第111回薬剤師国家試験
◆問318-319
8歳男児。アトピー性皮膚炎に対しステロイド軟膏を使用していたが、顔面の皮疹の改善が見られないため、今回より以下の処方に変更となり、患児は母親とともに処方箋を持って薬局を訪れた。服薬指導時に薬剤を見た母親から「薬の名前の横に劇と書いてあるけれど、大丈夫なのでしょうか。1日1回に減らして塗ってもよいですか。」との質問があった。(処方)
タクロリムス水和物軟膏0.03% 5g
1回適量 1日2回 朝夕 顔面に塗布
◆ 問318
◆ 問319
変更後の薬剤の薬局における取扱いに関し、法令に照らし正しいのはどれか。2つ選べ。-
かぎを施していない調剤棚に貯蔵することができる。
-
本薬剤は、他の劇薬以外の物と区別して貯蔵しなければならない。
-
盗難にあったときは、都道府県知事に届け出なければならない。
-
患者に交付するときの薬袋に、白地に赤枠赤字で「劇」の文字を記載しなけれ ばならない。
-
廃棄するときは、あらかじめ、都道府県知事に届け出なければならない。
◆ 問318
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、4
この問題は、小児のアトピー性皮膚炎に使用されるタクロリムス軟膏について、その特有の副作用や使用上の注意点、ステロイド外用薬との違いを正しく理解しているかを問う内容です。8歳の男児という設定を踏まえて考えます。
【症例のポイント】
・患者: 8歳男児、アトピー性皮膚炎。
・薬剤: タクロリムス軟膏(免疫抑制薬)。
・特徴: ステロイドとは異なる作用メカニズムを持ち、長期使用時の皮膚萎縮などが起こりにくい薬剤です。
正解:1、4・患者: 8歳男児、アトピー性皮膚炎。
・薬剤: タクロリムス軟膏(免疫抑制薬)。
・特徴: ステロイドとは異なる作用メカニズムを持ち、長期使用時の皮膚萎縮などが起こりにくい薬剤です。
1:自己判断で使用回数を変更しない
タクロリムスは強力な免疫抑制作用を持つ薬剤です。自己判断で塗る回数を減らすと十分な効果が得られず症状がぶり返したり、逆に過剰に使用すると全身に吸収されるリスクが高まったりするため、医師の指示通りに使用することが非常に重要です。
4:使用初期に皮膚刺激感(灼熱感)を感じることがある
使い始めの数日間、塗った部位に「ヒリヒリする」「熱く感じる(灼熱感)」といった刺激が出ることがよくあります。これは、皮膚のバリア機能が低下している部分に薬が反応するために起こるもので、症状が改善して皮膚が整ってくると自然に消えていくことがほとんどです。事前に伝えておくことで、患者さんや保護者の不安を解消できます。
誤り:2、3、5
- 2:眼の周囲に塗布してはならない
添付文書上「避けることが望ましい」と記載されていますが、完全に禁止(禁忌)されているわけではありません。医師の判断により、顔面の症状に対して慎重に使用されることがあります。 - 3:びらんや潰瘍面にも使用できる
皮膚がただれた「びらん」や、えぐれた「潰瘍」がある部位には、原則として使用できません。傷口から薬が全身に過剰吸収されて副作用が出る恐れがあるほか、感染症を悪化させるリスクがあるためです。 - 5:毛細血管拡張や皮膚萎縮・緑内障などに注意が必要
これらは主にステロイド軟膏を長期間、あるいは強力なものを使用した場合に起こる副作用です。タクロリムス軟膏には皮膚を薄くしたり血管を広げたりする副作用がほとんどないため、これらを避けたい場合に有用な選択肢となります。
【実務のポイント:小児用と成人用の使い分け】
タクロリムス軟膏(プロトピック®)には、濃度によって「小児用」と「成人用」の明確な区別があります。
タクロリムス軟膏(プロトピック®)には、濃度によって「小児用」と「成人用」の明確な区別があります。
- 0.03%(小児用): 2歳から15歳までが対象です。
- 0.1%(成人用): 16歳以上が対象です。
- 2歳未満: 安全性が確立されていないため、使用は禁忌(禁止)されています。
◆ 問319
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、2
この問題は、タクロリムス軟膏が「劇薬」に指定されていることを踏まえ、医薬品医療機器等法(薬機法)における劇薬の取り扱いルール(保管、表示、廃棄など)を正しく理解しているかを問う内容です。特に「毒薬」との管理基準の違いを整理することが重要です。
【劇薬管理の基本ルール】
劇薬は、その作用が激しく、取り扱いに注意が必要な医薬品です。法律では、誤用を防ぐために他の医薬品等と「区別して」貯蔵することが義務付けられています。
正解:1、2劇薬は、その作用が激しく、取り扱いに注意が必要な医薬品です。法律では、誤用を防ぐために他の医薬品等と「区別して」貯蔵することが義務付けられています。
1:かぎを施していない調剤棚に貯蔵することができる
劇薬については、法律上で「施錠(かぎをかけること)」までの義務はありません。他の物と区別して保管されていれば、かぎのない棚に置くことが可能です。なお、施錠が法律で義務付けられているのは「毒薬」や「覚醒剤」などのより厳重な管理が必要な区分です。
2:他の劇薬以外の物と区別して貯蔵しなければならない
これは薬機法第48条に定められた直接の義務です。劇薬とそれ以外の医薬品(普通薬など)が混ざらないよう、明確に区別して管理する必要があります。
誤り:3、4、5
- 3:盗難にあったときは都道府県知事に届け出なければならない
劇薬の盗難や紛失について、都道府県知事への届け出義務は法律で規定されていません。麻薬や覚醒剤などの場合には速やかな届け出が必要ですが、劇薬はそれらの対象外です。 - 4:患者に交付するときの薬袋に白地に赤枠赤字で「劇」の文字を記載しなければならない
「白地に赤枠赤字で『劇』の文字」の表示義務があるのは、薬剤の「直接の容器」または「直接の被包(パッケージ)」に対してです。患者さんにお渡しする際の「薬袋(やくたい)」にまでこの表示をする法的義務はありません。 - 5:廃棄するときはあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない
劇薬を廃棄する場合、事前に知事へ届け出る必要はありません。薬局の責任において、適切に廃棄処理を行えば足ります。麻薬を廃棄する場合(調剤済みのものを除く)など、事前届け出が必要な他の制度と混同しないよう注意しましょう。
【実務のポイント:毒薬と劇薬の比較】
試験や実務で混同しやすい「毒薬」と「劇薬」の違いを整理しておきましょう。
試験や実務で混同しやすい「毒薬」と「劇薬」の違いを整理しておきましょう。
- 表示: 毒薬は「黒地に白枠白字で『毒』」、劇薬は「白地に赤枠赤字で『劇』」です。
- 保管: 毒薬は「他の物と区別」かつ「施錠(かぎ)」が必要ですが、劇薬は「他の物と区別」だけで、施錠までは義務ではありません。
- 譲渡: いずれも14歳未満への交付は禁止されており、譲受証(署名・捺印)の受け渡しが必要です。
