第111回薬剤師国家試験
◆問296-297
9歳男児。身長136cm、体重31kg。1年前に咳嗽、喀痰及び呼吸困難を主訴に来院し、気管支ぜん息と診断されて治療が開始された。現在は、月に1~2回、夜間に息苦しさとともに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった呼吸音が聞こえるとのことである。呼吸機能検査(スパイログラム)では、1秒量(FEV1)と1秒率(FEV1%)の低下がみられたが、%肺活量(%VC)は基準範囲内であった。また、血液検査ではハウスダストに対するIgE抗体が陽性であった。現在の処方は以下のとおりである。(処方1)
アドエア100ディスカス60吸入用(注) 1個
1回1吸入 1日2回 朝就寝前 吸入
[注:サルメテロールキシナホ酸塩及びフルチカゾンプロピオン酸エステルを含有する吸入粉末剤。1吸入で、サルメテロールとして50μg及びフルチカゾンプロピオン酸エステルとして100μgを吸入できる。]
(処方2)
モンテルカストチュアブル錠5mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 就寝前 30日分
(処方3)
プロカテロール塩酸塩水和物エアゾール5μg 1個
発作時 1回2吸入 1日4回まで
◆ 問296
本患者の病態に関する記述として、適切なのはどれか。2つ選べ。-
アトピー型の気管支ぜん息と考えられる。
-
呼吸機能検査の結果から、拘束性換気障害が疑われる。
-
胸部聴診では、発作時に呼吸に伴って笛音が聴取される。
-
血中のシアル化糖鎖抗原(KL-6)が高値を示す。
-
喀痰中の好中球が増加している。
◆ 問297
◆ 問296
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題は、患児の臨床症状、呼吸機能検査の結果、および血液検査データから、喘息のタイプ(アトピー型など)や換気障害の分類を正しく判断できるかを問う内容です。症例の具体的な数値を丁寧に読み解く必要があります。
【症例のポイント】
・症状: 夜間や早朝に「ヒューヒュー」という呼吸音(喘鳴)を伴う呼吸困難があります。
・検査値: ハウスダスト特異的IgE陽性、1秒量(FEV1)および1秒率(FEV1%)の低下、肺活量(%VC)は正常。
・背景: 父親に気管支喘息の既往があります。
正解:1、3・症状: 夜間や早朝に「ヒューヒュー」という呼吸音(喘鳴)を伴う呼吸困難があります。
・検査値: ハウスダスト特異的IgE陽性、1秒量(FEV1)および1秒率(FEV1%)の低下、肺活量(%VC)は正常。
・背景: 父親に気管支喘息の既往があります。
1:アトピー型の気管支ぜん息と考えられる
血液検査において「ハウスダスト特異的IgEが陽性」であることは、特定のアレルゲンに対して感作(アレルギー反応の準備)があることを示しています。これはアトピー型喘息を定義づける重要な根拠となります。
3:胸部聴診では発作時に笛音(ウィーズ)が聴取される
喘息発作時には気管支が狭くなり、そこを空気が通る際に「ヒューヒュー」という笛のような音が発生します。これを「笛音(ウィーズ:wheeze)」と呼び、問題文の症状とも合致する典型的な所見です。
誤り:2、4、5
- 2:拘束性換気障害が疑われる
本症例では1秒率(FEV1%)が低下していますが、肺活量(%VC)は正常範囲内です。これは「空気を吐き出しにくい」状態を示す閉塞性換気障害のパターンです。肺が広がりにくくなる「拘束性換気障害」では、%VCが低下(一般に80%未満)するのが特徴であるため、誤りです。 - 4:血中KL-6が高値を示す
KL-6は主に間質性肺炎や肺線維症などの診断・モニタリングに用いられるマーカーです。気管支喘息において通常高値を示すことはありません。 - 5:喀痰中の好中球が増加している
アトピー型喘息(好酸球性炎症)では、喀痰中において好酸球が増加するのが特徴です。好中球の増加は、主に細菌感染症や非アトピー型(好中球性喘息)で見られる所見です。
【実務のポイント:呼吸機能検査の分類】
喘息の診断で重要なスパイロメトリー(呼吸機能検査)の結果は、以下のように整理して覚えましょう。
喘息の診断で重要なスパイロメトリー(呼吸機能検査)の結果は、以下のように整理して覚えましょう。
- 閉塞性換気障害(空気が通りにくい): 1秒率(FEV1%)が 70% 未満。気管支喘息やCOPDが該当します。
- 拘束性換気障害(肺が膨らみにくい): %肺活量(%VC)が 80% 未満。間質性肺炎などが該当します。
◆ 問297
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、4
この問題は、処方された3つの薬剤(アドエア、モンテルカスト、プロカテロール)について、それぞれのデバイスの特性や使用目的を正しく理解し、患児と保護者に適切な指導ができるかを問う実務的な内容です。
【処方内容の確認】
・処方1:アドエア®ディスカス(DPI:ドライパウダー吸入器。長期管理用)
・処方2:モンテルカスト錠(LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬。長期管理用)
・処方3:プロカテロール®エアゾール(pMDI:加圧定量噴霧吸入器。発作時用)
正解:3、4・処方1:アドエア®ディスカス(DPI:ドライパウダー吸入器。長期管理用)
・処方2:モンテルカスト錠(LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬。長期管理用)
・処方3:プロカテロール®エアゾール(pMDI:加圧定量噴霧吸入器。発作時用)
3:処方2(モンテルカスト)は、すでに起こっている発作を止める薬ではない
モンテルカストなどの抗ロイコトリエン薬は、気道の炎症を抑えて発作を予防するための「長期管理薬(コントローラー)」です。即効性のある気管支拡張作用はないため、現在起きている激しい発作(急性発作)を鎮める目的では使用しません。
4:処方3(プロカテロール)は、使用前によく振ってから使用する
処方3のようなpMDI(エアゾール製剤)は、容器の中で薬液と噴射剤が分離している場合があるため、使用前に数回よく振って薬液を均一にする必要があります。
誤り:1、2、5
- 1:処方1(アドエアディスカス)は「素早く浅く」吸い込む
アドエアのようなDPI製剤は、吸い込む力(吸気流速)を利用して粉を肺まで届ける必要があります。「浅く」吸うと奥まで届かないため、「スーッと深く」持続的に吸い込むのが正しい方法です。 - 2:処方1(アドエア)吸入後はうがいを避ける
アドエアには吸入ステロイドが含まれています。口の中に薬剤が残ると、口腔内カンジダ症や声がれ(嗄声)の原因となるため、吸入後は必ずうがいをするよう指導します。 - 5:処方3(プロカテロール)のマウスピースは水洗いしない
pMDIのマウスピース(プラスチック製のキャップ部分)は、薬剤の固着を防ぎ清潔を保つため、定期的に水洗いをしてよく乾燥させることが推奨されています。
【実務のポイント:吸入手技の使い分け】
デバイスごとの特徴を整理しておきましょう。
デバイスごとの特徴を整理しておきましょう。
- DPI(アドエアなど):自分の吸う力が必要です。振らずに、深く吸い込みます。
- pMDI(プロカテロールなど):噴射に合わせて吸い込みます。使用前に振り、ゆっくり深く吸い込みます。
- 「ホー吸入」の推奨:のどの奥を広げて薬剤を気管支に届きやすくするため、舌を下げて「ホー」と発音するように吸い込む方法は、全デバイス共通で推奨される手技です。
