第111回薬剤師国家試験
◆問324-325
46歳男性。消化性潰瘍の既往あり。高血圧症及び脂質異常症に対し処方1の薬剤による治療を行っている。先日、急に話しづらさを感じ、かかりつけ医の紹介で別の医療機関において画像検査を受けた結果、TIA(一過性脳虚血発作)と診断されて入院となり、処方2の薬剤による治療が開始された。(処方1)
アムロジピン錠5mg 1回1錠(1日1錠)
ロスバスタチン錠5mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 28日分
(処方2)
アスピリン腸溶錠100mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 3日分
(処方3)
アスピリン腸溶錠100mg 1回1錠(1日1錠)
1日1回 朝食後 28日分
◆ 問324
処方2 の薬剤による治療開始時に、病院で薬剤師が患者に説明する内容として適切なのはどれか。2つ選べ。-
この薬は TIA による後遺症の治療薬である。
-
この薬の服用中は納豆の摂取を控える必要がある。
-
消化性潰瘍が再発することがある。
-
この薬の服用中は発熱や頭痛が起こらない。
-
出血リスクがあるため、検査や手術等の際は服用中止が指示される場合がある。
◆ 問325
◆ 問324
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:3、5
この問題は、一過性脳虚血発作(TIA)を経験した患者さんに対し、再発予防として処方された低用量アスピリンの作用や注意点を、正しく説明できるかを問う実務的な内容です。
【症例の背景】
・患者: 46歳男性。
・状況: TIA(一過性脳虚血発作)を起こし、再発防止のためにアスピリン製剤が処方されました。
・ポイント: 低用量アスピリンは「血液をサラサラにする」薬ですが、それに伴う出血リスクや胃粘膜への影響を理解しておく必要があります。
正解:3、5・患者: 46歳男性。
・状況: TIA(一過性脳虚血発作)を起こし、再発防止のためにアスピリン製剤が処方されました。
・ポイント: 低用量アスピリンは「血液をサラサラにする」薬ですが、それに伴う出血リスクや胃粘膜への影響を理解しておく必要があります。
3:消化性潰瘍が再発することがある
アスピリンは、血小板の凝集に関わる酵素(COX-1)を阻害しますが、この酵素は胃粘膜を保護するプロスタグランジンの合成にも関わっています。そのため、服用によって胃の防御機能が低下し、過去に消化性潰瘍を患ったことがある方などは、再発のリスクがあるため注意が必要です。
5:出血リスクがあるため手術等の際は服用中止が指示される場合がある
アスピリンには血液を固まりにくくする作用があります。手術や抜歯など、出血を伴う処置を行う際に血が止まりにくくなる恐れがあるため、安全のために数日前から一時的に服用を中止するよう医師から指示されることがあります。
誤り:1、2、4
- 1:この薬はTIAによる後遺症の治療薬である
アスピリンは、すでに起こってしまった後遺症を治すための薬ではなく、次に脳梗塞などが起こるのを防ぐ「再発予防(二次予防)」を目的として使用されます。 - 2:服用中は納豆の摂取を控える
納豆に含まれるビタミンKが薬の効果を弱めてしまうため注意が必要なのは、抗凝固薬の「ワルファリン」です。アスピリン(抗血小板薬)の服用において、納豆の摂取制限はありません。 - 4:服用中は発熱や頭痛が起こらない
今回処方されているのは、血小板の働きを抑えるための非常に少ない量(低用量)です。この用量では、解熱鎮痛薬として期待されるような熱を下げたり痛みを取ったりする効果はほとんどありません。
【実務のポイント:抗血小板薬の服薬指導】
アスピリンを服用する患者さんには、以下の点も併せてお伝えすることが大切です。
アスピリンを服用する患者さんには、以下の点も併せてお伝えすることが大切です。
- 出血のサインに注意: 歯ぐきからの出血、鼻血、身に覚えのないアザ、黒い便(胃腸出血のサイン)などが見られた場合は、早めに医師や薬剤師に相談するよう伝えます。
- 勝手にやめない: 自己判断で服用を中止すると、血栓ができやすくなり、脳梗塞などのリスクが急激に高まるため、継続して服用することの重要性を説明します。
- 併用薬のチェック: 他の解熱鎮痛薬(NSAIDs)を併用すると、副作用の胃障害や出血リスクが強まることがあるため、市販薬を購入する際などは必ず相談してもらうようにしましょう。
◆ 問325
◆領域・タグ
◆正解・解説
正解:1、3
この問題は、TIA(一過性脳虚血発作)後の再発予防としてアスピリンが処方された事例を用い、薬剤師が行う業務の対価である「調剤報酬」の全体像を正しく把握しているかを問う内容です。
【調剤報酬の大きな柱】
・調剤技術料: 薬局の体制や薬剤の調製そのものに対する費用(調剤基本料、薬剤調製料など)。
・薬学管理料: 薬剤師による情報収集、指導、薬歴管理などに対する費用(服薬管理指導料など)。
・薬剤料: 使用された「薬そのもの」の公定価格。
正解:1、3・調剤技術料: 薬局の体制や薬剤の調製そのものに対する費用(調剤基本料、薬剤調製料など)。
・薬学管理料: 薬剤師による情報収集、指導、薬歴管理などに対する費用(服薬管理指導料など)。
・薬剤料: 使用された「薬そのもの」の公定価格。
1:調剤基本料は、処方3(アスピリン)の追加によって変わることはない
調剤基本料は、その薬局の施設基準(店舗の規模、集中率、後発医薬品の調剤体制など)に基づいて決まる固定的な点数です。特定の薬剤が追加されたり、処方箋の枚数が増えたりすることでその都度変動するものではありません。
3:薬学管理料には、服薬状況等の情報収集・分析・評価・薬剤服用歴への記録に対する費用がある
これは「服薬管理指導料」などの説明として正確です。薬剤師が患者さんの薬歴を確認し、副作用の有無や飲み合わせをチェックし、その結果を記録する一連の専門的な対人業務に対する評価です。
誤り:2、4、5
- 2:調剤技術料には、薬剤師が症状を踏まえて説明や指導を行う費用がある
患者さんへの説明や指導の対価は「薬学管理料」に含まれます。調剤技術料はあくまで薬局の基本設備や薬剤の調製作業を評価するものです。 - 4:薬剤料は時間外受付で費用が追加される
「時間外加算」などの加算は、調剤技術料(調剤基本料)に対して算定されます。薬そのものの代金である薬剤料が、受付時間によって高くなることはありません。 - 5:1点=100円
医療保険制度において、診療報酬や調剤報酬の「1点」は「10円」と規定されています。
【実務のポイント:調剤報酬の考え方】
調剤報酬の仕組みを理解することは、患者さんへ領収書の内容を説明する際に非常に役立ちます。
調剤報酬の仕組みを理解することは、患者さんへ領収書の内容を説明する際に非常に役立ちます。
- 対物業務と対人業務: 薬を作る(調製する)ことへの評価と、患者さんと対話して指導することへの評価が明確に分けられていることを意識しましょう。
- 正確な情報提供: 特に1点=10円といった基本知識や、加算がどの項目にかかるのかを正確に把握しておくことで、患者さんからの信頼につながります。
