第111回薬剤師国家試験
◆問314-315
75 歳男性。身長 168 cm、67 kg。かかりつけの内科を受診し、高血圧症の治療中である。今回、収縮期血圧が 151 mmHg、拡張期血圧が 87 mmHg であり、エサキセレノン錠 2.5 mg が追加された処方箋がかかりつけ薬局に FAX で送られてきた。薬剤師は実務実習生に服薬指導の内容を考えるように指示した。実務実習生は注意事項等情報(添付文書)のみを参考に検討していたことから、薬剤師はエサキセレノンの医薬品リスク管理計画(RMP:Risk Management Plan)も追加で参考にするようアドバイスした。◆ 問314
◆ 問315
薬剤師が追加で参考にするようアドバイスした資料に関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。-
PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が作成する。
-
新たな安全性の懸念が認められた場合は、必要に応じて医薬品安全性監視計画 及びリスク最小化計画を見直す。
-
安全性検討事項には、重要な特定されたリスクが含まれる。
-
患者向医薬品ガイドの作成による情報提供は、医薬品安全性監視活動の1 つで ある。
-
リスク最小化活動には、製造工程における不純物管理が含まれる。
◆ 問314
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題は、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるエサキセレノンの「医薬品リスク管理計画(RMP)」において、どのような副作用が「重要な特定されたリスク」として位置づけられているかを問う内容です。薬剤の作用機序からリスクを予測する力が求められます。
【症例の背景】
・患者:75歳男性、高血圧症。
・薬剤:エサキセレノン(ミネアブロ®)を服用中。
・ポイント:高齢者や腎機能に懸念がある患者さんに使用する際、特に厳重なモニタリングが必要な項目を確認します。
正解:1、3・患者:75歳男性、高血圧症。
・薬剤:エサキセレノン(ミネアブロ®)を服用中。
・ポイント:高齢者や腎機能に懸念がある患者さんに使用する際、特に厳重なモニタリングが必要な項目を確認します。
1:高カリウム血症
エサキセレノンなどのMRAは、腎臓の遠位尿細管におけるミネラルコルチコイド受容体を遮断することで、ナトリウムの排泄を促し、代わりにカリウムの排泄を抑制します。この作用の結果、血中のカリウム濃度が上昇しやすくなるため、RMPにおける最も重要な特定リスクの一つとなっています。
3:低血圧関連事象
本剤は降圧薬として使用されるため、過度な血圧低下が起こる可能性があります。特に高齢者では、立ちくらみやふらつきを伴う「起立性低血圧」などの低血圧に関連した事象がリスクとして特定されており、注意深い観察が必要です。
誤り:2、4、5
- 2:生殖発生毒性
動物実験レベルでのデータは存在しますが、ヒトにおけるエサキセレノンのRMPにおいて「重要な特定されたリスク」として挙げられている主要な項目ではありません。 - 4:QT延長
エサキセレノンにおいて、心電図上のQT延長を誘発するような主要なリスクは特定されていません。 - 5:血栓塞栓症
血栓塞栓症は、主に経口避妊薬やホルモン補充療法(HRT)などで問題となるリスクです。MRAであるエサキセレノンの病態リスクとは合致しません。
【実務のポイント:MRAの安全管理】
エサキセレノンを安全に使用するためには、以下のモニタリングが不可欠です。
エサキセレノンを安全に使用するためには、以下のモニタリングが不可欠です。
- 血清カリウム値の確認: 服用開始前、および開始後も定期的に測定を行います。特に高齢者や腎機能障害がある患者さんでは、高カリウム血症が重症化しやすいため注意が必要です。
- 腎機能の評価: eGFR(推算糸球体濾過量)を確認し、腎機能に応じた適切な用量調節が行われているかをチェックします。
- 血圧の変動: 降圧効果が強く出すぎていないか、日常生活でふらつきなどの症状が出ていないか、患者さんへの聞き取りを丁寧に行いましょう。
◆ 問315
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、3
この問題は、新薬などの承認時に提出が義務付けられている「医薬品リスク管理計画(RMP)」の目的や構成要素、および実施される活動の分類について、正しく理解しているかを問う内容です。
【RMP(Risk Management Plan)とは】
医薬品の開発段階から市販後まで一貫したリスク管理を行うための計画書です。製薬企業はこれを作成し、どのようなリスクがあるか、それをどう監視し、どう最小化するかを明確にする必要があります。
正解:2、3医薬品の開発段階から市販後まで一貫したリスク管理を行うための計画書です。製薬企業はこれを作成し、どのようなリスクがあるか、それをどう監視し、どう最小化するかを明確にする必要があります。
2:新たな安全性の懸念が認められた場合は必要に応じて見直す
RMPは一度作って終わりではなく、市販後に得られた新しい知見や副作用報告に基づき、随時更新・改訂が求められる「リビングドキュメント(生きた文書)」です。安全性の懸念に変化があれば、それに応じて計画を修正する必要があります。
3:安全性検討事項には重要な特定されたリスクが含まれる
RMPの安全性検討事項は、以下の3つの要素で構成されています。
- 重要な特定されたリスク: すでに副作用として確認されている重要なもの。
- 重要な潜在的リスク: 疑われているが、まだ十分な証拠がないもの。
- 不足情報: 高齢者や妊婦への影響など、現時点でデータが足りない事項。
誤り:1、4、5
- 1:PMDAが作成する
RMPを作成・提出する義務を負うのは、医薬品を世に出す製造販売業者(製薬企業)です。PMDA(医薬品医療機器総合機構)は提出された計画を審査し、承認する立場にあります。 - 4:患者向医薬品ガイドの作成は医薬品安全性監視活動の1つである
患者向医薬品ガイドや医療従事者向けの資材作成は、リスクを減らすための具体的なアクションである「リスク最小化活動」に分類されます。「安全性監視活動」は、副作用情報の収集や調査(モニタリング)そのものを指すため、分類が異なります。 - 5:リスク最小化活動には製造工程における不純物管理が含まれる
不純物管理は、医薬品の品質を担保するためのGMP(製造管理及び品質管理の基準)の領域です。RMPのリスク最小化活動は、主に副作用の回避や適切な使用を促すための情報提供活動などを指します。
【実務のポイント:RMP情報の活用】
薬剤師が日常業務でRMPを意識する場面は非常に重要です。
薬剤師が日常業務でRMPを意識する場面は非常に重要です。
- PMDAホームページの確認: 各薬剤のRMPは一般に公開されています。その薬の「重要な特定されたリスク」を知ることで、服薬指導時に何を重点的にモニタリングすべきかが明確になります。
- 追加の活動の有無: 通常の活動に加え、特別な調査(製造販売後調査など)や特別な資材配布が指定されている場合があるため、RMPを確認して適切な対応をとることが求められます。
