第111回薬剤師国家試験
◆問308-309
81歳男性。一人暮らし。息子が車で30分くらいの場所に住んでいる。息子は週末にこの男性宅を訪問し、生活の世話をしている。この男性は65歳から高血圧症、高尿酸血症及び前立腺肥大症の治療を行っていた。1年前に認知症と診断され、処方1、処方2及び処方3の薬剤で治療中である。血圧コントロール不良のため、今回より処方4の薬剤が追加となり、男性が息子とともに処方箋を持って薬局を訪れた。受付時に、この男性から「最近飲み忘れが多く、結構薬が残ってしまいます。今日から薬が1つ増えると聞いたのですが、ただでさえ飲み忘れがあるのに、これ以上増えたらもっと飲めなくなるのではないかと心配です。何か良い方法はないですか。睡眠はよくとれており体調には問題ありません。」と相談があった。(処方1)
カンデサルタン錠4mg 1回1錠(1日1錠)
ドネペジル塩酸塩錠10mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 14日分
(処方2)
アロプリノール錠100mg 1回1錠(1日1錠)
ナフトピジル錠50mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 昼食後 14日分
(処方3)
スボレキサント錠10mg 1回1錠(1日1錠)
酸化マグネシウム錠500mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 就寝前 14日分
コメント:酸化マグネシウム錠は排便のあった日は服用しないでよい。
(処方4)
ヒドロクロロチアジド錠12.5mg 1回0.5錠(1日0.5錠)
1日1回 朝食後 14日分
(処方箋に記載されていた検査値)
血圧 164/86 mmHg、AST 32 IU/L、ALT 18 IU/L、
血清クレアチニン 0.9 mg/dL、BUN 23 mg/dL、尿酸 10.1 mg/dL
◆ 問308
◆ 問309
薬剤師は、この男性と息子に、高血圧治療薬による低血圧のリスクについて説明した。さらに、薬剤師は、薬剤師法に基づく薬剤の使用状況の継続的な把握と薬学的指導(フォローアップ)の必要性を検討した。この男性に対する薬剤師のフォローアップとして、正しいのはどれか。2つ選べ。-
フォローアップを行うことについて、薬剤師は都道府県知事に申請し、登録を 受けなければならない。
-
フォローアップを行うことについて、処方医の指示は不要である。
-
フォローアップの結果、服薬アドヒアランスの低下が確認された場合、薬剤師 の判断で用法用量の変更をこの男性に指示する。
-
電話でのフォローアップは認められていない。
-
フォローアップを行った場合であっても、次回調剤時の服薬指導は必要である。
◆ 問308
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題は、認知症により服薬管理が困難になった高齢患者さんに対し、薬剤師としてどのような提案をすれば「飲み忘れ」や「飲み間違い」を防ぎ、安全な薬物療法を継続できるかを問う実務的な内容です。
【症例の背景】
・患者:81歳男性、認知症あり。
・課題:複数の薬を服用しており、アドヒアランス(指示通りに服薬すること)の低下が認められます。
・生活状況:息子さんがサポート可能な環境にあります。
正解:1、3・患者:81歳男性、認知症あり。
・課題:複数の薬を服用しており、アドヒアランス(指示通りに服薬すること)の低下が認められます。
・生活状況:息子さんがサポート可能な環境にあります。
1:電話で毎日服薬確認することを息子に提案する
家族による日常的なサポートは、認知症患者さんの服薬管理において非常に有効です。毎日決まった時間に息子さんが電話で確認することで、服薬の習慣化を助け、飲み忘れを早期に発見・フォローすることができます。
3:処方2(昼食後)の服用タイミングを朝食後への変更を医師に提案する
昼食時は外出したり、生活リズムが不規則になりやすいため、最も飲み忘れが多いタイミングです。服用回数を整理し、朝食後などに「一本化」することで、患者さんの負担を減らし、管理を簡略化することができます。
