第111回薬剤師国家試験

◆問316-317

35歳女性。身長150cm、体重45kg。2年前より潰瘍性大腸炎と診断され、処方1の薬剤で治療していたが、症状が改善しないため今回入院して処方2の薬剤が追加され2週間の投与を受けた。しかし、症状は改善せず、腎機能が正常であることを確認の上、処方3の薬剤の追加が検討されている。

(処方1)
リアルダ錠1,200mg(注) 1回4錠(1日4錠)
                  1日1回 朝食後

(処方2)
プレドニゾロン錠5mg 朝6錠、昼2錠(1日8錠)
           1日2回 朝昼食後

(処方3)
フィルゴチニブマレイン酸塩錠200mg 1回1錠(1日1錠)
                  1日1回 朝食後
(注:1錠中にメサラジン1,200mgを含有するフィルムコーティング錠)

◆ 問316

病棟の薬剤師の対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
  • 処方1 と処方3 の薬剤は併用禁忌であることを処方医に伝える。
  • 処方2 と処方3 の薬剤は併用禁忌であることを処方医に伝える。
  • 間質性肺炎の既往歴を患者に確認する。
  • 挙児希望の有無を患者に確認する。
  • 卵アレルギーの有無を患者に確認する。

◆ 問317


◆ 問316

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:3、4


この問題は、潰瘍性大腸炎の治療に用いられるJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬であるフィルゴチニブ(ジセレカ®)について、開始前に確認すべき重要な既往歴や患者背景を正しく理解しているかを問う内容です。薬剤の重大な副作用や禁忌事項に基づいた判断が求められます。

【症例の背景】
患者: 35歳女性、潰瘍性大腸炎。
薬剤: フィルゴチニブ(JAK阻害薬)。
ポイント: 30代の女性であることから、将来の妊娠への影響や、JAK阻害薬特有の感染症・肺疾患リスクを評価する必要があります。
正解:3、4
3:間質性肺炎の既往歴を確認する
フィルゴチニブを含むJAK阻害薬の重大な副作用として、間質性肺炎が報告されています。既往がある場合には再燃や悪化のリスクが高まるため、開始前の確認は極めて重要です。

4:挙児希望の有無を確認する
フィルゴチニブには動物実験において催奇形性(胎児に奇形が生じるリスク)が認められており、妊婦または妊娠している可能性のある女性には禁忌とされています。35歳という年齢を考慮し、将来的な挙児希望の有無を確認した上で、適切な避妊指導を行う必要があります。

誤り:1、2、5
  • 1・2:処方間の併用禁忌
    提示された処方内容(他の治療薬など)において、フィルゴチニブとの間に直接的な併用禁忌となる根拠は認められません。
  • 5:卵アレルギーの有無を確認する
    フィルゴチニブ(ジセレカ®)の製剤成分には、卵由来の成分は含まれていません。したがって、卵アレルギーを確認する必要はありません。
【実務のポイント:JAK阻害薬のスクリーニング項目】
JAK阻害薬を開始する際には、以下の項目も併せて確認することが一般的です。
  • 感染症チェック: 免疫抑制作用があるため、B型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化や、結核、帯状疱疹などの感染リスクを事前に評価します。
  • 避妊の徹底: 妊娠可能な女性に対しては、服用中および服用終了後も一定期間は適切な避妊を継続するよう、具体的な説明とフォローアップが欠かせません。
  • 血液検査モニタリング: 好中球減少、リンパ球減少、ヘモグロビン減少などの骨髄抑制や、脂質異常などが起こることがあるため、定期的な検査が必要です。

◆ 問317

◆領域・タグ

◆正解・解説

正解:1、2


この問題は、新薬(本症例ではフィルゴチニブ)が承認された後、実際の医療現場で使用される中でその安全性と有効性を再確認する「再審査制度」の法的なルールを問う内容です。承認時のデータだけでは不十分な情報を、市販後の調査で補完する重要な仕組みです。

【再審査制度の役割】
新薬が承認された時点では、治験に参加した限られた条件の患者さんのデータしかありません。そのため、発売後に広く一般の患者さんに使用された際、未知の副作用がないか、本当に効果があるかを改めてチェックするのが「再審査」です。
正解:1、2
1:製造販売業者は承認後定期的に安全性報告(PSUR)を行う
再審査期間中、製薬企業(製造販売業者)は、国内外から集まった副作用情報や最新の研究報告をまとめ、厚生労働大臣に対して定期的に報告を行う義務があります。これを PSUR(Periodic Safety Update Report:安全性定期報告) と呼びます。

2:再審査は承認後に使用成績等を調査し安全性・有効性を再確認する制度である
これが再審査制度の定義そのものです。治験では拾いきれなかった稀な副作用や、長期使用時の安全性、高齢者など特定の背景を持つ患者さんへの有効性を、実臨床のデータ(市販後調査)を用いて再評価します。

誤り:3、4、5
  • 3:再審査期間中でも特許期間終了後はジェネリック承認がある
    再審査期間は、その薬の独占的な評価期間という意味合いも持っています。たとえ特許が切れていたとしても、再審査期間が終わるまでは後発医薬品(ジェネリック)の製造販売承認を申請・取得することはできません。
  • 4:再審査期間が延長されることはない
    希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)や、追加の臨床試験が必要となった場合など、状況に応じて再審査期間が延長されることがあります。
  • 5:再審査の調査はGVP省令に従う
    市販後の安全情報を収集・管理する基準はGVPですが、再審査のために行われる「使用成績調査(市販後調査)」そのものの実施基準は GPSP(Good Post-Marketing Study Practice) 省令に従う必要があります。
【実務のポイント:GPSPとGVPの違い】
薬剤師として知っておきたい法規の整理です。
  • GVP(安全性監視の基準): 副作用の情報収集や評価、安全対策(注意喚起の作成など)を行うための基準です。
  • GPSP(製造販売後調査等の実施基準): アンケート形式の使用成績調査や、市販後の臨床試験を正しく行うための手順を定めた基準です。
新薬のフォローアップに関わる調査(再審査資料のための調査)は、このGPSPに基づいて厳格に行われています。