第111回薬剤師国家試験

◆問290-291

33歳既婚女性。頭痛、生理痛及び便秘があり、薬局へ相談に訪れた。薬剤師は相談者から以下の内容を聞き取った。
・挙児を強く希望しているが、いまだ妊娠には至っていない。
・出産経験はない。
・妊娠を考えて、症状があってもなるべく薬を飲まないように我慢していた。
・生理時に下腹部だけでなく骨盤の辺りも痛むようになったが、痛みがあるのは生理期間中の数日間だけなので、市販の薬で乗り切りたい。
・週に5日ほど排便がない時がある。
・天気の悪い日は頭が痛くなる。
・妊娠から授乳期まで服用しても安心な薬があるなら使用したい。

◆ 問290


◆ 問291

数日後、この女性は婦人科を受診し、子宮内膜症と診断された。本患者における子宮内膜症の病態として、正しいのはどれか。2つ選べ。
  • 出産の経験がないことが、発症のリスク因子である。
  • 黄体ホルモンの作用により、病変組織が発生した。
  • 子宮内腔以外に病変は発生しない。
  • 疼痛の悪化には、月経を重ねたことが関係している。
  • 子宮体がんを合併するリスクが高い。

◆ 問290

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、5


この問題は、患者さんが将来的な妊娠を希望しているという背景を踏まえ、各ステージ(妊娠前から妊娠中まで)において安全に使用できる薬剤を適切に選択できるかを問うものです。

【患者さんの背景と症状】
・33歳女性、現在「妊娠を希望」しています。
・主な症状は、頭痛、月経困難症(生理痛)、便秘です。
・腹腔鏡検査により子宮内膜症と診断されています。
正解:1、5
1:酸化マグネシウム
酸化マグネシウムは、浸透圧を利用して便を柔らかくする緩下剤です。腸管からほとんど吸収されないため、妊娠の全期間を通じて安全に使用できる薬剤として知られています。

5:アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは、中枢性の鎮痛作用を持ち、胎児への影響が非常に少ないと考えられています。そのため、妊娠を希望されている方や、実際に妊娠中の方における頭痛や生理痛の第一選択薬として推奨されます。

誤り:2、3、4
  • 2:イブプロフェン、3:ナプロキセン、4:ジクロフェナクナトリウム
    これらはすべて非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類されます。NSAIDsを妊娠後期(特に32週以降)に使用すると、胎児の動脈管早期閉鎖羊水過少症を引き起こすリスクがあります。妊娠を希望している患者さんの場合、予期せぬ妊娠の可能性も考慮し、より安全性の高いアセトアミノフェンを選択することが望ましいため、これらの薬剤は選ばないのが適切です。
【実務のポイント:妊娠・授乳と薬】
  • リスクの考慮: 妊娠を希望している患者さんへの服薬指導では、「もし妊娠していた場合でも赤ちゃんに影響が少ない薬かどうか」という視点が欠かせません。
  • NSAIDsの使い分け: 子宮内膜症に伴う強い痛みにはNSAIDsが有効な場合もありますが、妊娠の可能性がある期間については、副作用リスクを説明した上でアセトアミノフェンを優先する、あるいは専門医の判断を仰ぐことが重要です。

◆ 問291

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、4


この問題は、子宮内膜症の発症リスクを高める要因や、その疾患特有の症状について正しく理解しているかを問うものです。子宮内膜症はエストロゲン依存性の疾患であるという点が、理解の大きな鍵となります。

【子宮内膜症の本態】
本来は子宮の内側にあるはずの内膜組織が、子宮以外の場所(卵巣や腹膜など)で増殖する疾患です。月経のたびにその場所で出血が起こり、炎症や癒着を引き起こすため、強い痛みが特徴となります。
正解:1、4
1:未産婦(nullipara)
妊娠や授乳の期間中は月経が止まります。未産婦の方は、経産婦の方に比べて生涯の月経回数が多く、エストロゲンに曝露される期間が長くなるため、子宮内膜症の発症リスクが高くなります。

4:月経周期に同期した疼痛増強
子宮内膜症の最も典型的な症状は、月経周期に合わせて悪化する痛み(月経随伴症状)です。月経困難症や慢性的な骨盤痛、性交痛、排便痛などがこれに該当します。

誤り:2、3、5
  • 2:初経が遅い
    初経が「早い(早発月経)」ほど、生涯の月経回数が増えるためリスク因子となります。初経が遅いことはリスクを低下させる方向に働きます。
  • 3:月経周期が長い
    月経周期が「短い(頻発月経)」ほど、年間の月経回数が多くなり、結果としてリスクが高まります。周期が長いことはリスク因子ではありません。
  • 5:鎮痛薬で必ず改善する
    軽症の場合は鎮痛薬(NSAIDs等)でコントロール可能ですが、組織の癒着がひどい重症例や深部病変がある場合、鎮痛薬だけでは十分に痛みを抑えられない「鎮痛薬抵抗性」を示すことがあります。
【実務のポイント:エストロゲン曝露とリスク】
子宮内膜症のリスク因子を考える際は、「一生のうちにどれだけ多くの月経(エストロゲンの刺激)を経験しているか」を基準にすると分かりやすくなります。
  • リスクが高まる要因: 早い初経、遅い閉経、短い月経周期、出産経験がないこと。
  • リスクが低下する要因: 多産、授乳期間が長いこと、経口避妊薬(ピル)の使用など。
近年、晩婚化や少子化によって女性の生涯月経回数が増加しており、それに伴って子宮内膜症に悩む患者さんも増えているという社会的背景も併せて押さえておきましょう。