第111回薬剤師国家試験
◆問322-323
82歳女性。身長 157 cm、体重 40 kg。大腸がんの治療で入院していたが、食事を摂ることができなくなり中心静脈栄養(TPN:Total Parenteral Nutrition)療法を開始した。退院後も自宅で皮下埋込型中心静脈ポート(CV ポート)から投与する TPN 療法を継続することとなった。地域のケアマネジャーと相談し、新たに介護保険を利用することとなり認定を受けた。自宅における患者の点滴は、CV ポートに接続されたフーバー針(皮下埋込式カテーテル用穿刺針)を介して投与される。退院後は処方1及び処方2の薬剤で治療することとなり、薬局の薬剤師が患者宅を訪問して薬剤管理指導を行うこととなった。
(処方1)
エルネオパ NF 2 号輸液(注)(1,500 mL/袋) 1 袋
1日1回 24 時間かけて点滴静注 14 日分
(処方2)
静注用脂肪乳剤輸液 20%(250 mL/袋) 1 袋
1日1回 4時間かけて点滴静注 月曜、木曜に投与 4日分(投与実日数)
[注:高カロリー輸液用アミノ酸・糖・電解質・総合ビタミン・微量元素液で、1 袋 1,500 mL 中に総遊離アミノ酸 45 g、ブドウ糖 262.5 g、電解質、総合ビタミン、微量元素などを含む総熱量 1,230 kcal の製剤]
◆ 問322
◆ 問323
薬剤師の説明後、患者の家族から、新たに利用するこの保険について質問された。家族への説明として、適切なのはどれか。2つ選べ。-
この保険は、利用開始に伴い保険料が増額になります。
-
この保険から給付される1ケ月当たりのサービス利用の上限額は、年齢によって区分されています。
-
サービスの利用に際しての自己負担割合は、利用者の所得に応じて異なります。
-
在宅での服薬状況の確認や服薬指導に対する費用は、医療保険ではなく、この保険が適用されます。
-
薬剤料は、医療保険ではなく、この保険が適用されます。
◆ 問322
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:2、4
この問題は、在宅で中心静脈栄養(TPN)を実施している患者さんに対し、感染防止や安全管理の観点からどのような指導を行うべきかを問う実務的な内容です。
【症例の背景】
・患者: 82歳女性、大腸がん術後。
・状況: CVポートを留置し、在宅で中心静脈栄養(TPN)と脂肪乳剤の投与を行っています。
正解:2、4・患者: 82歳女性、大腸がん術後。
・状況: CVポートを留置し、在宅で中心静脈栄養(TPN)と脂肪乳剤の投与を行っています。
2:処方1の薬剤を交換する前に手を消毒する
CVポートへの接続操作は、カテーテル由来血流感染(CRBSI)を引き起こす重大なリスクを伴います。輸液バッグを交換する際の手指衛生は、感染を未然に防ぐために最も重要で基本的な手順です。
4:入浴時はCVポートからフーバー針をはずす
CVポート本体は皮膚の下に埋め込まれているため、針を抜いた状態であれば防水の必要もなく入浴が可能です。しかし、フーバー針が刺さっている間は、その刺入部から細菌が侵入する恐れがあるため、入浴前には必ず抜針するように指導します。
誤り:1、3、5
- 1:処方1の薬剤は変質を防ぐために冷蔵庫で保管する
処方1のエルネオパNF輸液の貯法は、添付文書において「遮光・室温保存」と規定されています。したがって、冷蔵庫で保管する必要はなく、直射日光を避けた涼しい場所で管理していただきます。 - 2:処方2の薬剤は輸液フィルターを通して投与する
処方2の脂肪乳剤はエマルジョン(乳濁液)製剤です。粒子が大きいため、通常の輸液フィルター(0.22 μm)を通すと目詰まりを起こしてしまいます。そのため、フィルターよりも患者さんに近い側の側注口から投与しなければなりません。 - 3:使用済みフーバー針は家庭系一般廃棄物として処理する
フーバー針は鋭利な刃物であり、感染症のリスクを伴う医療廃棄物に該当します。家庭のゴミ集積所に出す一般廃棄物として捨てるのではなく、専用の容器などに入れ、処方を受けた医療機関や薬局へ返却して回収を依頼するよう指導します。
【実務のポイント:在宅TPNの安全指導】
在宅での中心静脈栄養管理において、薬剤師は以下の点を確認・指導することが求められます。
在宅での中心静脈栄養管理において、薬剤師は以下の点を確認・指導することが求められます。
- 感染兆候の確認: ポートの周囲が赤くなっていないか、痛みや腫れがないかなど、感染のサインを毎日チェックするよう伝えます。
- 混注時の注意: 複数の薬剤を混ぜる場合、目に見えない沈殿(特にカルシウムとリン酸塩の組み合わせなど)が生じるリスクがあるため、配合変化に注意が必要です。
- 機器の取り扱い: フーバー針の刺し方や抜針後の処置など、手技が正しく行われているか定期的にフォローアップを行います。
◆ 問323
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、4
この問題は、在宅医療において重要な役割を果たす「介護保険」の仕組みについて、特に費用負担や薬剤師の業務がどのように適用されるかを正しく理解しているかを問う内容です。医療保険との違いを明確にすることがポイントです。
【介護保険制度の概要】
加齢に伴って介護が必要になった方を社会全体で支える制度です。40歳以上の国民が保険料を支払い、認定を受けた方がサービスを利用できます。
正解:3、4加齢に伴って介護が必要になった方を社会全体で支える制度です。40歳以上の国民が保険料を支払い、認定を受けた方がサービスを利用できます。
3:自己負担割合は利用者の所得に応じて異なる
介護保険サービスを利用した際の自己負担割合は、一律ではありません。利用者の合計所得金額などに応じて、1割、2割、または3割のいずれかになります。所得が高いほど負担割合が大きくなる仕組みです。
4:在宅での服薬状況確認・服薬指導に対する費用は介護保険が適用される
要介護・要支援の認定を受けている患者さんに対し、薬剤師が自宅を訪問して行う「居宅療養管理指導」の費用は、介護保険から給付されます。薬剤師が専門性を発揮して在宅療養を支えるための重要な業務です。
誤り:1、2、5
- 1:介護保険の利用開始で保険料が増額される
介護保険料は40歳から徴収が始まり、所得に応じて決まります。実際にサービスを利用し始めたからといって、そのことを理由に月々の保険料が増額されることはありません。 - 2:サービス利用の上限額は年齢で区分される
介護保険で利用できるサービス費用の月間上限額(区分支給限度基準額)は、年齢ではなく「要介護状態区分(要支援1〜要介護5)」によって決まります。重度の方ほど、より多くのサービスが利用できるよう上限額が高く設定されています。 - 5:薬剤料は介護保険が適用される
ここが非常に間違いやすいポイントです。処方された「薬そのものの代金(薬剤料)」は、介護保険ではなく医療保険から給付されます。介護保険が適用されるのは、あくまで薬剤師による管理指導といった「サービス費用」の部分のみです。
【実務のポイント:費用の使い分けを整理しましょう】
在宅医療の現場では、以下の使い分けを意識することが大切です。
在宅医療の現場では、以下の使い分けを意識することが大切です。
- 薬剤師の訪問指導料: 介護保険(居宅療養管理指導費) ※認定を受けている場合。
- お薬代(薬剤料): 医療保険。