誤り:2、4、5
- 2:医師に疑義照会せず配合錠に変更する
薬剤師が医師の同意なく、独断で処方内容(単剤から配合錠への変更など)を変えることは法律で禁止されています。アドヒアランス向上のための変更であっても、必ず事前に医師へ相談し、了解を得る必要があります。 - 4:アロプリノールの中止を医師に提案する
アロプリノール(尿酸生成抑制薬)は痛風や高尿酸血症の治療に必要であり、安易に中止すると病態が悪化する恐れがあります。管理が難しいからといって、治療上必要な薬を根拠なく中止することは適切ではありません。 - 5:スボレキサントの増量を医師に提案する
本症例の問題は「薬が足りないこと」ではなく、「決められた通りに飲めていないこと(服薬管理)」にあります。効果が不十分だからといって増量しても根本的な解決にはならず、むしろ副作用のリスクを高める可能性があります。
【実務のポイント:認知症患者さんへの服薬支援】
認知症の患者さんへの支援では、以下の3つの視点が重要です。
認知症の患者さんへの支援では、以下の3つの視点が重要です。
- 管理の簡素化: 一包化(複数の薬を1つの袋にまとめる)や、服用回数を減らす提案を行います。
- 物理的な工夫: お薬カレンダーや配薬ボックスの活用を勧めます。
- 周囲との連携: 家族だけでなく、ケアマネジャーや訪問看護師と情報を共有し、多職種でサポートする体制を整えることが、薬剤師に求められる大切な役割です。
◆ 問309
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、5
この問題は、2021年の改正薬剤師法施行により義務化された「服薬期間中のフォローアップ」について、その具体的なルールや法的性質を正しく理解しているかを問うものです。
【服薬フォローアップとは】
調剤時だけでなく、薬を飲み始めてから次の来局までの間も、必要に応じて患者さんの状況を確認し、適切な指導を行う業務です。
正解:2、5調剤時だけでなく、薬を飲み始めてから次の来局までの間も、必要に応じて患者さんの状況を確認し、適切な指導を行う業務です。
2:フォローアップを行うことについて、処方医の指示は不要である
薬剤師法第9条の2の規定に基づき、薬剤師が必要と判断した場合には薬剤師の責任において主体的に実施すべき「義務」となっています。したがって、医師からの事前の指示を待つ必要はありません。
5:フォローアップを行っても、次回調剤時の服薬指導は引き続き必要である
服薬期間中のフォローアップと、調剤時の服薬指導(薬剤師法第25条の2)はそれぞれ独立した義務です。期間中に電話等で状況を確認したからといって、次回来局時の窓口での指導を省略することはできません。
誤り:1、3、4
- 1:フォローアップを行うには都道府県知事への申請・登録が必要である
服薬フォローアップはすべての薬剤師・薬局に課せられた業務であり、実施にあたって特別な申請や自治体への登録手続きは不要です。 - 3:アドヒアランス低下確認時は薬剤師の判断で用法用量の変更を指示できる
服用方法の変更や用量の増減を最終的に決定する権限は医師にあります。薬剤師は、フォローアップで得た情報を医師に伝達し、変更の提案を行うことはできますが、独断で「指示」することはできません。 - 4:電話でのフォローアップは認められていない
電話、メール、オンラインビデオ通話、メッセージアプリなどのICT機器を用いたフォローアップは公式に認められており、むしろ積極的な活用が推奨されています。
【実務のポイント:改正薬剤師法のポイント】
2021年の法改正により、薬剤師の役割は「対物から対人へ」と大きくシフトしました。
2021年の法改正により、薬剤師の役割は「対物から対人へ」と大きくシフトしました。
- 継続的な関わり: 薬を渡して終わりではなく、自宅での服用状況や副作用の有無を追いかけることが、法律上の義務として明確に位置付けられました。
- 情報のフィードバック: フォローアップの結果、問題が見つかった場合には速やかに処方医へ情報提供を行い、多職種で連携して患者さんを支えることが求められます。
