から1回あたりの有効成分量を特定する
患児の体重は 25 kg です。処方箋の記載(30 kg未満は1回 37.5 mg)に基づき、1回量は 37.5 mg となります。
2. 1日あたりの有効成分の総量を計算する
1日2回服用するため、1日量は以下の通りです。
37.5 mg × 2 = 75 mg
3. 有効成分量を製剤量(細粒の重さ)に換算する
使用する「アルタット®細粒20%」は、1 g 中に有効成分が 200 mg 含まれています(20%製剤)。
必要な製剤量を X (g) とすると:
X (g) = 75 (mg) ÷ 200 (mg/g) = 0.375 g
正解:4(0.375 g)1. 体重から1回あたりの有効成分量を特定する
患児の体重は 25 kg です。処方箋の記載(30 kg未満は1回 37.5 mg)に基づき、1回量は 37.5 mg となります。
2. 1日あたりの有効成分の総量を計算する
1日2回服用するため、1日量は以下の通りです。
37.5 mg × 2 = 75 mg
3. 有効成分量を製剤量(細粒の重さ)に換算する
使用する「アルタット®細粒20%」は、1 g 中に有効成分が 200 mg 含まれています(20%製剤)。
必要な製剤量を X (g) とすると:
X (g) = 75 (mg) ÷ 200 (mg/g) = 0.375 g
上記の計算通り、1日あたりの製剤量は 0.375 g となります。
誤り:1(0.075 g)、2(0.150 g)、3(0.188 g)、5(0.750 g)
- 0.075 g: 1日量の有効成分量(75 mg)の数値をそのまま g にした誤りです。
- 0.150 g: 20%換算を誤っている、あるいは計算ミスによる数値です。
- 0.188 g: 1回量(37.5 mg)のみを製剤量に換算した数値(37.5 ÷ 200 = 0.1875)であり、1日量になっていません。
- 0.750 g: 10%製剤として計算してしまった場合、あるいは単純な桁ミスの数値です。
【実務のポイント:小児の用量確認】
小児の処方監査では、以下の確認を習慣づけましょう。
小児の処方監査では、以下の確認を習慣づけましょう。
- 用量基準の確認: 「mg/kg」で指定されているのか、本問のように「体重区分」で指定されているのかを正確に読み取ります。
- 成分量と製剤量の混同防止: 医師の指示が「成分量(mg)」なのか「製剤量(g)」なのかを必ず確認します。特に「20%製剤」などは計算ミスが起きやすいため、ダブルチェックが必須です。
